ありのままのキミに夢中 ~イケメンはずんどうぽっちゃりに恋をする!~

中村 心響

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19章 恋の片道切符

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「苗、冗談だよ‥今のはほんの冗談。」

呆気にとられた苗の肩を叩き落ち着かせるように晴樹は笑顔を向けた…

「よし、もう帰ろう‥

俺も明日から忙しいし…
な!ほら。」

「‥ぅ💧兄さん?」


呆然と立ち尽くす苗を急かし、晴樹は楽しそうに笑っている


とても楽しそうに‥

晴樹は必死で笑顔を作りその場を演じていた‥

もうそうするしかない‥

きしむ胸の痛みを誤魔化すには‥

自分自身を笑うしか…

そうするしか──‥

晴樹にはそれしか手段が思い浮かばなかったのだから…


車を運転する晴樹の横でサイドミラーを覗きながら、苗は口を尖らせる。

「兄さん💧」

「ああ?なんだ?」

「そんなに苗の顔は笑えちゃうだかね?‥//」

「‥‥!?💧


さっきのは冗談だよ!ククッ‥」

「‥っ‥//」


否定しながらも思い出したかのように笑う晴樹に苗は少し怒っている💧


‥そんなにおかしいのかな💧?

苗は怒りながら不安になっていた…


‥く、暗くてよく見えないだょ💧


走行中の暗い車内から苗は一所懸命ミラーを覗く‥


「何やってんだよ?」

晴樹は隣で不可解な動きをする苗に声を掛けた。




「だって‥‥

キスする時に笑われるなんて乙女として一大事だょ💧‥//」


「‥乙女💧?

なんだよそれ‥?」

‥キスする時にって‥‥


苗の言葉を晴樹は頭で繰り返す。
ミラーを覗き夢中で変な表情を練習する苗を横目に、晴樹の頭の中にはいくつもの疑問符が浮かび上がる


キスする時に笑われる?

一大事‥って‥??💧

───え!?💧‥‥‥///


晴樹は車を急に止めミラーを覗く苗を見つめた。


「なえ‥‥//」


「ん?」

唇を突き出したまま振り返り苗は返事する



「‥‥💧」

‥その顔は冗談抜きで笑える💧
そうツッコミたいが今はそれどころじゃない。

微かに期待が膨らみ胸の高鳴りに押され息が荒ぐ…


「なえ…

もしかして‥//

さっきのは嫌じゃなかった…ってことか?」



「‥‥‥‥//💧‥」


「‥‥苗💧?」


唇を尖らせ次第に赤くなる。
そんな苗を見て晴樹は小さなため息を洩らした


‥なんだ…

嫌だったわけじゃ…
‥//



今まで見たことのない苗の表情‥

女の子らしい格好で、自分を前にして普通に照れる姿。

もしかして少しは意識してくれてるんじゃ!?//




いや、待て‥いつもこんな感じで最後にどんでん返しでやられてる…

手放しで喜んじゃいけない…

手放しで喜んじゃ‥‥//



そう思いながらも嬉しさだけが込み上げてくる

晴樹は緩みそうな表情をきゅっと引き締めた‥

「苗‥//

真っ赤で酢ダコみたいだぞ‥//」


「う、うるさいだよ!‥//💧」


微かに赤い顔の自分を棚に上げ、照れながらうつ向く苗の顔を覗き込む。

からかってる場合じゃないのに、ついつい悪戯心が出てしまう…

「苗‥」

再び呼び掛ける晴樹の視線から逃れるように苗は目を反らし顔を背ける

「苗‥‥」

「ふ💧‥ふーんだっ‥//」


「苗‥こっち向いて…」


「ヤだょ、兄さん直ぐ人をバカにするんだからっ!!‥//」


「しないよ‥

バカになんかしないから。」

優しく呼び掛ける晴樹に反抗しながら苗はそっぽを向く。

「‥‥‥‥」

「‥ん?💧」


優しい言葉を掛けたまま何も言わなくなった晴樹を不思議に思い苗はふと晴樹の方を振り向いた…


「……っ‥//////」


目が合い慌てる苗を、晴樹は嬉しそうに目を細め、優しい笑みを浮かべて見つめている‥



シートにもたれていた体を晴樹は起こすとその身体は完全に苗に覆い被さる態勢だった💧


「嫌じゃなかった?」


「な💧‥なんのことだかねっ?」

苗の顔を覗き込み問い質す


「‥俺にキスされるのは嫌じゃない?」


「‥///💧」


シラをきった苗に晴樹はストレートに言葉を投げて質問を返す


「苗?…」

「ぅ、わ‥わかんないだょっ‥そんなこと!!‥//」


「わかんない?‥

…なんで?」

「な、なんでって──っ…」


「じゃあ‥ちゃんとしてみるか?」

「ぬぁ、またそんなおハレンチなこと言ってっ‥//」

「‥‥っ‥//💧

仕方ないだろ?‥//

いいよもう…ハレンチでもなんでも…」


晴樹は開き直った口調で返す

「‥もう、いい‥//


‥苗とキスしたい…」


「───は!!💧」


こじつける理由も何もない‥

素直に想いを言葉にした晴樹に苗は息を飲んだまま言葉を返すことができなかった…💧


「‥ぅあ//──…兄さっ
ダメっっ!!‥むっ///」


瞼を伏せゆっくりと覆い被さる晴樹の影に苗は全身がこわばる

軽く吸いつき離れる晴樹の唇‥

「ダメ?‥」

苗の発した言葉に晴樹は不安な顔を向けた。



「ぅ‥だ‥だっ‥て…

また笑うカラ‥//」


「───‥‥」

顔半分を手の甲で隠しながら小さな声で苗は呟いた‥

『いつ見ても笑えるなっ』


‥あぁ‥あれか──


晴樹に言われたことを気にする苗。


「‥💧
あれは──‥」


「あれは?‥//」


「あれは💧‥//」


「‥あれは💧?‥//」


「‥あれの意味は、
後で教えるから💧‥//」


「───なんで?」

「今は忙しいからだよ//💧」

「‥‥💧」

‥兄さんてば💧


往生際の悪い晴樹に苗は呆れている。

「‥忙しいって何が‥」


「苗とキスするのにだよ!‥‥‥//」

‥くそ‥もう頼むからジラすなよ…


もどかし過ぎて自分で何を言い出すか解らない

勝手な言動を繰り返しながら見つめてくる晴樹の瞳は徐々に熱を持ち揺らめきたつ…

「‥‥兄さん💧落ち着い‥//‥💧」

「どうやって?…」

‥っ…どうやってって……


反対に聞き返す晴樹に苗は言葉を飲み込む。

見つめながら再び首を傾けた晴樹にあたふたと苗は焦る。晴樹はそんな苗の頬にそっと手を添えた‥


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