ありのままのキミに夢中 ~イケメンはずんどうぽっちゃりに恋をする!~

中村 心響

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17章 慕情

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苗の声を聞くとなると何だか気がめいる…


晴樹は重い気持ちのまま携帯を耳にかざした。


『ハィもすもすぅ~』


「モシモシ‥苗?

今日、買い物か何かあるのか?」


『ないょ‥なんで?』


‥ない!?
じゃあなんでお爺はあんなこと…

「‥あー、じゃあ重い荷物とかは?」


『それならある‥』

「‥‥‥そか…


じゃあ帰り送って行くから‥‥じゃな‥」

重い物?


携帯を閉じて晴樹は考える‥


‥買い物はないけど、重い物はある‥?
アイツ今度は何お持ち帰りするんだ?













そして放課後──





―ジャー‥‥


苗は外の水飲み場でタンクに水を入れていた‥‥


‥早く稼いで、水道代払わなきゃだょ…


口を尖らせ思い悩む。

そして、そんな苗の行動は注目を浴びていた‥




‥あれ‥田中サンだ‥‥
何してんだろ?



2年の校舎から丸見えの水飲み場を指差し、直哉は晴樹に声をかけた



「晴樹サン!‥」


「?…悪い、ちょっと待って。
今、苗に電話っ‥」


「その田中サンがまたなんかやってる」


「‥‥?」




苗に連絡しようとしていた晴樹の手がとまり直哉の指差す場所を窓から覗き込むと‥‥




‥‥荷物ってあれか!?




苗の足元には台車に乗せたポリタンクが並んでいる‥





‥水なんか何するんだ!?





水道なんか止められた経験のない晴樹には苗が何をしたいのかわからなかった‥


「じゃあ、俺‥ちょっと行くわ……後、頼むな」


晴樹はそう言って苗のところへ向かった‥


教室を後にした晴樹と入れ違いで毎度の訪問者、お嬢軍団がやって来る‥


「ねぇ晴樹は!?──…もしかしてまた、逃げたの?!」



「‥‥さぁ」


窓際にいたシラをきる直哉に詰め寄りギャーギャーわめく軍団の一人が何かに気づき思いきり叫ぶ──



「あぁ〰〰!!
ちょっとあれ見て!!」



‥あ‥‥しまったっ‥


焦る直也を他所に、水飲み場の二人を見た瞬間お嬢軍団は物凄い勢いで教室から出て行ってしまった。





ダダダダ―――ッ!!



「はぁるきぃ〰〰っ!!」



――なに?!


けたたましい叫び声をあげながらヌーの大群のように地鳴りを響かせこちらへ走り寄ってくる――!!!




‥恐ぇェェーーっ



その迫力に伝説の死神も脅えていた。



逃げようにもこの荷物では逃げられない!



晴樹はヌーの大群にあっさり囲まれてしまっていた‥


「晴樹!約束は!?
約束はどうなったのよ!?」


「あぁ!??約束!?


んなもん、した憶えねぇよ!!」


‥こうなりゃ逆ギレで乗り切るしかっ‥‥



晴樹は“忘れたふり戦法”をとった!


「──…っ…なにそれ!??

だいたい、二人で何してんのよ!?そんな物に水入れて!?」



「これはっ‥‥‥



これは何に使うんだ?」



晴樹も来たばっかりでまだ、苗に水の用途を聞いていなかった。


そして苗は語り出す‥


「これは生きていくための命の糧(かて)なんだょ。


ある日突然、当たり前に在るものが、当たり前でなくなってしまった時に人は初めてその尊さに気づくんだ――― y豊作―」


「・・・・」


「だから、苗はこのお水を大事に使いたいと思います!!マルッ」




なんとなく周りの衆らは頷くしかなかった。


そして晴樹が戸惑いながら付け加えた‥


「‥と、とにかく


理事長命令なんだよ!

