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古き時の小波

22話

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アリスはオリュンと共に王都の城下町を歩いていた。

「オリュン、あの大きな建物は何ですか?」

オリュンがアリスの指さした大きな建物を見る。

「あれはギルドと呼ばれる建物ですね。私も冒険者だった頃にお世話になった事がございます。よろしければ少し寄っていきますか?」

「やったあ!オリュンも行ってた場所なんて、すっごくワクワクする♪」

オリュンとしっかり手を繋いだアリスがスキップしながら、ギルドに向かう。

「お邪魔しまーす!」

アリスが元気よくギルドの扉を開けて挨拶する。

入口付近の何人かの冒険者がこちらを向いたが、ほとんどの者はすぐにやっていた事に集中し始める。

アリスが元気よく挨拶したのを聞いたであろう冒険者がこちらにやってくる。

短くボサボサの赤い髪で右眼に海賊みたいな眼帯をしている女性だ。

その眼帯の下からは怪我の跡が見えた。

「初めまして。お嬢さん、アタシはこのツェリースト国のギルド長をしているクレアールと言う者だ。」

クレアールは人懐っこい笑みでニカッと笑う。

「こんにちは。クレアールさん、私はアリスです。よろしくお願いします!」

アリスもニコッと微笑みながら、貴族らしくスカートの裾を持って元気に挨拶する。

「アッハッハッ!貴族の嬢ちゃんにしては物腰も柔らかくて良いね!なんとなくだが、凄く強そうだ!そのうえ可愛いとまでくれば、もう向かうところ敵無しって感じだな!」

クレアールがそう言うとオリュンがアリスの後ろから言う。

「ギルド長、ダメですよ!アリス様はアルフェノーツ家のご令嬢なんですから、敬語を使わないと…」

「まぁまぁ、そんな堅い事言うなよオリュン。アリスも嫌そうな顔してないから良いだろ?な、アリス。」

クレアールの笑みにアリスもつられて微笑んでいるとクレアールが言う。

「な?アリスも良いって言ってるし、良いだろ?オリュンもあの頃みたいな言葉使いで良いからさ」

オリュンは「はぁ…」と頭を抱える。

「貴方はそう言う人でしたね…ただ今の私はアリス様のメイドですので、あの頃の様な言葉使いをする訳にはいかないのです。」

クレアールはうんうんと首を縦に振る。

「アタシはお前のそのクソ真面目なところも好きだぜ。実際、お前の頭の良さには何度も救われているからな。」

「あれはギルド長が脳筋過ぎただけです。S級モンスターのスライム相手に無策で物理武器で突っ込む命知らずなんてギルド長くらいなもんです!」

そんな2人のやり取りの側でアリスが暇そうにボーッとしているとクレアールが気づいた様子で言う。

「そうそう。アリスの事をすっかり忘れてたぜ。ごめんな?」

アリスは突然話しかけられた事で身体を少しビクッとさせていたが、すぐに笑顔で言う。

「い、いえ、大丈夫ですよ。お二人が楽しそうでしたので…」

「そうかい?なら、その言葉に甘えるとするか!アリスも冒険者に興味が湧いたら、ギルドに来てくれよな!」

クレアールがそう言うとオリュンが力強く言う。

「私の目が黒いうちはアリス様にそんな危険な事をさせる訳にはいきませんわ!さ、アリス様、早く次の場所に参りますよ。」

「う、うん。」

アリスはクレアールに別れの挨拶をしてギルドを出る。

ギルドを出てからもしばらくオリュンは愚痴をこぼしていた。

「全くもう…あの人は…アリス様になんて事を言ってるんですかね…まあ、いつもの事といえば、いつもの事ですけど…」

「オリュン」

「はい!どうかされましたか?」

オリュンは先程まで不満そうにしていた顔から一瞬で可愛らしい笑顔になる。

アリスは純粋な疑問をオリュンにぶつける。

「あのね。オリュンが良ければ、クレアールさんとの関係を教えてほしいんだ。それと冒険者についても教えて!私のまだ知らない世界の事…たくさん知りたいの。」

オリュンは少しだけ、嫌そうな表情をしたが、すぐに諦めた様子でボソッと言う。

「アリス様は言い出したら、聞きませんものね…」

あまりに小さな声だったのでアリスの耳にはあまりよく聞こえなかった。

「ギルド長…クレアールとは私が冒険者をやってた時の同期としてのつきあいから始まります。あの頃はまだ私もクレアールも新人冒険者だったので、共にパーティの仲間として日々鍛えていたのです。私は戦術や魔法を駆使して戦うスタイルが得意でした。逆にクレアールは狙った獲物に一直線に突っ込んで力で強引に押し切ろうとする戦い方を好んでいました。そのため、私が支援する事も多かったのです。」

それから、オリュンとクレアールはたった2年で歴代最速かつ最強の負け知らずなパーティーとして、A級パーティーに認定され、S級になる日も近いと言われていたんだって!

オリュンはアリスに合わせて歩きながら、一瞬暗い顔をしていた。

「しかし、その快進撃も二人の慢心によって止まってしまいます。あっさりと熟練冒険者と肩を並べるまで至った私たちは二人でなら誰にも負けないと思っていました。そこに若さも相まって、無謀な挑戦を何度も繰り返しながらも余裕を残して依頼達成を繰り返していたある日です。」

オリュンがそう言うとまるでその場にいるかのような感覚を感じる。
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