魔法の使えない無能と呼ばれた私は実は歴代最強でした。

こずえ

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漣の少女

36話

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「リリーフィル、これを使って!」

私はリリーフィルにバルムンクを投げる。

リリーフィルがバルムンクを手に取った瞬間、バルムンクが輝きを放つ。

バルムンクの形状が変化し、神剣ジークフリートへと変化する。

「わぁ…!神剣バルムンクなんて初めて触りましたよ!私!」

「普通はなんて触れないわよ。しかも、それ神化を発揮した神剣ジークフリートよ。」

無邪気に喜ぶリリーフィルに冷静なツッコミを飛ばす3本の尻尾の茉莉。


世界樹武具は世界樹の神の作った武具の事である。

長いので、冒険者は省略して世界樹武具と呼ぶのである。

世界樹武具は神化と言う現象を引き起こす事があり、これは所有者の魂と世界樹武具が共鳴して起こる現象であり、この世界の歴史上でもかなり珍しい事例なのだ。

そして、神剣ジークフリートは神剣バルムンクの神化を発揮した状態であり、バルムンクの時より龍に対する特攻属性が大幅に強化されているのが特徴だ。

ちなみにアリスの持つ神剣エクスカリバーも神化を発揮した状態なので、アリスも神化について知っている。


私は神剣ジークフリートを持って喜ぶリリーフィルを見ながらポツリと言う。

「まさか…リリーフィルって…」

ヘルグレアの左の爪が余所見をした私に襲いかかる。

「油断してるとでも?フェアリーナックル!」

私はただの精霊力を纏った拳をヘルグレアの左の爪にぶつけて、ヘルグレアの爪を木っ端微塵にする。

「グルルルル?!」

ヘルグレアが驚いた様子で自分の爪を見ていた。

「行きますよ!波強化ウェイヴアップ!からの超振動裂空波!」

リリーフィルの波魔法で強化した真空の刃がヘルグレアの右足に傷をつけ、ヘルグレアの血を撒き散らす。

「グオオオ!!!!!!!!」

ヘルグレアは怒りの黒い炎をはく。

茉莉は一歩前に出て黒い炎の目の前で言う。

「魔装顕現!反逆の魔鏡!逆転の杯!」

茉莉がそう言い放つと2種の魔装が現れて、ヘルグレアの炎を受け止め、反射する。

「グルル!」

ヘルグレアはどんどん熱量を上げて、その跳ね返される勢いを力押しで突破しようと試みる。

「波魔法のお嬢さん!アンタの魔法の腕を見込んで頼みがある!」

茉莉がそう言うとリリーフィルが茉莉を見る。

「なにかしら?」

「やつの胸部にある発熱器官を破壊してほしいんだ。このままじゃ、魔装と言えど、これだけ激しい熱を浴びせられたら、溶けて使い物にならなくなっちまうでな!」

「しょうがないわね…」

リリーフィルが右手を突き出して目を閉じ、集中して魔力を高め、魔力の球を作る。

「我が波は如何なる障壁すら打ち砕く力となり、その全てを無に返す…」

リリーフィルは目を開く。

「とくと味わえ!破壊球ブレイクショット!」

その瞬間、リリーフィルの右手から球が発射され、ヘルグレアの発熱器官に当たり破壊する。

ヘルグレアの炎の勢いが著しく低下する。

「グルルルルル?」

ヘルグレアは怒りを納めて、自分の器官が壊された事を理解する。

茉莉は魔装の回復の為に魔装をしまう。

「間髪入れずに行くわよ!」

私は神剣エクスカリバーを取り出す。

「詠唱省略!応えて…エクスカリバー!」

エクスカリバーの魔力が解放されて光り輝く長い刀身が現れる。

「おりゃあ!」

私はそのままヘルグレアの左腕を切り落とし、左足を傷つける。

「グオオオオオオオオオオ!!!!!!」

ヘルグレアが痛みに声を上げる。

「茉莉!」

「任せて!」

茉莉は空高く飛び上がって、通常の魔法より遥かに威力が高い極魔法レリスを使う。

沢山の魔法陣が茉莉の背後に現れる。

魂動こどうを喰らえ…闇極魔法ダークレリス!ムーンレイ!」

全てを灰にする月の光のレーザーが魔法陣から無数に放たれる。

「グオオオオオオ!!」

ヘルグレアが苦しみに耐えながら、反撃しようとする。

「させませんよ!グランドウェイヴ!」

ヘルグレアがリリーフィルの波魔法で軟化した地面に足を取られてバランスを崩してよろめく。

私は茉莉のレーザーの間を縫ってヘルグレアの懐に潜り込む。

「これでどうだ!」

私のエクスカリバーの一撃がヘルグレアの胴体を裂く。

「グオオオオオオオオオオ!!!!!!」

ヘルグレアがそのまま倒れこむ。

私とヘルグレアの目が合う。

「グルルルル…」

私はエクスカリバーをしまいながらヘルグレアに近づく。

「悪いけど、アンタは危険過ぎるのよ。」

「グルル…」

ヘルグレアが頭を持ち上げて、私の目の前に口から吐いた玉を落とす。

「これって…」

私が左手で拾ったのを見たヘルグレアは安心したかのように力なく頭を落とし、息絶える。

私はこれが何かを知っていた。

「…龍らしいわね。」

私はそんな事をポツリとつぶやくと球が呼応して私の左手の中に溶けるように入り込む。

「アリスお姉様!やりましたね!あの冥天龍を討伐するなんて凄いですよ!あ、これ返しておきますね。」

私はリリーフィルから神剣ジークフリートを返してもらう。

(神剣が私の元に戻るのを喜んでる?いや、武具に意思があるなんて聞いた事もないんだけど…)

