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不思議な力
15話
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「せい!」
私は腰を深く落として、一点に力を集中した突きを繰り出す。
正拳突きってやつだ。
目の前の岩が風圧で粉々になる。
ここに来て6日、今日でここともお別れだ。
明日はいつも通りに自由に過ごして、その翌日から依頼開始だとレーヴァテインの悪魔の力を通じて知った。
「よう。朝っぱらからやかましくしてんな。」
筋肉隆々の巨漢が崖の上から私を見下ろしていた。
「クロノスさんですか…何か用事でも?」
「クックック…」とクロノスは楽しげに笑って、崖からおりる。
「お前の事だから、また修行でもしてんのかなぁって思っただけだ。」
クロノスと出会った時に私の強くなりたいと言う願いを聞いて、彼はいつでも攻撃してきていいぞと言っていた。
だから、不意打ちを試したりもしてみたが、彼は強過ぎた。
まさに規格外の強さを誇る圧倒的な力を見せつけられていた。
ノワールとレティナと私で束になっても簡単に返り討ちにあう。
何をしても力でねじ伏せるその様は破壊神をも思わせるような強さだった。
「ふふっ…クロノスさんらしい理由ですね。」
この6日間、彼と共に居たおかげで通常よりも強いモンスターに襲われる頻度が高く、嫌でも向こうから寄ってくるので戦って倒す事を強いられる様な時もあった。
あまりに強過ぎる相手に対してはクロノスも協力していた為、それなりにはお互いに信頼関係が築けてきたとは思う。
「出会ったばかりの時はちんちくりんだったガキ共が目に見えて強くなる様はおもしれぇな。そのまま身体もデカくなりゃ、もっと面白かったがな!ガーッハッハッハ!」
クロノスから聞いたが、龍人は竜人と違い、力の大小で身体の大きさが変わるそうだ。
身体の大きさが大きな個体ほど、強い力を持っている場合が多いそうだが、稀に小さい姿が好きで力を抑制して身体を小さく保っているやつも居るらしい。
クロノスは例外で元々は龍人では無く、ただの人だったので、自在に大きさを変えられないようだが…
まあ、クロノスは彼の考え方的にも私の胸が大きくなるのを期待していたのだろう。
クロノスはそう言うやつだ。
そう秘かに燃え上がる私であった。
「ふわぁ…騒がしいねぇ…」
眠そうな目を擦りながら、ノワールが言う。
ノワールのメイド服はいつ見てもシワひとつ無い綺麗さで、ホコリも全くついてないと言っていいほどに綺麗だった。
まるでずっと直立不動で寝ていたかの様だった。
まあ、実際にはそんな事は無くて、普通にだらしない格好で横になって寝てたんだけどね。
その証拠に長い紫色の髪の毛はボサボサで、あちらこちらからアホ毛が生えてる。
「よう。相変わらず眠そうだな!」
「あぁ…クロノスですか…おはようなのです…」
ノワールは眠そうに目を擦っていた。
「レティンシアは寝てるみたいだな。」
クロノスがそう言うと私たちが寝床にしていた洞窟から飛び出てきた。
「はーい!呼ばれて飛び出て飛び跳ねるレティーだよー!」
「おわっ…早いな…」
クロノスは若干引き気味だった。
私たちは慣れたが、クロノスはレティナが起きるところは初めてだった。
「あ、クロロっちだー!おはよー!」
「お、おう。おはよう。」
「およ?クロロっちから挨拶が返ってくるなんて珍しいねぇ!」
レティナは寝起き早々から普段と変わらない元気な声で言う。
クロノスが珍しく押され気味だった。
「ぐぅ…いつも…すぅ…元気…」
ノワールは半分寝ながら言う。
「ノワールさん、せめて洞窟の中で寝てください。風邪ひいちゃいますよ。」
クロノスが何か言いだげに私を見ていたが、特に気にせずにノワールを洞窟の中で寝させる。
この辺りは朝晩の冷え込みが凄まじい…
例えるなら、砂のない砂漠みたいな感じだ。
もちろん、そんな中で居るので、レティナはふわふわのコート姿で白い息を吐いていたのだが、私はいつも通りの真夏の炎天下にいる様な格好だった。
