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三食仕事友人付きは贅沢!
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ご指摘をいただいたので、一部変更してます。
※※※
ある日王宮からの使者が公爵家にやってきた。
15歳~20歳までの年頃の令嬢を王宮に召し、王太子の御目通りと称したお見合いを兼ねた夜会をするらしい。
クリスティナは名目上公爵令嬢であるため、この招集に応じないわけにはいかない。
ここで焦ったのは継母のミザリーである。
ドレスの一着も設えてないのだから当然である。
いつも着ている使用人服などで王都に行こうものなら、夫にどれだけ叱責されるか分かったものではない。
招集も王命であるため王に殉ずる貴族が逆らえるはずもなく、早急に仕立て屋を呼びクリスティナのドレスが仕立てられた。
実はこのとき、継母の虐待を屋敷の使用人が見るに見かねて王都にいる公爵に報告をあげていた。
愛娘の危機に公爵は驚愕し、すぐさま助けに向かうため宰相閣下に仕事の調整のため相談に行ったところ、詳細を知った宰相閣下が出した提案が今回の夜会である。
もともと数ヶ月前からこの夜会の企画自体はあったのである。
仕事が多忙で救出に向かうための日程を捻出するのが困難な公爵をなんとかするより、娘を王都に呼び寄せることで救出するほうが現実的だと宰相は考えたのだ。
※※※
「いい?ティナ、これはチャンスだわ!」
「え?」
王都へと向かう馬車の中、同僚…もとい私付きの侍女のアンナは力説を始めた。
「公爵令嬢の貴女が下働以下のこんな酷い生活を送る必要はもうないのよ!公爵様に事情を説明して、王都で保護していただしましょう!」
「……なぜ?」
鞭でぶたれるのはいただけないが、それ以外は労働に汗を流し美味しい食事を提供される六畳一間(物置)の快適生活を送れる環境なのだ。
なんの不満があるだろうか?
「ティナは幸福の基準値が低すぎるのよ!!本来貴女はもっと大切にされて裕福な暮らしを送れる人なのに!!」
貴族の暮らしはそんなにいいものだろうか?
正直ご令嬢生活とはとんと無縁なまま過ごしてきてしまった。
父は母を失ってからお酒に溺れるようになり、屋敷はどんどん荒れていった。
私が産まれてすぐに母が亡くなったため荒れた家を使用人達が必死に守ってくれていたのだが、必然的に私の優先順位は下になり、物心つく頃には一通り身辺自立できていた。
私にまで手が回らなかったのである。
私が9歳になる頃、何年も荒れた公爵家を憂いて国王自ら働きかけ、父が持ち直し再婚するもすぐに性格の不一致で別居状態に陥ることになる。
本来なら10歳頃から令嬢としての淑女教育を受けるものなのだが、後継者が産まれると同時に父は逃げ出すように王都に行ってしまったため、後妻のミザリー様によって使用人生活を強いられるようになり、普通の令嬢が学ぶ淑女教育を受けられなかったのである。
今更普通のご令嬢のようには生活できないよ。
義母のように人に命令し、人に尽くされ、身の回りの(着替えに至るまで)全て人にやってもらうのは、正直私には恐縮の極みだ。
メイドはその仕事を成すことで給金が貰えるのだからメイドの仕事を否定する気はないが、私は仕えられるより仕える側にいたい。
令嬢とは肩が凝りそうな職業の代名詞だ。
なので夜会が終わればさっさと田舎にまた引っ込むつもりなのである。
痩せギスなので当然ながら男性大好きオパーイも残念Aカップである。
見初められる可能性など皆無だろう。
相手にだって選ぶ権利がある。
「私は親友の貴女と離れるつもりはないわ。夜会が終わったら一緒に領地へ帰りましょうね。」
「私だってティナと離れるなんて嫌よ!でもこれ以上貴女が虐げられるのは我慢ならないの!!」
「ありがとう、アンナ。貴女は本当に優しいのね。」
「旦那様がお許しくださるなら、王都で貴女の側仕えにしてもらってずっと側にいるわ!だからせめて王都で旦那様に現状を話して保護してもらいましょう?」
これまでにアンナには散々説得されている。
この優しい侍女は私が何度構うなと言っても聞かず、鞭で打たれてできた傷の手当てを何度もしてくれたのだ。
三食仕事付き、親友と共に過ごす毎日にいったい何の不満があるだろうか。
私は充分幸せなのだ。