茉莉はニコニコと微笑んでいた。

「うん…リリーフィルの波魔法のおかげで普段より力も出せたし、リリーフィルのおかげだよ。」

「えっへへ…照れちゃいます。」

私は茉莉に言う。

「ちょっと目を離した隙に凄く強くなったね!びっくりしたよ!尻尾も増えてるし、前より大人っぽい感じもする!」

茉莉は面白そうに笑って言う。

「あっはは!それは愉快な話だわ!アリスも世界樹武具なんて隠し玉を出してくるなんて、面白かったわ!」

「あの…」

リリーフィルがちょっとだけ不満そうにしながら言う。

「お姉様、この方は…」

茉莉は貴族のように服の裾を持ってお辞儀をする。

「私は性を本間、名を茉莉と言いますの。」

リリーフィルもお辞儀をする。

「私はリリーフィル・アンクレスト・アルフェノーツよ。」

「アンクレストって事は分家の血筋かしら?」

「ええ、そうよ。分家と言えど貴族よ。言葉遣いには気をつける事ね。」

リリーフィルがそう言うと茉莉はニコニコと微笑んで言う。

「あら?アンクレストのお嬢さんは私が思ったより小さなお方なのかしら?」

リリーフィルが若干怒った様子で言う。

「はぁ?んなわけないでしょ!その辺の弱小貴族なんかと一緒にしないで!」

「あらあら…そう仰るわりには先程の様な小さな発言をなさるんですねぇ…とても参考になりますわ♪」

「アンタ…喧嘩売ってるでしょ?売られた喧嘩は買うわよ!」

リリーフィルがバチバチと音が聞こえそうな勢いで茉莉を睨みつける。

茉莉はニコニコと微笑んでいたが、雰囲気から察するにいつ戦いが起きてもおかしくない状況だった。

「あらあら…身の程知らずの小娘ごときが面白い事を仰いますのね?」

そこにリリアがやってくる。

「アリス!」

リリアはリリーフィルの状況を知って知らずか、ギュッと私に抱きつき、好きを全力でアピールしていた。

リリーフィルがそれを見て飛びかかりそうな勢いで言う。

「ちょっと!そこの平民!アリスお姉様に対して馴れ馴れし過ぎませんこと?」

茉莉は呆れた様子で言う。

「彼女もアリスのパーティの1人ですよ。余所者の貴方が手を出していい関係じゃないですわ。」

「はぁ?こんな平民とお姉様が?」

リリーフィルはリリアに対して散々な言い方をしていた。

「気にしない…」

リリアは興味無さそうにポツリと言う。

「気にしなさいよ!アンタは平民でしょう?」

リリーフィルがリリアを指さす。

「関係ない…リリアたちは冒険者…身分なんか無価値…実力が全て…」

リリアはめんどくさいと言いたげな表情をしながら、リリーフィルに言う。

「ぐぬぬ…そこまで言うなら、勝負よ!私の方が身分も実力も上だと言う事を叩き込んでやりますわ!」

リリーフィルは挑発されたと思いこんでリリアに勝負をしかける。

「とても…めんどう…」

リリアはそう言って私から離れて、拳を構える。

「リリア!そんなやつぶっ潰せー!」

茉莉がとても楽しそうにリリアを応援する。

リリーフィルとリリアが戦闘態勢に入ったところで試合開始だ。

「先手必勝ですわ!波強化ウェイヴアップ!そして、フレアウェイヴ!」

燃え盛る炎の波がリリアを焼き尽くそうと迫る。

「…せい!」

リリアが勢いよく拳を前に突き出すと衝撃波が発生し、その風圧でリリーフィルのフレアウェイヴを無力化する。

「…弱い。」

リリアが挑発する。

「ちょっと無効化出来た程度で調子に乗らないでくださる?」

リリーフィルが魔力を高める。

「…遅い。」

リリアが一瞬で近づいて構えていた左の拳をリリーフィルの腹に叩き込む。

リリアの重い一撃でリリーフィルの高めた魔力が分散する。

「かはっ…!?」

リリーフィルの身体から空気が抜ける。

「せい!」

リリアの続く右ストレートが同じ様にリリーフィルの腹を突き、棘鎧狼のローブの棘が腹の部分だけ砕け散る。

「ぐっ…なんて馬鹿力なの…お姉様からもらったローブを壊すなんて許せないわ!」

リリーフィルの口からは血が出ていた。

茉莉がとても愉快に笑いながら言う。

「いいぞ、リリアー!もっとやってやれー!」

私はリリアの力強さに驚いていた。

「あれ…リリアって、私より強くない?」

思わず私がそう言ってしまうほど、リリアの成長速度は凄まじかった。

「リリア…強い…アリスを守る…そう誓ったから…」

リリアは覇気を発する。

「全力でおいで…」

リリーフィルは怒り爆発と言う表情で言う。

「なら、お望みどおり、全力で殺してあげる!」

リリーフィルは怒りに任せて巨大な魔法陣を4つ同時に出現させる。

「四属性極大魔法…」

私は止めようと走り出そうとするが、超高濃度のリリーフィルの魔力が邪魔して身体が言うことをきかない。

「エーテルバースト!」

土、火、水、風の四属性が混じりあった極太のレーザーがリリアに直撃する。

「アッハハハハ!平民ごときがお姉様のものを破壊するからよ!ざまぁないわね!」

土煙が上がって何も見えない中、姿の見えないリリアに対して勝ち誇った様にリリーフィルが高らかに言う。

「リリア…どうして…」

私はポツリと言う。
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