「この辺りは比較的に暖かい方とはいえ、朝晩は冷え込みますからね。私はどうってことないですが、普通の人は寒いと感じるはずですし…」
レティナは少し納得した様子で頷いていた。
「…ワシからすればアリスも十分普通の人の様に思えるのだがのぅ」
「まあ、アリーちゃんは面白い体質だからねぇ~」
クロノスが呆れた様子で言ってるとレティナが楽しげに言う。
「レティンシアもノワールとアリスの事言えないくらいには変わった体質じゃろうて…」
レティナの種族は人間なのだが、何故か妖精の声が聞こえると言う不思議な力があるのだ。
通常はこの様な妖精の声は精霊術師かエルフにしか聞こえず、妖精王シルフの声ともなれば、ほんとに限られたごく一部のエルフの王族かアリスの様に直接の関係が無いと聞く事が出来ないそうだ。
「私たちは普通じゃない体質の人の塊みたいなもんだからね。そう考えるとクロロっちもかなり面白い体質だよね!」
「そうじゃな。ワシも人の事を言える立場では無かったわい。」
クロノスも特殊な体質の持ち主だ。
それ故の隷属では無い、下僕を扱う事が出来るのだ。
この二つには効果には差異はない為、混同されがちだが隷属は人と契約するものであり、通常はこちらしか扱えないのだが、下僕は血と契約するものの為、結びつきがより深く世代を超えて受け継がれる場合が多い。
クロノスはこの下僕が扱える数少ない血筋の一人なのだ。
そして、先程出てきたノワールもまた変わった体質を持っている。
ノワールは森人の王族と人間の間に産まれた森人間の人間側の見た目を受け継ぎ、エルフの体質を受け継いでいると言うなんとも不思議な身体なのだ。
その為、エルフの痕跡を見せる事無く精霊と会話出来るため、長年天性の精霊術師だと思われていたようだ。
実際はエルフの王族の血を受け継いでいるので、長い間を若い姿で過ごせる上に通常の精霊はもちろん高位の精霊とも会話出来る能力がある。
ちなみにノワールには双子のエルフの見た目を受け継いだ兄が居たが1000年ほど前に流行りの病で死んでしまったんだとか。
余談ではあるが、現在はノワールの妹がエルフの王をしてるらしい。
ノワールには15歳下の妹が居るのだが、その妹も双子の姉妹なのだ。
ちなみに王として居るのはその双子の姉妹の姉の方である。
…エルフの国の王族の話をする時のノワールは少し嫌そうな表情をしていたな。
「そうだ!」
私はクロノスに向き合って言う。
「クロノスさん、今一度、お手合わせお願いします!」
「ククク…アリスなら、またそう言うと思ったぜ!」
クロノスは腕を組んだまま堂々と仁王立ちしていた。
私は私の力を意識する。
私の拳に精霊力を纏う。
クロノスは少しだけ感心した様子でニヤリと笑う。
「行きます!」
「来い!」
私は全力でクロノスに向かって突撃する。
「振り下ろし!」
私が拳を振りかぶった瞬間、クロノスが初めて防御姿勢を取った。
ズガァァァァアン!と今までに無いほどの衝撃で辺りの岩が吹き飛んだ。
「ククク…このワシに防御姿勢を取らせたのは、実に4000年ぶりの事だ…」
クロノスは心の底から楽しんでいる様子で笑う。
「俺も少しだけ本気を出してやろう!」
クロノスの拳が龍の鱗に覆われる。
「これが…クロノスさんの力…」
「こんな圧倒的な気迫を感じるとレティーも呑気な考えで居られないわね。」
洞窟の中から、ノワールが飛び出して来る。
「アリスちゃん!危ない!」
目を閉じた状態のノワールが私の真後ろから全力でクロノスにナイフで斬り掛かる。
「ちょま?!」
クロノスはとても驚いた様子で身を躱す。
ノワールは普段とはまるで別人の様な身のこなしで次々にクロノスに対して攻撃をしかける。
「ちょ…タ、タンマ!おま!やめろ!」
クロノスはノワールのナイフによる猛攻を避けるのに精一杯だと言いたげに必死に叫ぶ。
しばらく、ノワールは猛攻をしかけて、クロノスはほぼ叫び声で呼びかけながら防御したり、避けているとノワールは何かに気がついたように目を開ける。
「ふわぁ…あれ?ここは…あ、おはようございます…」
「え?」
「…は?」
「…ん?」
私たち三人が驚いているとノワールは何かを察した様な表情を浮かべる。
「あの…私、寝ながら攻撃したりとかしてませんでしたか?」