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ある日王宮からの使者が公爵家にやってきた。
15歳~20歳までの年頃の令嬢を王宮に召し、王太子の御目通りと称したお見合いを兼ねた夜会をするらしい。
クリスティナは名目上公爵令嬢であるため、この招集に応じないわけにはいかない。
ここで焦ったのは継母のミザリーである。
ドレスの一着も設えてないのだから当然である。
いつも着ている使用人服などで王都に行こうものなら、夫にどれだけ叱責されるか分かったものではない。
招集も王命であるため王に殉ずる貴族が逆らえるはずもなく、早急に仕立て屋を呼びクリスティナのドレスが仕立てられた。
実はこのとき、継母の虐待を屋敷の使用人が見るに見かねて王都にいる公爵に報告をあげていた。
愛娘の危機に公爵は驚愕し、すぐさま助けに向かうため宰相閣下に仕事の調整のため相談に行ったところ、詳細を知った宰相閣下が出した提案が今回の夜会である。
もともと数ヶ月前からこの夜会の企画自体はあったのである。
仕事が多忙で救出に向かうための日程を捻出するのが困難な公爵をなんとかするより、娘を王都に呼び寄せることで救出するほうが現実的だと宰相は考えたのだ。
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「いい?ティナ、これはチャンスだわ!」
「え?」
王都へと向かう馬車の中、同僚…もとい私付きの侍女のアンナは力説を始めた。
「公爵令嬢の貴女が下働以下のこんな酷い生活を送る必要はもうないのよ!公爵様に事情を説明して、王都で保護していただしましょう!」
「……なぜ?」
鞭でぶたれるのはいただけないが、それ以外は労働に汗を流し美味しい食事を提供される六畳一間(物置)の快適生活を送れる環境なのだ。
なんの不満があるだろうか?
「ティナは幸福の基準値が低すぎるのよ!!本来貴女はもっと大切にされて裕福な暮らしを送れる人なのに!!」
貴族の暮らしはそんなにいいものだろうか?
正直ご令嬢生活とはとんと無縁なまま過ごしてきてしまった。
父は母を失ってからお酒に溺れるようになり、屋敷はどんどん荒れていった。
私が産まれてすぐに母が亡くなったため荒れた家を使用人達が必死に守ってくれていたのだが、必然的に私の優先順位は下になり、物心つく頃には一通り身辺自立できていた。
私にまで手が回らなかったのである。
私が9歳になる頃、何年も荒れた公爵家を憂いて国王自ら働きかけ、父が持ち直し再婚するもすぐに性格の不一致で別居状態に陥ることになる。
本来なら10歳頃から令嬢としての淑女教育を受けるものなのだが、後継者が産まれると同時に父は逃げ出すように王都に行ってしまったため、後妻のミザリー様によって使用人生活を強いられるようになり、普通の令嬢が学ぶ淑女教育を受けられなかったのである。
今更普通のご令嬢のようには生活できないよ。
義母のように人に命令し、人に尽くされ、身の回りの(着替えに至るまで)全て人にやってもらうのは、正直私には恐縮の極みだ。
メイドはその仕事を成すことで給金が貰えるのだからメイドの仕事を否定する気はないが、私は仕えられるより仕える側にいたい。
令嬢とは肩が凝りそうな職業の代名詞だ。
なので夜会が終わればさっさと田舎にまた引っ込むつもりなのである。
痩せギスなので当然ながら男性大好きオパーイも残念Aカップである。
見初められる可能性など皆無だろう。
相手にだって選ぶ権利がある。
「私は親友の貴女と離れるつもりはないわ。夜会が終わったら一緒に領地へ帰りましょうね。」
「私だってティナと離れるなんて嫌よ!でもこれ以上貴女が虐げられるのは我慢ならないの!!」
「ありがとう、アンナ。貴女は本当に優しいのね。」
「旦那様がお許しくださるなら、王都で貴女の側仕えにしてもらってずっと側にいるわ!だからせめて王都で旦那様に現状を話して保護してもらいましょう?」
これまでにアンナには散々説得されている。
この優しい侍女は私が何度構うなと言っても聞かず、鞭で打たれてできた傷の手当てを何度もしてくれたのだ。
三食仕事付き、親友と共に過ごす毎日にいったい何の不満があるだろうか。
私は充分幸せなのだ。
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