ありのままのキミに夢中 ~イケメンはずんどうぽっちゃりに恋をする!~

中村 心響

文字の大きさ
210 / 255
19章 恋の片道切符

3

しおりを挟む

会話もなくていい‥

今はこの時間を大事にしたい…


悲しい感情はいつの間にか和らぎ温かい想いが晴樹の心を満たす。


展望台に辿り付き晴樹は一番眺めのいい場所を見つけると苗に望遠を覗かせた。


「ゆっくり右に回してみな‥」

「右?」

晴樹に言われ苗は標準を合わせる‥

「‥うわぁ‥」

「な、いい眺めだろ」

「うん!
中華街のネオンがすごい綺麗だよ!!」

「中華街💧?」

‥俺が見せたかったのはそれじゃ‥💧

‥プッ

‥まぁいいか‥


的はズレていれど、苗は喜んでいる‥

晴樹は妥協し、そのまま望遠を覗かせてやっていた。

苗が自分といて楽しそうにしてくれている‥
それ以外、晴樹が望むものはない…


夜の輝く街を眺めはしゃぐ姿‥

苗のそんな姿を晴樹は胸に焼き付けるように見つめ続けた‥

‥こんなに手に届く距離なのに‥

こんなに…近くにいるのに──


「兄さん見てっ!」

「──!?」

直ぐ側にいた晴樹を苗は突然、引っ張り望遠を覗かせる

「み、見てって何を見りゃいいんだよ💧?」




普通の夜景しか写らない望遠を覗き晴樹は訴える。

「あれ、見えない?ちょっと待って‥」


──!?っ‥

「なっ──💧‥//」


苗は晴樹の肩を捕まえると顔を割込ませ強引に望遠を覗き込む──

密着してくる苗のふっくらとした頬を肌で感じ晴樹は一気に顔の熱を上げていた。

「苗っ!
無理だって二人で覗くのは!!‥//」

がっつり掴まれた肩に焦りながら晴樹は声をあげる

「直ぐ見つかるって!
あ、ほらっ!」

「‥‥!?」


望遠の焦点が目標物を捉えると、苗は安心して晴樹を解放した。

「‥ね!」

「!‥

ああ‥あったな…」

晴樹は望遠を覗き呟くように返事をかえした。

ネオンに主役を奪われた星の少ない東京の夜空‥

その中を一隻の飛行船が華やかな明かりを纏い、優雅に泳ぐ姿が映し出される…


「なんの飛行船だかね?」

「多分、結婚式の二次会‥

うちのホテルの飛行船だ」

晴樹は説明しながら望遠を再び苗に譲った

「へぇ…結婚式の二次会で飛行船かぁ、豪勢だね」

望遠を覗きながら晴樹の話に苗は答える




「乗ってみたいか?」

「うん。一回でいいから乗ってみたい!」

「そうか…」


望遠を覗きながら苗は興奮気味でそう語る。
晴樹はそんな苗をしばらく見つめると軽く息を吐いた。

「んじゃあ…

俺の奥さんになるか?」

「───‥


‥‥お、奥しゃん?‥💧」

そのセリフに苗は望遠から顔を上げ晴樹の顔を見上げる

「───‥💧?」

「ああ、
結婚して奥さんになったら毎日、飛行船に乗れるぜ」


晴樹は冗談交じりにウィンクを返す


「───‥‥毎日は‥乗りたくないだよ💧」

「‥そだな‥💧‥//」


あっさり苗に意見され晴樹は気まずそうに頭を掻いた…

冗談まじりで言ったセリフ。それさえも、断られたことに変わりはない💧



‥なに言ってんだ俺💧‥//


冗談で言ったことさえも却下される‥

密かに落ち込み、とことん諦めの悪い自分に我ながら呆れていた…。 

望遠を覗く苗の隣に立ち、晴樹は東京の夜景を見渡す‥

‥明日観る夜景は‥もうこの夜の景色とは違う…

そして──



「───‥」

想いをはせながら晴樹が苗を見つめていると、ふと苗の視線が晴樹に向いた…


「どうした?…もう飽きたか?」

話掛ける晴樹に苗は首を振って笑顔を向けた


「…ここ、いいね……


また兄さんと来たいだょ」

「───…」

晴樹は目を見開いた。

期待もしていなかった言葉…

せっかく落ち着いた鼓動が再び脈を早らせる


‥なんで今になってそんなこと‥っ‥


晴樹の大好きな笑顔を向け、そしてずっと晴樹が望んでいた言葉をさらりと苗は言ってくれる


どんなに気持ちを抑えてもそんな顔して‥
そんな言葉を言われたらッ

‥諦めろって方が無理に決まってんだろ──!!