「…は?寝ながら攻撃…?」
レティナが訳の分からないと言いたげに言う。
クロノスも思わずポカーンとして放心状態になるほどに驚いていた。
「はい。私、どうやら寝ている間に敵の気配を感じると寝ながら、攻撃してしまうみたいなのですよ。私の異名でもある夢見るメイドは、その寝ている私が戦う様を見て、そう呼ばれる様になったみたいなんですよ。」
「は、はぁ…」
クロノスはようやく落ち着きを取り戻した様子で空返事をする。
ノワールはいつもの様に眠そうな表情では無く、はっきりと起きてるって感じの表情をしていた。
「ふむふむ…この気配はクロノスさんの龍氣ですか…おそらく、今までこの気配を感じてなかったので、敵と認識したのかもしれませんね。下手に殺してなくて良かったです。」
ノワールは大きな欠伸を1つするといつもの様に眠そうな表情で言う。
「二人の手合せ…邪魔をしてごめんね…」
ノワールはそのまま洞窟の中に戻るとすやすやと寝始める。
クロノスは唖然とした様子で言う。
「まさか、このワシが防戦一方になるほどの実力だったとはな…本気では無いとはいえ、とてつもない戦闘能力じゃ…正直ヒヤッとしたわい。」
「私もあれほど機敏で確実に殺せる急所を的確に狙って猛攻をしかけるノワールさんを見るのは初めてです。」
寝ている間でも仲間を護る為に敵を確実に殺せる動きを身につけた。
まるでそんな意志を感じる様な殺戮兵器みたいな身のこなしだった。
レティナは何かを考えるように首を捻りポツリと呟く。
「ノワワンもいろいろあるみたいだね~。まあ、レティーも人の事言えないか…」
その声は誰に投げかけたわけでもなく、誰に聞かれる事も無かった。
私は気を取り直してクロノスに向き合う。
クロノスはニヤリと笑う。
「行きます!」
「おう!」
お互いに一瞬で間合いを詰めて、拳を振りかぶる。
「せいやぁ!」
「おらっ!」
ズガーン!と轟音が響き渡り、とてつもない衝撃波が辺りの岩を破壊する。
その影響で辺りが砂埃で見えなくなる。
私たちは同時に相手から距離をとる。
「ここからが本番ですね。」
私は感覚を研ぎ澄まして、僅かな変化も逃さない様に精神を集中させる。
私は腰を深く落として、一点に力を集中した突きを繰り出す。
正拳突きってやつだ。
目の前の岩が風圧で粉々になる。
ここに来て6日、今日でここともお別れだ。
明日はいつも通りに自由に過ごして、その翌日から依頼開始だとレーヴァテインの悪魔の力を通じて知った。
「よう。朝っぱらからやかましくしてんな。」
筋肉隆々の巨漢が崖の上から私を見下ろしていた。
「クロノスさんですか…何か用事でも?」
「クックック…」とクロノスは楽しげに笑って、崖からおりる。
「お前の事だから、また修行でもしてんのかなぁって思っただけだ。」
クロノスと出会った時に私の強くなりたいと言う願いを聞いて、彼はいつでも攻撃してきていいぞと言っていた。
だから、不意打ちを試したりもしてみたが、彼は強過ぎた。
まさに規格外の強さを誇る圧倒的な力を見せつけられていた。
ノワールとレティナと私で束になっても簡単に返り討ちにあう。
何をしても力でねじ伏せるその様は破壊神をも思わせるような強さだった。
「ふふっ…クロノスさんらしい理由ですね。」
この6日間、彼と共に居たおかげで通常よりも強いモンスターに襲われる頻度が高く、嫌でも向こうから寄ってくるので戦って倒す事を強いられる様な時もあった。
あまりに強過ぎる相手に対してはクロノスも協力していた為、それなりにはお互いに信頼関係が築けてきたとは思う。
「出会ったばかりの時はちんちくりんだったガキ共が目に見えて強くなる様はおもしれぇな。そのまま身体もデカくなりゃ、もっと面白かったがな!ガーッハッハッハ!」
クロノスから聞いたが、龍人は竜人と違い、力の大小で身体の大きさが変わるそうだ。
身体の大きさが大きな個体ほど、強い力を持っている場合が多いそうだが、稀に小さい姿が好きで力を抑制して身体を小さく保っているやつも居るらしい。
クロノスは例外で元々は龍人では無く、ただの人だったので、自在に大きさを変えられないようだが…
まあ、クロノスは彼の考え方的にも私の胸が大きくなるのを期待していたのだろう。
