227 / 255
☆*:.。. o番外編o .。.:*☆
2
しおりを挟む「苗…」
「ん?」
「あいつ…うちの学園に入るのか…」
「そみたいだね…」
そみたい…って…
「お前知ってるなら言えよ!!」
―――え!?
何故に怒り出したか分からない晴樹の剣幕に、苗は思いっきり、たじろいでいた。
「だ、だって、わざわざ兄さんに言うことじゃ…」
「そ…れはそうだけどっ…」
早めに知ってた方が気持ち的に…
「兄さん…ちょっとっ…大丈夫だかね?…」
新たな恋敵の登場にすっかり笑顔の消えた晴樹を苗は覗き込む。
式を済ませたら直ぐにニューヨークに戻るつもりでいた。
何もかもが上手くいく中、ちょっと安心しすぎたかもしれないっ…
「苗…」
「は、い…」
声のトーンの落ちた晴樹。苗はおどおどしながら返事をした。
「ちょっと、俺こっちに居る日にち…延ばすからな!!」
「え!? だいじょびなの、向こうの会社は!?」
「だいじょびだっ! こっちの問題に比べたらなんてことない!!」
「えっ問題!? そ、…そう?」
問題って…
晴樹のただならぬ剣幕に、苗は難しい顔で腕を組む…
…いつの間に問題が起こっただかね?…うーむ…社長夫人になるってなんだか大変そうだよ…
そしてむーっと唸っていた…
・
夜空を游ぐ大きな魚…
いつか見た、望遠のレンズ越しに追いかけたあの夜の空を優雅に游ぐその乗り物に晴樹達は乗っていた。
内輪だけの二次会に気分もほぐれ、苗は由美とはしゃいでいる。
「ところで大ちゃんは?」
「夏目くん、帰ったよ…あれだけ泣けばね……」
由美と克也は目を合わせ苦笑いを浮かべた。
夏目はどうやら自慢の体力を消耗しきったらしい…
立ち去る姿はミイラのようだったと二人は言った。
「ミイラ…はは…」
苗は渇いた笑いで返すしかなかった…
「でも先輩ってほんとにかっこいいっ…苗、超幸せもんだよ!!」
羨まし気に由美に肘でこづかれながら苗はほんのりと頬を染めていた。
やっと晴樹への恋心に気付いた苗。
去年の今頃は家事に汗水流し、三つ子の世話に追われ、満作の尻拭いに走り回り、恋をするなんて思ってもいなかった…
何の因果か、入学したばかりの高校が金持ち学園に買収され、高校生活も早、中退かと騒いだ日々が懐かしい。
晴樹に初めて出会って、まさか結婚までするとはあの時の苗には想像もつかなかった。
・
「あ、苗? どうしたのっ」
悪友、貴志と肩を叩き合って笑っている晴樹の元へ、苗はフラリと歩いて行った。
ブランドのスーツに身を包み、プライベートの飲み会だからと少し着崩した姿が様になる。
細身のスーツは苗の大好きなルパン風。
長い足を更に引き立てたちょい悪な大人の晴樹に苗はかなり惹かれていた…
今まで感じることもなかった感情。
晴樹を見て胸がときめく。
“先輩ってかっこいい!!”
うん…確かにかっこいいだよ…
苗は由美の言った言葉を思い出し、無言で首を縦に振る…
ボウッとした表情は、心なしか目が座っているようにも見える…
「…ん?……おい、お前のマシューがこっち来るぞ…なんか頷きながらフラついてるな? 大丈夫かアイツ?」
「…え、苗が?」
振り向き様に晴樹の胸に苗はトンと飛び込んできた。
―――?…
「苗?…お前っ」
驚く晴樹を苗は見上げた。ほんのりとピンクに染まった頬。くりくりの瞳はトロンとしている…
「兄さん…」
「ど、うした?…」
「……兄さん……好き…」
――ぶっ…!…
突拍子もない苗の言葉に晴樹も貴志も思わず真剣に吹き出していた。
「いきなりなに言ってっ…」
・
「おーっすげえな! もう新婚初夜の準備万端じゃねえか!!」
「ばっ…デかい声でいうなっ!!」
真っ赤になる晴樹をニタニタと笑いながら眺める。
「お前、なに酒なんか呑んでんだよっ!?」
「えー…呑んでないだよぉ…」
どー見ても呑んでるだろうが!!ったく…
ぽやぁとした答えを返し口を尖らせて苗は抱きついてくる。
「だあって酔っ払った方が兄さんとの初夜、燃えるんだも──ん…うふっ」
「…お前は黙ってろ……」
「すまん…」
苗の代わりにくねくねしながら甘えたセリフを吐く貴志に晴樹は凄む。
「でも…今日はもちろん初夜だろ? だからお前仕事を延期したんじゃないのか?」
「別に初夜のためって訳じゃ…」
抱きついたままの苗に戸惑いながら晴樹は苗の顔を覗く。
何だか半分眠っているようだ…
“兄さん…好き…”
…苗
気持ちよさそうに自分の胸に抱かれる苗の表情に晴樹の胸が疼いた…
悟のことでちょっとムキになりすぎた。
仕事仕事で、日本に帰ってきても苗とゆっくり二人きりになることもなかったし…
・
だからそう…
たしかに今日は、貴志の言う通り。
初夜にもってこい!
