屋敷で追い出されたので仕方なく逃げたけれど、伯爵で拾われたので幸せでした。

朝日みらい

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(2)元令嬢、働かされる

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「ここに住むなら、何か手伝っていただけますよね?」  
セドリックは控えめな笑顔を浮かべて、リリアナに申し出た。  

「……えっ?」
リリアナはスプーンを持ったまま固まった。
「私、働いたことなんて一度もないわよ?」  

「大丈夫です。」
セドリックは朗らかに答えた。
「誰でも最初は初心者ですから。ほら、今日はまず花壇の水やりから。」  

「水やり?」
リリアナは眉をひそめた。
「そんなの召使いの仕事でしょ?私は元令嬢なのよ?」  

「うちには召使いがいませんからね。」
セドリックは軽い調子で答えた。
「令嬢でも元令嬢でも、ここではみんな平等です。」  

「平等……!」
リリアナはショックで椅子から立ち上がったが、結局、空腹には勝てず、渋々了承することになった。

---


次の日、リリアナは日傘をさして花壇に向かった。セドリックが用意した水差しを持っていたが、明らかにやる気はゼロ。  

「これ、本当にやらなきゃダメなの?」  

「もちろんです。」
セドリックはにっこりと微笑み、手本を見せながら言った。
「優しく丁寧にね。花も生き物ですから、思いやりが大事なんです。」  

「花に思いやり?」
リリアナは呆れたように呟いた。
「これだから田舎の伯爵は……」  

それでも、彼の指示通りに水をやり始めると、意外なことにリリアナは少し楽しい気分になってきた。  

「……こうやって、私も昔は母と庭で過ごしたことがあったな。」  

そのつぶやきを聞いたセドリックは、優しく言った。  
「思い出を大切にするのは良いことです。でも、今は今で楽しいことを見つけましょう。」  

リリアナは驚いて彼を見つめた。普段は地味で冴えないと思っていたセドリックの言葉が、なぜか心に響いたのだ。

---


「仕事をしたご褒美に、今日は町を案内します。」  
セドリックはそう言って、リリアナを近くの町へ連れて行った。  

町に着くと、セドリックはどこからかリンゴを手に入れてきて、リリアナに渡した。  

「え、買ったの?」  

「いいえ、交換です。」
セドリックは得意げに答えた。
「余った野菜を渡したら、リンゴをもらいました。」  

「……なんか、貧乏くさいわね。」  

「貧乏でも知恵を使えば楽しく暮らせますよ。」
セドリックは笑った。  

リリアナは呆れつつも、かじったリンゴが思ったより甘かったことに少し驚いた。

---

町を歩いているうちに、リリアナはセドリックの領民たちからの人気ぶりに驚かされた。  

「あら、伯爵様。いつもありがとうございます!」  

「伯爵様のおかげで、今年も豊作です!」  

「伯爵様、また手伝いに来てくださいね!」  

「……どういうこと?」
リリアナはぽつりと呟いた。
「あの地味な伯爵がこんなに慕われてるなんて……」  

セドリックは照れたように笑いながら答えた。  
「僕は特別なことは何もしていません。ただ、領民の暮らしを少しでも楽にしたいと思っているだけです。」  

リリアナはその言葉に少し感心したような顔をした。  

「あなたって、見た目は冴えないけど、案外いいところもあるのね。」  

「ありがとうございます。それ、褒めてますか?」  

「さあ、どうかしら?」
リリアナは悪戯っぽく微笑んだ。

---

その日の夜、二人は屋敷の庭で星空を眺めていた。リリアナは久しぶりに静かな時間を楽しんでいたが、ふとセドリックに尋ねた。  

「ねえ、どうして私なんかを助けたの?」  

セドリックは少し考えてから答えた。  
「最初に君を見た時、何か困っているんだろうと思いました。それに……放っておけない気がしたんです。」  

「放っておけない?」  

「そうです。」
セドリックは穏やかな声で続けた。
「君は、ただ助けを求めるのが下手なだけのように見えましたから。」  

リリアナは驚いて彼を見つめた。自分のことをそんな風に言われたのは初めてだった。  

「……変な人ね。」  

「そうかもしれませんね。」
セドリックは微笑んだ。
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