魔法の使えない無能と呼ばれた私は実は歴代最強でした。

こずえ

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不思議な力

16話

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「そこだっ!」

私は僅かに動いた気配を察知して突撃する。

「うわわっ!タンマ!タンマ!アリーちゃん!タンマァァァァ!」

私はその声に気がついてすんでのところで身を捻って止まる。

「ご、ごめん!」

私たちは再び辺りを警戒する。

「ホントはタイマンでいくつもりだったけど…」

私はレティナの方をちらっと見る。

「まあ、得意不得意は誰にでもあるよね。」

レティナは楽しげに言う。

こうしてレティナも加わったところでクロノスの気配らしき気配が少し変わる。

「気をつけて!クロロっち、少しだけ強くなったよ!」

「わかった。」

私は少しだけ強まった気配を覚える。

背後でレティナが気配を消して隠れるのを感じる。

レティナの技能、隠密スニークだ。

自身の気配を消して、相手から認識されにくくなる技能で使用者の技量によって大きく性能が変わる。

レティナの場合はレティナに味方と認識されてる相手以外からは最高クラスの感知スキルがあっても隣に居て気配を感知されないレベルの技量がある為、気がついた時には首を斬られているなんて事も起きるようだ。

さらにルティナの暗殺術はだいたいの相手には即死クラスのダメージを与えられるので技能として最強クラスの技能なのだ。

クロノスは身体が頑丈なので、並大抵の攻撃では傷すらつかず、特殊な体質で傷がついても瞬時に完全回復出来るため、死ぬ事はないがダメージは蓄積される為、戦闘不能にはなるそうだ。

クロノスのこの能力を持ってしてもルティナは条件さえ揃えば確実に殺せると言っていた為、彼女の暗殺に失敗の文字は無いと言えるだろう。

そんな事を考えているうちにクロノスの気配が動くのを感じる。

私は精神を研ぎ澄ましてを探す。

「ルティナから教わった通りにすれば大丈夫なはず…」

ルティナは気配の察知には特に秀でた能力があり、例え目を潰されたとしても正確な位置や相手がどこの誰かがわかると言う。

…まあ、一度は左目を潰された事があるらしいけどね。

「遅せぇよ。」

私が気がついた時には背後にクロノスが居た。

私は即座に振り向きざまに裏拳を当てようとしたが、クロノスの拳が背中に叩きつけられる方が速かった。

私はそのまま前方向に前転しながら、体勢を整える。

今の一撃でかなりのダメージを負ってしまった。

幸い骨が折れるような事は無かったが、背中からは大量に血が出ており、身体に残るダメージは凄まじいものとなった。

クロノスに殴られた辺りでキィン!と金属の当たる音が聞こえる。

レティナのナイフ投げをクロノスが弾いたのだろう。

レティナが私の真後ろから現れる。

「アリーちゃん、これを飲んで!」

そう言って、レティナは緑色の液体の入った瓶を手渡す。

中身は身体の傷を治す為の薬、バイタルポーションだ。

私はそれを一気に飲む。

バイタルポーションの効果によって、傷ついたところが少し痛むが急速に回復する。

バイタルポーションの効果は凄まじいが効力が強すぎる為、このように傷が痛んだり、急速に回復させる事による身体への負担も大きいのだ。

それ故にあまり多用は出来ないので、基本的に戦闘には慎重な行動が求められる。

「ありがとう。助かった。」

「次もまだまだ来るよ。気を抜かないで!」

レティナは再び気配を消して様子を伺う。

今度こそと精神を研ぎ澄ます。

そして、振り返りざまに拳を振るう。

「そこだっ!」

「うおっと!」

クロノスは余裕の表情で私の拳を受け止める。

私はすぐに腕を引いて、クロノスが隠れる前に精霊力を高めた拳を真っ直ぐに打ち出す!

「おりゃー!」

「遅せぇよ!」

クロノスが私の拳を左腕で受け止めて、残った右腕でアッパーをくり出す。

私はそれを見越して、精霊力を脚に纏わせて、瞬時に離脱する。

リリスの力を使って、クロノスの左腕に微量の精霊力の痕跡を残せた。

ここまでは私の策の内だった。

「後は気がつかれなければ良いのだけれど…」

そんな思いがひっそりと漏れる。

微量な精霊力が動く。

おそらく、クロノスにつけたものだろう。

私の精霊力は最高ランクの精霊術師かシルフでないと除去は不可能に近いものだとシルフが言っていた。

それほどまでにこの身に宿る力は強いのだ。

もちろん、それを操るにも技術が必要になる。

強い力には代償がつきものだ。

それが世界のことわりだ。

だから、私はまだその力のほんの一部も使えないとシルフが言っていた。

私は精霊力を頼りにクロノスの行動を探る。

直後、背後からルティナの叫び声が聞こえる。

「アリーちゃん!逃げて!」

私は瞬時に前方向に転がる。

その瞬間、クロノスの拳が私の頭上スレスレを掠める。

私はすぐさま体勢を立て直して、足元に精霊力をつけて、自身の拳の精霊力を一時的にほぼゼロの状態にする。

クロノスが精霊力の中心に拳を振るうが、実態が無いため、空を殴るだけとなった。

さらにその一撃でクロノスの周囲に精霊力が舞う。

私はクロノスの周りに散った精霊力を共鳴させる。

リリスの名において命ずる!精霊よ、激しく震えなさい!精霊爆発フェアリーフレア!」

眩い光と小さく甲高い爆発音がクロノスを包み込む。

そして、すぐに強力な爆発になり、より激しい光を発する。

灼熱が吹き荒れ、視界を遮っていたものが全て吹き飛ぶ。

相変わらず、レティナの姿は見えないが、近くにいる事は何となくわかる。

クロノスの姿が見える。

だが、その姿はいつもの見なれた人間の姿とは違い、一目見て龍人である事がわかるような雄々しい龍の姿になっていた。

クロノスは私の方を向いて言う。

「フッ…フハハ…フハハハハハ!お前って奴は本当に面白い!俺にこの姿を取らせたのはお前の曾祖父ひいじいさんに値する者とお前だけだ!それだけの力があれば、ほとんどのモンスターは跡形もなく消し飛ぶだろうな!」

クロノスはとても楽しそうに笑っていた。
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