ありのままのキミに夢中 ~イケメンはずんどうぽっちゃりに恋をする!~

中村 心響

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1章 危険な幼馴染み

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「おばさんに買い物も頼まれてただろ? 早く行かなきゃ。タイムセール」

「──…あっ…そうだった! 忘れてただよっ」

悟に言われ、苗はハッとして鞄を手にしていた。

慌てて椅子から立ち上がり、苗は前の入り口にいた晴樹の手を掴む。

「ロールペーパー98円、御一人様一個限りだっただよっ兄さんも来て! 悟ちゃんも急いでっ」

「……ちょ…」

苗は晴樹を引っ張りながら悟も急かす。

いいところの奥さんになったにも関わらず、苗の節約家は直らない。

「兄さん、途中で陸達も拾って!」

「陸達って…」

「御一人様一個限りなんだからっ」

「………」

言いたいことも何がしたいかもわかるにはわかる。

「三つ子を乗せたら定員オーバーになるぞ…」

「てやんでぃ! 暴走族だった男が何言ってんだかっ! 捕まらないように運転するのが兄さんの務めってえやつだよっ」

「………」
そうか?

反論したくても江戸っ子になった苗に話しは伝わらない。

たんに威勢がいいだけのべらんめいオヤジと化した苗は助手席で一人、意気込んでいる。

苗の勢いに何も言えぬまま、晴樹は車に苗と悟を乗せて小学校で陸達を拾うとスーパー「丸一」に向かうしかなかった……。



帰国した早々、新妻は人使いが荒い。

旦那様を労る気持ちも何もない苗はスーパー丸一で三つ子と晴樹達を相手に指揮をとる。

「陸はペーパー取りに行って! 兄さんはこっちっ…レジに並んで順番待つ! 海は玉子っ、空は醤油! 悟ちゃんはカートを持ってここに居て!」

狙うはペーパーばかりじゃない。
広い店内でお買得品を効率よく手に入れる為に、手際よく購入品の担当が振り分けられる。

お一人様一品の品を6人分。

カートに集めた品物を各自が手にしてレジを通過する。

「いや~大量購入完了っ」

「やったな姉ちゃん!」

田中家姉弟は車に乗り込むと満足な言葉を口々に発していた。

晴樹は車を運転しながら目をしらーっとさせる。

結局、全部の支払いを済ませたのは晴樹だった──


まあ、今更だけどな…

満作に苗との結婚の許しをもらう際、田中一家皆を養うつもりで頭を下げている。

何故か一人余計な人数が加わってはいるけど仕方ない。

結婚するってことはその家族の親戚とも付き合っていかなきゃならないのだから──

晴樹は定員オーバーで微かに寿司詰め状態の後部席をチラリとミラーで確認すると、悟の様子を盗み見ていた。



田中家に到着すると買い物した荷物を家に運ぶ。

田中家に仕舞い切らない食料品は、自分達のマンションの一室に一時保管となる。

三つ子と別れると苗と晴樹、悟の三人はマンションのエレベーターに乗り込んだ。

買い物に満足したほくほく顔の苗を挟み、晴樹と悟は終始無言のままだ。

着いてくるなと言いたくても部屋が隣じゃそう言う訳にもいかない。

晴樹は微かに苛立ちを募らせていた。

「じゃね、悟ちゃん。また後で」

「──……」

部屋の前で悟に手を振る苗の言葉に晴樹は目を見開いた。

「また後でってなんだよっ?」

ドアを閉めて中に入った早々、晴樹は苗を玄関で問い詰める。

「なにって…夕食は悟ちゃんも向こうで一緒に食べるだよ…」

「一緒に!?…」

聞き返す晴樹に苗は悟の親から食事の面倒を田中家で見てくれるよう頼まれていることを説明した。

「………」

中学終えてすぐの一人暮し。まわりで面倒見るのは当然といえば当然。

理解はできてもそれでも晴樹は納得がいかなかった──

やっと帰国が叶ってこれからの生活を苗と──

そう思い描いていた夢のライフが何だか危ぶまれている気がする。

晴樹は何気に小さく舌を打って苗を見つめた。



甘い時間をとそればかりを想像していたのに……

晴樹はきゅっと下唇を噛み締める。

「苗…」

「な、なに…?」

覗き込んで近付く晴樹の表情に苗はつい逃げ腰で答えていた。

「なんで逃げてんだよ」

「いや…だ、だって…兄さん、“ちゅう”しそうだからっ…」

「……っ…」

晴樹は怯えたように身構える苗に思いきりムッとして吠えていた。

「──…っ…帰ってきて久し振りに逢ったんだからキスぐらいするだろ普通っ」

やっぱり相変わらずな苗に怒れてしまう。

やっと二人きりになれたって言うのにほんとに毎回毎回コイツはっ…

「苗──…」

玄関で壁に手を付き苗を囲う。

苗は表情を変えた晴樹にヒッと怯えた声を漏らして目を強く瞑った。

「顔上げろ…」

「…う……」

「なえ…」

「……っ…」

囁いた晴樹の息が頬に掛かる。

晴樹の唇の体温がゆっくりと近付いてくると、それは強く口を結んでいた苗の唇をゆっくりと柔らかく食んでいた──

チュッと軽い音が鳴る。

顔を交差しながら甘く吸い付いては離れ、覗き込む晴樹の優しい触れ方に、苗は晴樹と肌を重ねた時のことを思い出し、強く閉じていた目をうっすらと開いていた。

「なえ…ただいま」

晴樹のその声に苗は照れたように小さく頷く。

微かに頬を染めて目を逸らした苗を見つめると晴樹は安心した溜め息を漏らす。
そして、今度は深く苗に口付けていた。



気を許した苗の唇から力が抜けていく──

熱い溜め息を溢し、深くを探る晴樹の舌が受け入れた苗の口腔で濡れた音を響かせていた。

「……っ…」

久し振りの苗の柔らかさを味わいながら胸が締め付けられる。

NYにいる間、何度夢見たか知れないこの瞬間──

「なえ……」

「んんっ…」

キスに慣れない苗のもどかしい舌の動きを晴樹はゆっくり誘導しては絡め取る。

「……逢いたかった…」

伝えたいのはただその一言だけだ──

晴樹は唇を離しては苗を見つめる。

柔らかく押し当てていた唇はいつの間にか体の熱の高まりを伝えるように強く擦り付けられ、晴樹は鼓動を早まらせた。

「なえ…っ…」

「ぬぁっ…ちょ…兄さんっここ玄関っ…」

「だから何だよ…家の中だから構わないだろ…っ」

それどころじゃない。

離れてどれだけ我慢してたか──

興奮して盛り上った下半身に苗の手を添えさせた晴樹に苗は大慌てだった。

うっああぁぁっ…

モリモリやぁ…っ

硬い異物の感触が制服の軟かな綿生地を通してしっかりと苗の手のひらに伝わってくる。

「す、…3D…っ」

「何言ってんだよバカッ…っ」

呆れて怒りながらも変わらぬ苗に何故かホッとして晴樹は思わず笑っていた。

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