クロノスはそう言うやつだ。
そう秘かに燃え上がる私であった。
「ふわぁ…騒がしいねぇ…」
眠そうな目を擦りながら、ノワールが言う。
ノワールのメイド服はいつ見てもシワひとつ無い綺麗さで、ホコリも全くついてないと言っていいほどに綺麗だった。
まるでずっと直立不動で寝ていたかの様だった。
まあ、実際にはそんな事は無くて、普通にだらしない格好で横になって寝てたんだけどね。
その証拠に長い紫色の髪の毛はボサボサで、あちらこちらからアホ毛が生えてる。
「よう。相変わらず眠そうだな!」
「あぁ…クロノスですか…おはようなのです…」
ノワールは眠そうに目を擦っていた。
「レティンシアは寝てるみたいだな。」
クロノスがそう言うと私たちが寝床にしていた洞窟から飛び出てきた。
「はーい!呼ばれて飛び出て飛び跳ねるレティーだよー!」
「おわっ…早いな…」
クロノスは若干引き気味だった。
私たちは慣れたが、クロノスはレティナが起きるところは初めてだった。
「あ、クロロっちだー!おはよー!」
「お、おう。おはよう。」
「およ?クロロっちから挨拶が返ってくるなんて珍しいねぇ!」
レティナは寝起き早々から普段と変わらない元気な声で言う。
クロノスが珍しく押され気味だった。
「ぐぅ…いつも…すぅ…元気…」
ノワールは半分寝ながら言う。
「ノワールさん、せめて洞窟の中で寝てください。風邪ひいちゃいますよ。」
クロノスが何か言いだげに私を見ていたが、特に気にせずにノワールを洞窟の中で寝させる。
この辺りは朝晩の冷え込みが凄まじい…
例えるなら、砂のない砂漠みたいな感じだ。
もちろん、そんな中で居るので、レティナはふわふわのコート姿で白い息を吐いていたのだが、私はいつも通りの真夏の炎天下にいる様な格好だった。
「この辺りは比較的に暖かい方とはいえ、朝晩は冷え込みますからね。私はどうってことないですが、普通の人は寒いと感じるはずですし…」
レティナは少し納得した様子で頷いていた。
「…ワシからすればアリスも十分普通の人の様に思えるのだがのぅ」
「まあ、アリーちゃんは面白い体質だからねぇ~」
クロノスが呆れた様子で言ってるとレティナが楽しげに言う。
「レティンシアもノワールとアリスの事言えないくらいには変わった体質じゃろうて…」
レティナの種族は人間なのだが、何故か妖精の声が聞こえると言う不思議な力があるのだ。
通常はこの様な妖精の声は精霊術師かエルフにしか聞こえず、妖精王シルフの声ともなれば、ほんとに限られたごく一部のエルフの王族かアリスの様に直接の関係が無いと聞く事が出来ないそうだ。
「私たちは普通じゃない体質の人の塊みたいなもんだからね。そう考えるとクロロっちもかなり面白い体質だよね!」
「そうじゃな。ワシも人の事を言える立場では無かったわい。」
クロノスも特殊な体質の持ち主だ。
それ故の隷属では無い、下僕を扱う事が出来るのだ。
この二つには効果には差異はない為、混同されがちだが隷属は人と契約するものであり、通常はこちらしか扱えないのだが、下僕は血と契約するものの為、結びつきがより深く世代を超えて受け継がれる場合が多い。
クロノスはこの下僕が扱える数少ない血筋の一人なのだ。
そして、先程出てきたノワールもまた変わった体質を持っている。
ノワールは森人の王族と人間の間に産まれた森人間の人間側の見た目を受け継ぎ、エルフの体質を受け継いでいると言うなんとも不思議な身体なのだ。
その為、エルフの痕跡を見せる事無く精霊と会話出来るため、長年天性の精霊術師だと思われていたようだ。
実際はエルフの王族の血を受け継いでいるので、長い間を若い姿で過ごせる上に通常の精霊はもちろん高位の精霊とも会話出来る能力がある。
ちなみにノワールには双子のエルフの見た目を受け継いだ兄が居たが1000年ほど前に流行りの病で死んでしまったんだとか。
余談ではあるが、現在はノワールの妹がエルフの王をしてるらしい。
ノワールには15歳下の妹が居るのだが、その妹も双子の姉妹なのだ。
ちなみに王として居るのはその双子の姉妹の姉の方である。
…エルフの国の王族の話をする時のノワールは少し嫌そうな表情をしていたな。