の夜でもある。
心にもなかったことに気付かされ、密かに晴樹の気持ちが高鳴り出していた。
初夜っ…
なんかめちゃくちゃいやらしい響きに聞こえるだろ!
「もうそろそろ、二次会もお開きだぜ…んな緊張した顔すんなよ!」
「……痛っ!…」
貴志に背中を叩かれ気合いを入れられる。
緊張するなったって…
晴樹は顔を赤らめ戸惑いながら自分に抱きつく苗を見つめていた…
◇◇◇
「大丈夫か、苗…」
新居のマンションに辿り着きエレベーターの中で、自分に寄り掛かる。
晴樹はそんな苗の背中を優しく撫でていた。
晴樹が日本に居ない間に新居は田中家の倉庫代わりにもなっているらしく、次女、みのりのオムツやら何やらベビー用品がクローゼットに詰め込まれている。
まだ、一度も寝泊まりしたことのない我が家。
苗を大きなベッドに寝かせると晴樹は生活感のない部屋を眺めた。
白い空間。これからここに、苗と二人で色を付けていく…
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件
こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。
クラスで1番の美少女のことが好きなのに、なぜかクラスで3番目に可愛い子に絡まれる
グミ食べたい
恋愛
高校一年生の高居宙は、クラスで一番の美少女・一ノ瀬雫に一目惚れし、片想い中。
彼女と仲良くなりたい一心で高校生活を送っていた……はずだった。
だが、なぜか隣の席の女子、三間坂雪が頻繁に絡んでくる。
容姿は良いが、距離感が近く、からかってくる厄介な存在――のはずだった。
「一ノ瀬さんのこと、好きなんでしょ? 手伝ってあげる」
そう言って始まったのは、恋の応援か、それとも別の何かか。
これは、一ノ瀬雫への恋をきっかけに始まる、
高居宙と三間坂雪の、少し騒がしくて少し甘い学園ラブコメディ。
手が届かないはずの高嶺の花が幼馴染の俺にだけベタベタしてきて、あと少しで我慢も限界かもしれない
みずがめ
恋愛
宮坂葵は可愛くて気立てが良くて社長令嬢で……あと俺の幼馴染だ。
葵は学内でも屈指の人気を誇る女子。けれど彼女に告白をする男子は数える程度しかいなかった。
なぜか? 彼女が高嶺の花すぎたからである。
その美貌と肩書に誰もが気後れしてしまう。葵に告白する数少ない勇者も、ことごとく散っていった。
そんな誰もが憧れる美少女は、今日も俺と二人きりで無防備な姿をさらしていた。
幼馴染だからって、とっくに体つきは大人へと成長しているのだ。彼女がいつまでも子供気分で困っているのは俺ばかりだった。いつかはわからせなければならないだろう。
……本当にわからせられるのは俺の方だということを、この時点ではまだわかっちゃいなかったのだ。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
罰ゲームから始まった、五人のヒロインと僕の隣の物語
ノン・タロー
恋愛
高校2年の夏……友達同士で行った小テストの点を競う勝負に負けた僕、御堂 彼方(みどう かなた)は、罰ゲームとしてクラスで人気のある女子・風原 亜希(かざはら あき)に告白する。
だが亜希は、彼方が特に好みでもなく、それをあっさりと振る。
それで終わるはずだった――なのに。
ひょんな事情で、彼方は亜希と共に"同居”することに。
さらに新しく出来た、甘えん坊な義妹・由奈(ゆな)。
そして教室では静かに恋を仕掛けてくる寡黙なクラス委員長の柊 澪(ひいらぎ みお)、特に接点の無かった早乙女 瀬玲奈(さおとめ せれな)、おまけに生徒会長の如月(きさらぎ)先輩まで現れて、彼方の周囲は急速に騒がしくなっていく。
由奈は「お兄ちゃん!」と懐き、澪は「一緒に帰らない……?」と静かに距離を詰める。
一方の瀬玲奈は友達感覚で、如月先輩は不器用ながらも接してくる。
そんな中、亜希は「別に好きじゃないし」と言いながら、彼方が誰かと仲良くするたびに心がざわついていく。
罰ゲームから始まった関係は、日常の中で少しずつ形を変えていく。
ツンデレな同居人、甘えたがりな義妹、寡黙な同クラ女子、恋愛に不器用な生徒会長、ギャル気質な同クラ女子……。
そして、無自覚に優しい彼方が、彼女たちの心を少しずつほどいていく。
これは、恋と居場所と感情の距離をめぐる、ちょっと不器用で、でも確かな青春の物語。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる