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8章 夏祭り

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悟は遠い過去を思い出すように幼い頃のことを語り始めた‥

「アイツのは突発的なヤツで体が少しでも疲れると急に高熱が出るんだ‥

昔、家から離れた河原で遊んでた時に急に高熱が出て苗の奴動けなくなったんだよ。
周りに大人も居なくて苗をその場に置いて急いで近くの人に来てもらったんだけど、その時すごい怖かったんだ‥
もし、迎えに行って苗が死んでたらどうしようって‥」

「‥‥」

「その時呼んできた人が苗を抱きかかえて連れてった時になんかすごい悔しくて‥‥いつも、何かあったら俺が守ってやる!とか言ってたのに‥
何にもできなかったのが悔しくて──

その時、早くデカクなって今度こそは絶対俺が守るんだっ!とか子供ながらに思ったんだけど💧

苗、引っ越しちゃったからさ‥
さすがにデカクなれても側に居ないんじゃ守りようがないし…」

「たしかにな」

晴樹は相づちをうちながら聞いている

「だから、向こうでも苗を守ってくれる奴がいたらな‥って!」



コイツほんとにイイ奴だな‥


悟の器の大きさに晴樹は時期、東郷家の当主の影をみた気がした


苗のことをひたすらに守ろうとする悟の気持ちに胸を打たれた晴樹だったが‥‥



「“俺が居ない間”苗を守ってくれる奴が居てくれたら安心出来るのにってさ」


──ッ!?


晴樹は悟の言葉が少しずつ胸に引っかかり始めていた


「だから、結城さんと会えて安心した!!
あぁ、この人なら“俺が居ない間”“俺の代わりに”苗を守ってくれるって思ったから」


‥なに?


「結城さん‥
“俺が側に居れる時が来るまで”苗のこと頼みます!!」


悟は剣道部の主将らしく正座をすると晴樹にガバッと頭を下げた──


潔く頼み込む悟にすかすがしさを感じるがどうも腑に落ちない。


‥なんか、ムカつく…っ…



そう、晴樹は悟の放った言葉に少しずつムカつきを覚えていた……


「悟ー!サオリちゃんが迎えに来たわよ!!」

‥サオリちゃん!?

悟の母親の呼び掛けた言葉に晴樹は目を見開く。

「あ、俺彼女と祭り行くんでじゃぁ苗のことお願いします!」


「は!?‥彼女?!」

晴樹の問いかけに答えぬまま悟は笑顔で手を振って立ち去った。

―ガラッ‥

「兄さん!!準備でき‥
おぉ格好いいじゃん兄さん!!
いぶし銀だねっ
苗惚れちゃいそうだょ‥//」


「そ、そうか‥
別に惚れてくれても構わないんだぜ‥//」


心なしか頬を染める苗に晴樹も照れが隠せない‥

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