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14章 心の変化
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しおりを挟む「じゃあ、大ちゃんまたね!」
「おう、また行こうな!」
遅くに帰り着いた二人は苗の家の前で手を振り別れを告げる。
そして帰り着いた早々、空から晴樹の伝言を聞き、苗は晴樹に電話を入れた。
~♪
―――‥!
静かな部屋でテーブルに置いていた晴樹の携帯が着信を告げる
着信音で誰かは直ぐにわかる‥晴樹は目の前に置いていた携帯を手に取るとゆっくりと耳に当てた‥
「もすもす~」
『‥‥‥』
電話の向こうからはご機嫌な苗の声が聞こえてくる‥
いつも通りの苗の明るい声‥
今朝、聞いたばかりの大好きな苗の‥
晴樹は無言で携帯を耳に当てたまま、何かを堪えるように瞳を強く閉じていた
「はれ?‥もすもす?
兄さん!?」
『‥‥ああ、聞こえてるよ』
応答のない電話にムキになって呼びかける苗に晴樹は静かな口調で返事を返す
そして、どこかしら疲れた雰囲気を漂わす晴樹に苗は話しかけていた
「ああ、なんだ!また、電波の悪いとこにいるかと思ったょ
兄さんは、もう大事な用事は済んだだかね?」
『用事?‥ああ、もう済んだよ‥
苗は?‥楽しかったか?』
晴樹はそれとなく苗に聞き返した
・
「うん!初めて行ったけど面白いだねっ
兄さんが行きたがるのわかる気がする!!」
──‥っ
明るく今日のデートの感想を述べ勘違いしたことを堂々と語る苗の言葉が晴樹の胸を突き刺さした
『‥そか‥よかったな』
‥苗
俺は別に‥そこに行きたかったわけじゃ‥
苗と一緒ならどこでもよかった‥
そう言ってやりたくても言えない‥
楽しそうに返事を返す苗の声が明るければ明るい程‥晴樹の心は暗い闇の沼地に沈んで行くかのようだった
「兄さんも今回は行けなかったけどさ、オカンが赤ちゃん産んだら今度はみんなで行こうよ!」
『みんな?!』
苗の発言に晴樹は一瞬目を見開く
『‥みんなで‥か?』
‥なんだ‥やっぱり‥
──っ‥やっぱりそうか‥
苗の無邪気なセリフを聞き晴樹は瞳を伏せて笑いを溢す
『クスッ‥あぁ‥そうだな‥
時間出来たら、みんなで行こうな‥』
無邪気過ぎる苗の言葉に晴樹は電話口で悲しい笑みを浮かべそう答えていた
・
‥もういい
もう、望まない‥
これ以上、苗には何も望まないっ──
“俺は苗と一緒に行きたい!!”
その言葉もはっきりとチケットを手に入れたあの時に伝えてる‥
そして、
“二人で行こうっ”て‥
それでもコイツはこんなことを言ってくれる‥
俺に入り込む隙を最初から与えてもくれない。
だから‥俺はもうコイツには何も望まない‥
これからは苗が笑ってくれるように、苗が望む時に、援助をしてやればいい‥
それ以外の価値のない男なら‥そうするしか‥っ
『‥なえ‥ッ‥』
「ん?」
晴樹は口を開いた瞬間、急に震え出した声を遮るように自分の手で口を塞ぐ
そして息詰まる胸を押さえ苦し気に声を搾り出した
『──っ‥今日‥
大事な客が来て……』
「大事な?あ、用事ってそれか!」
『‥あぁ‥』
眉間にしわを寄せ熱をもつ目頭を押さえながら電話口の苗に話しかけた
『あと、な‥その客の世話頼まれてるから
当分は‥‥忙し‥』
「忙しい?あや~大変だねえ‥」
他愛もない話しに苗はもちろん普通に返事を返す
・
この一言を搾り出すのに晴樹がどれだけ乱れそうな声を堪え我慢してるかも知らず、無邪気で残酷な明るい声で苗はさらりと受け答えしていた
「兄さんとこにお泊まりコースなんだ、そのお客さんって?
だったら大変だねぇ」
『ああ‥でも苗、
忙しくても大丈夫だから‥
困ったことあったら直ぐ電話して……俺からは‥もう、連絡しな…っ──』
‥クソッ
上手く喋れない‥っ
込み上げる想いを押し殺し、吐き出す言葉を噛み締めながら晴樹は必死で呼吸を整える
「電話出来ない?」
『‥ああ‥もう‥っ』
‥俺からはもう、電話はしないっ‥
どんなに声が聞きたくて電話をしても苗からしてみれば迷惑なだけだ‥
それは今まで何度も経験してる
用のない電話はコイツは望んでない‥っ
「わかった!じゃあ用があったらこっちから、かけるだよ!!」
『──…ああ…でもな…でも、苗‥っ──…忙しいけど遠慮はしなくていいから…っ』
‥望まないからっ傍にくらいはッ
苦しくて胸を抑える晴樹に苗は無情な返事を軽く返してくる。そしてそんな苗の言葉を聞いても、それでもついしがみついてしまう自分自身が惨めに思えてならなかった。
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