ありのままのキミに夢中 ~イケメンはずんどうぽっちゃりに恋をする!~

中村 心響

文字の大きさ
232 / 255
☆*:.。. o番外編o .。.:*☆

7

しおりを挟む

バーで軽く三次会を済ませた晴樹と貴志は酒盛りの場所を新居に移す。


途中、コンビニで買い込んだ酒やつまみをリビングのテーブルに広げると二人はソファに座らず、そのまま床敷きの絨毯に腰を据えた。

あぐらをかきながら貴志はリビングを眺めるとポツリと呟く。

「まさかお前がこんな早く結婚するなんてな…」


「……俺もビックリだわ」


晴樹の返した言葉に二人は目を合わせ同時に吹き出した。

さんざん笑って落ち着くと、晴樹は笑みを浮かべながら呟く。

「結婚したって実感はまだ湧かないけどな…」

「逃げられてちゃ湧かねーな……痛っ!…」


晴樹は笑う貴志に柿ピーを投げ付けた。

馬鹿な話しかしない二人もなんだかんだで付き合いは7年になる。

若気の至りで楽しいことも悪いことも沢山やってきた。

貴志はヤクザという職業がら隠し事はするが、嘘は一切言わない奴だ。

失礼極まりないが、付き合いと言うものはちゃんと心得ている。

「おれの方が絶対先に結婚すると思ったけどな…」

貴志は何気にぼやいた。




「お前の場合デキチャッタ婚だろ?」

「あー…あり得るな…」

そう応えながら貴志は遠い目をした。

酔いが回ってきたのかふふん、と意味なく笑う声が聞こえる。

「晴樹…」

「ん?」

「俺、ヤクザじゃん?」

「………」

「先を考えると結婚てどうかなー…って思えるんだよな…」

「………ヤクザも人の子だろ?普通でいいんじゃね?」

「んー……」

酔ってんのか?


唸りながら体が揺れる。
そんな貴志を晴樹は黙って眺めた。

「とにかくっ…」

貴志は項垂れた顔を急に上げると声を張り上げる。

「俺はお前の結婚式見て感動したわけだ…」

「………」

「お前…幸せそうだし……なんかいいなって…さ……思……」


「………貴志?」


威勢良く上げた顔が再び項垂れていくと力尽きたように静かになった貴志に晴樹は笑いが溢れる。

「ふ……寝るな途中で…」


晴樹はそう呟くと眠りに落ちた貴志を置いて風呂に入った。




苗の逃亡前に張られたお湯はバスタブの保温機能のお陰でまだ充分温かい。

満杯だった筈のお湯は、慌てて勇んだ晴樹のミスで湯栓が弛んでいたのか少しお湯が減っている。

ほろ酔いを醒まそうと、晴樹はシャワーを浴びてからお湯に浸かった。

「幸せそう……か」

貴志の言った言葉を呟いた。


羨ましく思ったんだろうか?

貴志の口からそんな言葉がでるなんて…


晴樹はそう思いながらお湯で顔を洗う。

時刻はあっという間に深夜の三時を回っていた。

風呂から出た晴樹は貴志を揺り起こした──

「おい、寝るならベット行けよ」


「んー…ふふ…抱いてくれ…」


「キモい奴だな…」


呼び掛けに意味もなく笑みを浮かべ、連れて行ってくれと言わんばかりに貴志の手が晴樹に絡み付いていた。




貴志の肩を担ぐと晴樹は自分の寝室に引きずりながら連れていった──


付き合いの長い大事な親友。


手が掛かるのはお互い様だな…


めんどくさいと思いながら、何となく晴樹も笑みが溢れる。


そして酔っ払いの貴志を担ぎ晴樹は寝室の明かりを付けた……


「──…っ」


え──マジっ!?…


ドサリとした音に加え、「グエッ!…」と蛙が潰れたような声がする。


室内を目にした瞬間、驚いた晴樹は大事な親友を廊下に転がして長い脚で踏みつけていた。



「──っ…貴志、お前帰れっ…」


「あ─…へへ…」


「帰れっ頼むから今すぐ帰れっ」



酔いつぶれた貴志の胸ぐらを掴むと晴樹はムキになって喚く。

そして携帯を手にした──

「タクシー大至急お願いします!」

迅速な行動が幸運を呼び寄せるのか?

