ありのままのキミに夢中 ~イケメンはずんどうぽっちゃりに恋をする!~

中村 心響

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☆*:.。. o番外編o .。.:*☆

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「苗…」

「ん?」

「あいつ…うちの学園に入るのか…」

「そみたいだね…」

そみたい…って…

「お前知ってるなら言えよ!!」

―――え!?

何故に怒り出したか分からない晴樹の剣幕に、苗は思いっきり、たじろいでいた。

「だ、だって、わざわざ兄さんに言うことじゃ…」


「そ…れはそうだけどっ…」

早めに知ってた方が気持ち的に…

「兄さん…ちょっとっ…大丈夫だかね?…」

新たな恋敵の登場にすっかり笑顔の消えた晴樹を苗は覗き込む。

式を済ませたら直ぐにニューヨークに戻るつもりでいた。

何もかもが上手くいく中、ちょっと安心しすぎたかもしれないっ…


「苗…」

「は、い…」

声のトーンの落ちた晴樹。苗はおどおどしながら返事をした。

「ちょっと、俺こっちに居る日にち…延ばすからな!!」

「え!? だいじょびなの、向こうの会社は!?」

「だいじょびだっ! こっちの問題に比べたらなんてことない!!」

「えっ問題!? そ、…そう?」

問題って…


晴樹のただならぬ剣幕に、苗は難しい顔で腕を組む…



…いつの間に問題が起こっただかね?…うーむ…社長夫人になるってなんだか大変そうだよ…



そしてむーっと唸っていた…



夜空を游ぐ大きな魚…

いつか見た、望遠のレンズ越しに追いかけたあの夜の空を優雅に游ぐその乗り物に晴樹達は乗っていた。


内輪だけの二次会に気分もほぐれ、苗は由美とはしゃいでいる。

「ところで大ちゃんは?」

「夏目くん、帰ったよ…あれだけ泣けばね……」

由美と克也は目を合わせ苦笑いを浮かべた。

夏目はどうやら自慢の体力を消耗しきったらしい…


立ち去る姿はミイラのようだったと二人は言った。

「ミイラ…はは…」

苗は渇いた笑いで返すしかなかった…


「でも先輩ってほんとにかっこいいっ…苗、超幸せもんだよ!!」

羨まし気に由美に肘でこづかれながら苗はほんのりと頬を染めていた。

やっと晴樹への恋心に気付いた苗。

去年の今頃は家事に汗水流し、三つ子の世話に追われ、満作の尻拭いに走り回り、恋をするなんて思ってもいなかった…

何の因果か、入学したばかりの高校が金持ち学園に買収され、高校生活も早、中退かと騒いだ日々が懐かしい。

晴樹に初めて出会って、まさか結婚までするとはあの時の苗には想像もつかなかった。



「あ、苗? どうしたのっ」

悪友、貴志と肩を叩き合って笑っている晴樹の元へ、苗はフラリと歩いて行った。
ブランドのスーツに身を包み、プライベートの飲み会だからと少し着崩した姿が様になる。

細身のスーツは苗の大好きなルパン風。

長い足を更に引き立てたちょい悪な大人の晴樹に苗はかなり惹かれていた…


今まで感じることもなかった感情。

晴樹を見て胸がときめく。

“先輩ってかっこいい!!”

うん…確かにかっこいいだよ…


苗は由美の言った言葉を思い出し、無言で首を縦に振る…

ボウッとした表情は、心なしか目が座っているようにも見える…

「…ん?……おい、お前のマシューがこっち来るぞ…なんか頷きながらフラついてるな? 大丈夫かアイツ?」

「…え、苗が?」

振り向き様に晴樹の胸に苗はトンと飛び込んできた。

―――?…

「苗?…お前っ」

驚く晴樹を苗は見上げた。ほんのりとピンクに染まった頬。くりくりの瞳はトロンとしている…

「兄さん…」

「ど、うした?…」


「……兄さん……好き…」
――ぶっ…!…

突拍子もない苗の言葉に晴樹も貴志も思わず真剣に吹き出していた。


「いきなりなに言ってっ…」



「おーっすげえな! もう新婚初夜の準備万端じゃねえか!!」

「ばっ…デかい声でいうなっ!!」


真っ赤になる晴樹をニタニタと笑いながら眺める。

「お前、なに酒なんか呑んでんだよっ!?」

「えー…呑んでないだよぉ…」


どー見ても呑んでるだろうが!!ったく…

ぽやぁとした答えを返し口を尖らせて苗は抱きついてくる。

「だあって酔っ払った方が兄さんとの初夜、燃えるんだも──ん…うふっ」

「…お前は黙ってろ……」

「すまん…」


苗の代わりにくねくねしながら甘えたセリフを吐く貴志に晴樹は凄む。


「でも…今日はもちろん初夜だろ? だからお前仕事を延期したんじゃないのか?」

「別に初夜のためって訳じゃ…」

抱きついたままの苗に戸惑いながら晴樹は苗の顔を覗く。

何だか半分眠っているようだ…


“兄さん…好き…”


…苗


気持ちよさそうに自分の胸に抱かれる苗の表情に晴樹の胸が疼いた…


悟のことでちょっとムキになりすぎた。

仕事仕事で、日本に帰ってきても苗とゆっくり二人きりになることもなかったし…


だからそう…


たしかに今日は、貴志の言う通り。

初夜にもってこい!

の夜でもある。


心にもなかったことに気付かされ、密かに晴樹の気持ちが高鳴り出していた。


初夜っ…

なんかめちゃくちゃいやらしい響きに聞こえるだろ!


「もうそろそろ、二次会もお開きだぜ…んな緊張した顔すんなよ!」


「……痛っ!…」

貴志に背中を叩かれ気合いを入れられる。



緊張するなったって…



晴樹は顔を赤らめ戸惑いながら自分に抱きつく苗を見つめていた…


◇◇◇



「大丈夫か、苗…」


新居のマンションに辿り着きエレベーターの中で、自分に寄り掛かる。

晴樹はそんな苗の背中を優しく撫でていた。


晴樹が日本に居ない間に新居は田中家の倉庫代わりにもなっているらしく、次女、みのりのオムツやら何やらベビー用品がクローゼットに詰め込まれている。


まだ、一度も寝泊まりしたことのない我が家。

苗を大きなベッドに寝かせると晴樹は生活感のない部屋を眺めた。

白い空間。これからここに、苗と二人で色を付けていく…

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