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21章 ☆*:.。. IN ニューヨーク ☆*:.。.
2
しおりを挟む玄関で立ち話をする理事長をオカンは慌てて居間に通す。
「あぁ、ちょうど苗ちゃんのお母さんにもお話がありましてな…」
理事は迷わずお茶の誘いを承け居間に腰を下ろした途端、そう切り出していた。
◇◇◇
「……では今日、出た案件はまた明日にしましょう」
明日?…ふぅ‥またか…
毎回、引き延ばされる会議の内容。晴樹は重くなる気持ちを背負い、席を立つ
サポートについた周りのベテランの部下達に自分の意見を伝えることもままならない。村井は今朝から用があると会議を欠席している。
一人では何となく心細さが付きまとう。
日本の大企業が送り込んだ若社長。その力量を見極めようとする姿が回りの者達に垣間見える…
実力社会のアメリカでは結城の名前なんてなんの意味も持たない。
コネなんてクソ喰らえ
力だけで乗し上がる。だからこそアメリカンドリームなんて言葉があるのだから。
でも自分は…
アメリカンドリームなんて追い求めちゃいない…
求めてるのは常に…
あの、
無邪気な笑顔。
苗が傍に居ないと頑張れない…
「もう、寝てるか…」
時計を確認しながら日本時間を考える。
・
メインストリートを歩きながら、大きなプレゼントを抱えた金髪の女の子とすれ違う。両親に手を牽かれ和やかなムードを纏い、その家族連れは家路を急いでるようだった…
「いいな…今から家族でパーティーか…」
晴樹は独り言を呟き携帯を眺めた。
…冬休みだから遅くまで起きてるかも…
指が勝手にボタンをクリックする…
明るい家族連れを見ているとあの賑やかな田中家を思い出す。
会いたい…
…会いたい…っ
苗、…少しでいいから…
通信音にのせて願いを掛ける
プップップッ…
《この携帯は電源が…》
「──…っ」
通信音のすぐ後に音声が流れそう告げる。
電源切って寝てんのか?…嫌なヤツだな💧
もしかしたら苗も自分からの連絡を待ってるかも…。
そんな淡い期待は脆くも崩れ去る
あんなに好きだと言って泣いた苗の気持ちをつい疑ってしまう。
離れてなお、苗への想いが強まる自分だけが置いてけぼりをくらったみたいに思え晴樹は唇を噛み締めた…
「っ…
マジで泣きてぇ…」
帰り道、晴樹は路上で突然しゃがみ込む💧
滲み掛けた涙を手のひらで強引に押さえ、しゃがんだまま晴樹は遠くを見つめた…
・
情けない。でもしょうがない…
会いたいものは会いたいし
もう我慢の限界でもあった…
無理にでも連れてくればよかったっ…
我が侭な思いが溢れる
…ちくしょ💧見てんじゃねえ!!
道行く人がすれ違い様にしゃがみ込んだ晴樹を振り返る💧
晴樹はゆっくりと腰を上げ建物に寄り掛った。
さっきから携帯が点滅している…
でも晴樹は携帯に出る気はない。
リディの名前を確認した瞬間、晴樹は携帯をスーツの内ポケットにしまっていた。
リディからなら大体どんな内容かわかる。どうせ、またフレンドに紹介だとかXmasパーティーするとかだろ💧
こんなトコに来てまでリディに振り回されてたまるかっ…
一番待ってる人からの連絡は一向に来ないのに…
苗とすれ違う度に切なくなる…
「兄さー…」
ほらな…幻聴まで聞こえてきた…
マジでやばいわ、俺。
「兄さーんっ…」
本気でやばい…
幻聴がはっきり響く晴樹の耳…
うつ向いた顔を上げ瞼を何度となく瞬く晴樹の瞳は、その幻聴の主の幻影を捉える
「──…っ…な、…んでっ…」
…うそだろ!?
晴樹は人混みの向こうから走ってくる影に驚き息を飲んでいた
・
なえ…っ
「なえっ!──」
自分の視力を信じられず、晴樹は目を凝らした。
息を切らし、キラキラとした表情で自分をめがけ走ってくる少女。
「兄さーーんっ!」
日本語で恥ずかし気もなく大手を振って呼び掛けてくる声。
逢いたくて逢えなくて、あまりの辛さに泣けてしまった心が高鳴りだす
自分の元を目指し、一所懸命に走ってくる姿に晴樹は思わず笑みが溢れていた。
「はあっ…っ兄さん!
メリクリ!!」
呼吸を乱しながら苗は晴樹の元にやっとたどり着いた。
「なえ…どうして…」
今だに信じられない…
目の前の恋人を幻でも見るように見つめ晴樹は言葉を失っていた。
ただ、やっぱりどこからどう見ても彼女は本物。正真正銘、日本に居るはずの自分の恋人…
その証拠に、汗ばんだ額には、横からなびいた髪が一房 真一文字に貼りついている💧
やっぱ、本物だよな…//💧
晴樹は確信していた💧
「なえ…なんで…」
嬉しい…
すごい嬉しいのに疑問の問いかけだけが口から溢れる。言いたいのはこんな言葉じゃないっ
俺が言いたいのはっ…
「───っ!?」
・
戸惑う晴樹に苗は満面の笑顔を向けるとゆっくりと両腕を広げた。
「…//💧」
「アメリカンの挨拶だよっまさか本場に来てしない訳にはいかないからさ!」
苗は得意気に言ってのける。
「…ふッ…
あぁ、それもそうだな…」
その言葉に頷きながら微笑むと晴樹は苗を思いっきり抱きしめていた
…なえ
腕の中の感触をしっかりと確かめ、晴樹は瞳を閉じて味わう…
言葉にならない
溢れ過ぎた想いを晴樹は声にできなかった…
微かに震える唇を噛み締め、抱いた腕に力を込める。
苗が苦しくないように…
自分の熱すぎる想いを抑えながら…
熱を持ち始めた瞼をぎゅっと閉じ、耐える晴樹の耳に胸を奮わせる苗の想いが贈り込まれる
「あのね、兄さん…
すごい逢いたかった…。」
───…!
「苗ね…兄さんにすごい逢いたかっただょ…」
───…っ
「今日ね、すごい楽しみだっただょ…」
「───…っ
…っ……ふ…」
苗を抱きしめていた晴樹の腕に痺れが走った
もう抑えきれない。
そんな思いが後から後から晴樹の頬を伝っていく…
逢いたかった──
自分が真っ先に伝えたかった言葉。
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