荷物を運んでやれって‥」


「なんで晴樹がそこまで!?」

「俺だって好きでやってる訳じゃ……っ」

言った後に口をつぐんだが遅かった‥‥‥


苗は晴樹のそんな言葉を素直に受け取っていた‥



「ごみんね兄さん‥


苗は台車があるからだいじょびだょ!


どうせ、当分はこの生活だからさ!」


「……っ…」



晴樹は苗の言葉に胸が痛んだ。でも、口をついて出てしまった言葉は取り返しがつかない‥



自分自身に苛立ちながら、晴樹は口を開く‥


「いいよ‥
どのみち、今からの予定もキャンセルしたし‥」



‥予定なんて元々ない‥



苗から目を反らす様に言う晴樹にお嬢は言った


「その子は大丈夫だって言ってるじゃない!!
あたし達と今から遊びに行こうよぉ!」


「理事長命令だっつってんだろ!?

‥‥明日なら遊んでやるから」


「うそ?ほんと?」

晴樹はお嬢達と約束してしまった‥


「あぁ、だから今日はもういいだろ?‥苗、行くぞ…」


機嫌の良くなったお嬢達は笑顔で晴樹達を見送り手を振っている



「〰っ……行くぞっつってんだろ!?」



立ち止まり笑顔で手を振り返す苗に晴樹はキレかかっていた。



晴樹は台車を押して学校の門を出ようとしたが、普段使いなれない台車がいうことを聞かず行きたい方へ曲がれない。



‥クソっなんだコレ!?


そんな晴樹から苗は台車を取り返し言った



「あーもぅ、兄さんは苗が居ないとホントに何もできないだから~
ダメダメだから~
ソーメンも食べれないしさぁ!」


「‥//‥なにっ」


そして奪い返した台車を自由自在に操った‥‥‥


駐車場まで来ると、二人はタンクを積んで台車を折りたたみ、車に乗り込む‥










「苗‥‥」


「なに?」


「毎日、これ運ぶのか?」


晴樹は聞いてみた‥



「ぅん‥父ちゃんの給料日まで何とか頑張らないと、水道代払えないしさ‥‥」


‥水道止められてんのか?

「……!っ…お前、俺が前にあげた中元があっただろ?あれに、商品券が入ってたはずだけど全部使ったのか?」



「‥あるよ‥


でも、あれじゃ水道代は‥」



「バカだなお前‥
金券ショップに行けば換金してくれるだろ?
お金とかわんねぇんだから‥
結構な金額になるはずだぜ?あれだけあったら‥

現金が欲しいんだろ?」



「‥そかっ‥‥
その手があったね‥//‥」



「家着いたら取ってこいよ?
換金するにも身分証がいるから俺が換えて来てやるから、その足で水道代払いに行けばイイだろ?」



「‥そう…だょ‥


‥そうだよねっ!

さすが兄さん!!」



重いタンクを朝、運ばなくてもいぃんだ!

そう思えただけで苗は幸せだった──


「兄さん!!」


苗は運転中の晴樹の肩を突然掴む!


「なんだ?」

「ハグしたいっ!!

苗はなんだかとっても兄さんをハグしたいょ!」



「──…っ…運転中だから後でな」



キラキラしながら訴える苗に晴樹は少々困惑していた‥







晴樹の言ったとおり商品券を換金するとかなりの現金が手元に戻り、苗は水道代を全額払い込む。


「はぃ、ご入金ありがとうございます。
水道は今から行ってすぐ開栓しますから」

「おねがいしますっ!」

夏場の断水は命取り。

水道局の人は毎回駆け込み寺に来るように、水道局に来ていた常連の苗に、払ってくれさえすれば文句も言わず快く受け付けてくれていた‥

集金のおいちゃん達は今時、家の為に頑張る少女として密かに苗を見守ってくれていたのだ‥

従って、苗の家の集金もギリギリまで伸ばしたり陰ながら努力をしてくれていた。



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