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17章 距離…
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しおりを挟むどうやら空はグリーンとニャンだー元老の一人二役のようだった‥
*ニャンだー元老豆知識*
敵名:勘定ババァ苗!
特技 金勘定。
数学の計算はからっきしだが金の計算になるとすこぶる速く正確。
必殺技 お持ち帰り。
趣味 路上ティッシュ集め
「よいか若者達よ。闘いに勝ちたいのならまず、敵を知ることが先決じゃ!
‥‥‥ってこの役、喋りが面倒くさいんだよな💧」
「べつに普通でいいぜ💧?」
空のこの一言でゴッコは終わった💧
「姉ちゃんはさ、考えてる内容によって微妙に口の形が違うんだ」
空は得意気に語り始める‥
「勘定する時は真一文字。そして左脳を使う考え事の時‥
つまり今までの経験を参考に現実的な思考を巡らす時は唇が左寄りに尖るんだ」
「おおー、なるほど!!」
「何か難しい言葉が多いけどなるほどだな」
空の解説に海が深く頷き陸はわかった振りをする‥
空はそのまま続けた
「んで、今の姉ちゃんの表情を見ると・・・」
「口が右寄りに尖ってる‥」
二人は口を揃えて言う。
・
「そう!
右寄りと言うことは右脳。‥つまり、想像力を駆使してあれやこれやと思考を巡らしてる最中なんだ!
右脳を使って考えるってことは今までの姉ちゃんにはなかった!!
今までに姉ちゃんになかったこと‥‥と言えば?」
「恋──!」
「そう。
姉ちゃんは今まで恋について考えたことがない!!
それをたった今、必死で考えてんだよっ
オレらの声も聞こえないくらい集中してさ💧」
「なーるへそ。
そうだよな、言われてみれば‥これだけ勘定ババァって言ってんのに反撃してこないもんな💧」
そう、いつもなら何処にいても地獄耳で聞き取り背後から電マ攻撃を股間に仕掛けてくるのに今日は口を右寄りに尖らせブツブツと呟きを繰り返す‥
病院から戻り、居間に座り込んだまま微動だにしない態勢で‥
苗は考え込んでいた。
「相手は誰なんだろうな💧‥」
三つ子は声を揃え恋の病に悩む姉を見つめた
‥だって―――
だって兄さん忙しいからって‥
苗より‥お客さんが大事だからって・・・ぅぅ‥
苗よりあの娘のが大事だって!っ‥ぅぅッ
兄さんのバガ!!
晴樹はそんなこと、一言も言ってはいない💧
・
ただちょっと‥
苗は悲しかった。
いや。かなり、結構、だいぶ・・・悲しい💧
Aカップの胸の奥がシクシク痛みを増してくる‥
何故にこんな気持ちになるのだろうか?
何故にこんなに胸が痛むのだろうか‥
「うぅ‥兄さんいなきゃお持ち帰りもできないだよぅ‥ヒッグ‥ぐぇ‥
お持ち帰りできなぎゃっ‥ズビっ‥苗、ちんじゃう(死んじゃう)‥ッ‥」
くちゃくちゃに口を歪め畳に伏せておいおい泣きじゃくる姉を弟達は見つめている💧
「なんだ💧?恋に悩んでんじゃないみたいだぞ?」
「おかしいなっ、恋だと思ったんだけど💧‥」
「お持ち帰りできないとか叫んでたぞ💧」
・・・・
―――‥なに!!💧
お持ち帰りできない!?
陸達は苗の言葉を整理し、途端に青ざめた!
「姉ちゃんど〰ゆうことだよそれ!?
お持ち帰りがなきゃ‥オレ達死んじゃうじゃんかよぉっ…ぅあーん!‥ぅぅッ‥グェっ‥」
泣き伏せる姉にまとわりつき泣き出す弟達‥
やっぱり血の繋がった姉弟だった💧‥
痛む胸は持ち帰りを断たれた故の痛みなのか?
恋心に気づかぬはある意味、鈍感苗の得意技と言った方がよいのだろうか💧
・
今まで使わずにいた想像の脳‥右脳をふんだんに駆使し、考え始めた苗が自分の気持ちに気づくのはいつになるのやら‥
‥ぅぅっ‥苗より大事って‥
させないだも‥
二人の好きには!‥
二人の自由には―――ッ
絶対させないだもっ!!
涙に濡れた顔をキッと上げ、しまい忘れた季節外れの風鈴に何かを誓う‥
苗は‥コワレてしまった💧
「あ、晴樹!お帰り。
──って?」
苗を送り届け、戻ってきた晴樹にリディは声を掛ける
「晴樹?」
呼びかける自分の前を無言で素通りし、部屋へと向かう晴樹の背中をリディは見つめた‥
「ねぇ晴樹、今日はスクール休むんでしょっ?」
‥ウルサイ…
部屋のドアを叩きながらリディが話掛けてくる
「晴樹っ!!
さっき晴樹のパパから電話あったんだってば!!」
‥ウルサイッ
晴樹はベッドに体を投げ出したまま耳を塞ぐ
‥うるさい―――ッ
もう、俺に構うな!!
もう‥いいから…
頼むからほっといてくれよ!!
悲痛な叫びが胸の中で渦を巻く
苗が‥
苗が夏目を選んだ‥
その思いだけに心が支配される
・
晴樹にとってそれは世界の終わりとなんら変わりはない。
そのくらい晴樹にとって、苗の存在は大きかった…
夏目が告って付き合い始めた時とは訳が違う‥
今度は明らかに苗が…
夏目を選んだ──
〃大ちゃんの方が‥〃
苗の口からはっきりそう‥聞かされた
「――ッ‥苗っ」
携帯で夏目と楽しそうに話す苗を思い出し、晴樹は痛む胸を鷲掴むっ
自分と居て沈んでた筈が夏目からの電話を受けた途端笑顔を浮かべ明るい声で話す
あの変わりようは明らかに夏目に気がある
俺より‥夏目に──
自分の好きな娘が恋をした‥
自分ではない相手にッ
「どうすれば‥ッ‥」
消えそうな声で晴樹は呟く
‥こんな時どうしたら…
楽になるんだ…
どうすればこの痛みから逃げられる!?
願えばいいのか!?
好きな娘の想いが叶うように?
晴樹は心で葛藤を繰り返す‥
偽善者になりきれってか?
「‥ッ‥偽善か
そりゃ無理だ‥っ」
到底無理な自分に薄い笑いが溢れ、細めた瞳からは感覚の麻痺した涙腺が水滴を吐き出す‥
偽ることのできない想い‥
ベッド際の白い壁は、キラキラと滲む涙で水晶を覗いたように輝き晴樹は静かに息を吐いた‥
正直過ぎる想いはコントロールが効かない‥
誤魔化しの効かない想いだから…
想ってるだけでは満足できない自分を知ってるから…
妙な無茶をする前に…
大好きな苗を傷つけてしまう前に──
晴樹は苗から遠ざかるしかなかった…。
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