「そうだ!」
私はクロノスに向き合って言う。
「クロノスさん、今一度、お手合わせお願いします!」
「ククク…アリスなら、またそう言うと思ったぜ!」
クロノスは腕を組んだまま堂々と仁王立ちしていた。
私は私の力を意識する。
私の拳に精霊力を纏う。
クロノスは少しだけ感心した様子でニヤリと笑う。
「行きます!」
「来い!」
私は全力でクロノスに向かって突撃する。
「振り下ろし!」
私が拳を振りかぶった瞬間、クロノスが初めて防御姿勢を取った。
ズガァァァァアン!と今までに無いほどの衝撃で辺りの岩が吹き飛んだ。
「ククク…このワシに防御姿勢を取らせたのは、実に4000年ぶりの事だ…」
クロノスは心の底から楽しんでいる様子で笑う。
「俺も少しだけ本気を出してやろう!」
クロノスの拳が龍の鱗に覆われる。
「これが…クロノスさんの力…」
「こんな圧倒的な気迫を感じるとレティーも呑気な考えで居られないわね。」
洞窟の中から、ノワールが飛び出して来る。
「アリスちゃん!危ない!」
目を閉じた状態のノワールが私の真後ろから全力でクロノスにナイフで斬り掛かる。
「ちょま?!」
クロノスはとても驚いた様子で身を躱す。
ノワールは普段とはまるで別人の様な身のこなしで次々にクロノスに対して攻撃をしかける。
「ちょ…タ、タンマ!おま!やめろ!」
クロノスはノワールのナイフによる猛攻を避けるのに精一杯だと言いたげに必死に叫ぶ。
しばらく、ノワールは猛攻をしかけて、クロノスはほぼ叫び声で呼びかけながら防御したり、避けているとノワールは何かに気がついたように目を開ける。
「ふわぁ…あれ?ここは…あ、おはようございます…」
「え?」
「…は?」
「…ん?」
私たち三人が驚いているとノワールは何かを察した様な表情を浮かべる。
「あの…私、寝ながら攻撃したりとかしてませんでしたか?」
「…は?寝ながら攻撃…?」
レティナが訳の分からないと言いたげに言う。
クロノスも思わずポカーンとして放心状態になるほどに驚いていた。
「はい。私、どうやら寝ている間に敵の気配を感じると寝ながら、攻撃してしまうみたいなのですよ。私の異名でもある夢見るメイドは、その寝ている私が戦う様を見て、そう呼ばれる様になったみたいなんですよ。」
「は、はぁ…」
クロノスはようやく落ち着きを取り戻した様子で空返事をする。
ノワールはいつもの様に眠そうな表情では無く、はっきりと起きてるって感じの表情をしていた。
「ふむふむ…この気配はクロノスさんの龍氣ですか…おそらく、今までこの気配を感じてなかったので、敵と認識したのかもしれませんね。下手に殺してなくて良かったです。」
ノワールは大きな欠伸を1つするといつもの様に眠そうな表情で言う。
「二人の手合せ…邪魔をしてごめんね…」
ノワールはそのまま洞窟の中に戻るとすやすやと寝始める。
クロノスは唖然とした様子で言う。
「まさか、このワシが防戦一方になるほどの実力だったとはな…本気では無いとはいえ、とてつもない戦闘能力じゃ…正直ヒヤッとしたわい。」
「私もあれほど機敏で確実に殺せる急所を的確に狙って猛攻をしかけるノワールさんを見るのは初めてです。」
寝ている間でも仲間を護る為に敵を確実に殺せる動きを身につけた。
まるでそんな意志を感じる様な殺戮兵器みたいな身のこなしだった。
レティナは何かを考えるように首を捻りポツリと呟く。
「ノワワンもいろいろあるみたいだね~。まあ、レティーも人の事言えないか…」
その声は誰に投げかけたわけでもなく、誰に聞かれる事も無かった。
私は気を取り直してクロノスに向き合う。
クロノスはニヤリと笑う。
「行きます!」
「おう!」
お互いに一瞬で間合いを詰めて、拳を振りかぶる。
「せいやぁ!」
「おらっ!」
ズガーン!と轟音が響き渡り、とてつもない衝撃波が辺りの岩を破壊する。
その影響で辺りが砂埃で見えなくなる。
私たちは同時に相手から距離をとる。
「ここからが本番ですね。」
私は感覚を研ぎ澄まして、僅かな変化も逃さない様に精神を集中させる。
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