マンションの下まで貴志を引きずり降ろすと三分も待たずに着いたタクシーに晴樹は酔っ払いを詰め込んだ。

晴樹は急いで家に戻り鍵を掛ける──


「………なえ…」

寝室のベットでグッスリと眠る苗に晴樹はくぎ付けだった。



何時からいたんだ!?…


スリッパで悟の所へ逃げ出した苗はそのまま晴樹に実家へ連れて行かれている。


よって──苗の靴は玄関に置いたままだ。


ほろ酔いの晴樹は玄関にちょこんと置かれたスリッパに気づくことが出来ずにいた。


戸惑いを見せながらも晴樹の頬が緩む──


自分の家だから帰ってきて当たり前。でも晴樹は実家に連れて行った筈の苗がこっそり戻ってきてくれていたことが何よりも嬉しかった…


晴樹はそっと布団を捲った──


ベットのスプリングがしなり晴樹の重みでゆっくりと沈んでいく。



「なえ…」


小さく呼び掛けると顔を覗き込むように近付いた晴樹の影が苗の上に落ちる。


ふんわりと鼻孔を擽るシャンプーの香り。


自分と同じ匂いが香るのは、苗がここでシャワーをした証拠でもある。


横を向いていた苗の髪を耳に掛けると露になった白い耳たぶに晴樹は唇を押し当てていた。

しおりを挟む
感想 20

あなたにおすすめの小説

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

クラスで一番人気者の女子が構ってくるのだが、そろそろ僕がコミュ障だとわかってもらいたい

みずがめ
恋愛
学生にとって、席替えはいつだって大イベントである。 それはカースト最下位のぼっちである鈴本克巳も同じことであった。せめて穏やかな学生生活をを求める克巳は陽キャグループに囲まれないようにと願っていた。 願いが届いたのか、克巳は窓際の後ろから二番目の席を獲得する。しかし喜んでいたのも束の間、彼の後ろの席にはクラスで一番の人気者の女子、篠原渚が座っていた。 スクールカーストでの格差がありすぎる二人。席が近いとはいえ、関わることはあまりないのだろうと思われていたのだが、渚の方から克巳にしょっちゅう話しかけてくるのであった。 ぼっち男子×のほほん女子のほのぼのラブコメです。 ※あっきコタロウさんのフリーイラストを使用しています。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。

たかなしポン太
青春
   僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。  助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。  でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。 「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」 「ちょっと、確認しなくていいですから!」 「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」 「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」    天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。  異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー! ※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。 ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

【完結】好きって言ってないのに、なぜか学園中にバレてる件。

東野あさひ
恋愛
「好きって言ってないのに、なんでバレてるんだよ!?」 ──平凡な男子高校生・真嶋蒼汰の一言から、すべての誤解が始まった。 購買で「好きなパンは?」と聞かれ、「好きです!」と答えただけ。 それなのにStarChat(学園SNS)では“告白事件”として炎上、 いつの間にか“七瀬ひよりと両想い”扱いに!? 否定しても、弁解しても、誤解はどんどん拡散。 気づけば――“誤解”が、少しずつ“恋”に変わっていく。 ツンデレ男子×天然ヒロインが織りなす、SNS時代の爆笑すれ違いラブコメ! 最後は笑って、ちょっと泣ける。 #誤解が本当の恋になる瞬間、あなたもきっとトレンド入り。

S級ハッカーの俺がSNSで炎上する完璧ヒロインを助けたら、俺にだけめちゃくちゃ甘えてくる秘密の関係になったんだが…

senko
恋愛
「一緒に、しよ?」完璧ヒロインが俺にだけベタ甘えしてくる。 地味高校生の俺は裏ではS級ハッカー。炎上するクラスの完璧ヒロインを救ったら、秘密のイチャラブ共闘関係が始まってしまった!リアルではただのモブなのに…。 クラスの隅でPCを触るだけが生きがいの陰キャプログラマー、黒瀬和人。 彼にとってクラスの中心で太陽のように笑う完璧ヒロイン・天野光は決して交わることのない別世界の住人だった。 しかしある日、和人は光を襲う匿名の「裏アカウント」を発見してしまう。 悪意に満ちた誹謗中傷で完璧な彼女がひとり涙を流していることを知り彼は決意する。 ――正体を隠したまま彼女を救い出す、と。 謎の天才ハッカー『null』として光に接触した和人。 ネットでは唯一頼れる相棒として彼女に甘えられる一方、現実では目も合わせられないただのクラスメイト。 この秘密の二重生活はもどかしくて、だけど最高に甘い。 陰キャ男子と完璧ヒロインの秘密の二重生活ラブコメ、ここに開幕!

処理中です...