「‥苗ッ!」

「うぁっ‥」


突然強く抱きしめられ、苗は晴樹の胸に顔をぶつけて一瞬もがいた

「苗ッ‥

なえ‥‥‥っ‥」


胸が熱すぎて息が出来ない

抱きしめた苗の後頭部を包み込み愛しむように掻き乱す。
苗の背中に回した腕も行き場を見つけられず小さな背中を泳ぐことが精一杯だった‥


「苗っ‥」

息苦しさでかすれる声に呼ばれ苗は顔を上げる

指先に絡まる艶やかな黒髪を優しくとかしながら晴樹は苗の顔を覗き込んだ‥


今まで何度も繰り返された光景‥


‥ぅあ‥//く、くるッ──


この先が予想でき、一瞬苗は身構えた。




「‥‥な‥え」


ビクリとした苗の緊張を感じ晴樹は伏せかけた瞼を開き苗を見つめた。

歯を食い縛り目をぎゅっと閉じて構える苗。晴樹はそんな苗の表情を目にし、微かに唇を噛む‥


‥っ‥俺にキスされるのはそんなに嫌か…


晴樹は傾けた顔をゆっくりと元に戻した‥

切ない‥

これが最後なのに…

結局は…どん底に突き落とされるっ
ほんのちょっと苗の口から嬉しい言葉を言われただけで沸き上がる想い…

熱を帯ては自分で必死に凍らせる

なんでいつも期待ばかり持たせる!?‥


もう…いい……ほんとに‥




構えたものの、一向に襲ってこない晴樹の唇に苗は恐る恐る目を開けた。

‥あ、あれ!?

「兄‥さん‥」


苗は自分を見つめる晴樹の視線に思わず目を見張った。熱を帯た揺れ動く瞳‥
何かを言いたげに唇は軽く開き微かに震えて見える‥

「兄さ‥どうしっ‥」

ほんの一瞬、大きく歪み掛けた晴樹の表情に驚き苗は声を掛けた。


「フッ‥ぶっ‥クスッ‥

いつみても笑えるな?お前のその顔。」

「‥う💧?」

悲痛な表情を浮かべたかと思った瞬間、腕から苗を解放し晴樹はさもおかしそうに含み笑いする

しおりを挟む
感想 20

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

罰ゲームから始まった、五人のヒロインと僕の隣の物語

ノン・タロー
恋愛
高校2年の夏……友達同士で行った小テストの点を競う勝負に負けた僕、御堂 彼方(みどう かなた)は、罰ゲームとしてクラスで人気のある女子・風原 亜希(かざはら あき)に告白する。 だが亜希は、彼方が特に好みでもなく、それをあっさりと振る。 それで終わるはずだった――なのに。 ひょんな事情で、彼方は亜希と共に"同居”することに。 さらに新しく出来た、甘えん坊な義妹・由奈(ゆな)。 そして教室では静かに恋を仕掛けてくる寡黙なクラス委員長の柊 澪(ひいらぎ みお)、特に接点の無かった早乙女 瀬玲奈(さおとめ せれな)、おまけに生徒会長の如月(きさらぎ)先輩まで現れて、彼方の周囲は急速に騒がしくなっていく。 由奈は「お兄ちゃん!」と懐き、澪は「一緒に帰らない……?」と静かに距離を詰める。 一方の瀬玲奈は友達感覚で、如月先輩は不器用ながらも接してくる。 そんな中、亜希は「別に好きじゃないし」と言いながら、彼方が誰かと仲良くするたびに心がざわついていく。 罰ゲームから始まった関係は、日常の中で少しずつ形を変えていく。 ツンデレな同居人、甘えたがりな義妹、寡黙な同クラ女子、恋愛に不器用な生徒会長、ギャル気質な同クラ女子……。 そして、無自覚に優しい彼方が、彼女たちの心を少しずつほどいていく。 これは、恋と居場所と感情の距離をめぐる、ちょっと不器用で、でも確かな青春の物語。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

ナッツアーモンド
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模S子。新入社員として入った会社でS子を待ち受ける運命とは....。

処理中です...