薄幸の令嬢は幸福基準値が低すぎる

ツッコミ侍女とクリスティナ

あの日ジーク様に諭されて、私は大いに反省した。
私はもっと自分を幸せにするための努力をしようと決めた。
淑女教育も遅すぎるなどと言い訳せずに、頑張ってみようと思う。
「ティナ、一体どういった風の吹きまわし？
自分がご令嬢生活だなんて豚に真珠と言っていた貴女が……。
いえ、ちゃんとしたご令嬢を目指すのは大変結構なことなんだけど…。」
「私が使用人生活をしていることは、公爵家の娘として責任を放棄していることだと気付いたの。
今まではミザリー様を言い訳に使用人生活を満喫してきてしまったけど、私、頑張ってみようと思うの。
そうしたら真珠が似合うとまではいかないけど、可愛い子豚くらいにはなれると思うの。」
「満喫してたんかい。
そして豚に真珠はそういう意味じゃないと思うわ。」
「手始めにフカフカのパンと野菜クズのスープをグレードアップしてもらって、パンにはクルミを、スープにはお肉を入れてもらおうと思うの！」
「まだパン&スープ生活だったんかい。
そして努力の方向性、間違っているから。」
「淑女らしく会話術が上達する壺を町で勧められたのだけど、お父様に貰ったお小遣いで買うのはどうかしら？」
「騙されてるから、それ、詐欺だから！
その前にお小遣いって何？子供か！」

「あの……。」
「あら、お父様、お帰りなさいませ。
どうかされましたか？」
「お帰りなさいませ、旦那様。」
「………。」

クリスティナとアンナの日常会話はこんなモノだが、周囲が聞いたらボケとツッコミにしか聞こえないのはご愛嬌だ。