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気を取り直して、私も会話に参加する。真琴も奈々美ちゃんも、すっかり睦月さんに懐いてしまったようで、色々と話を聞きたがったが、睦月さんは嫌な顔一つせず、笑顔でそれに答えていた。
「良いなぁ東京!住んでみたーい!」
しばらくすると、ほろ酔いの奈々美ちゃんはそんな声を上げる。隣ではそこそこ飲んでいるのに全く変わらない真琴が、「そうかぁ?遊びに行くだけで充分だけど。俺は地元を愛してるからな!」なんて調子のいい事を返している。
「私だって好きだよ。いいところだと思ってるよ!でも田舎者だからこそ東京に憧れるの!咲月ちゃんだってそうでしょ?」
頰を膨らませてそう言う奈々美ちゃんに、「私は……単にやりたい事が都会でしか出来ないと思ったからなんだけど」と答えた。
最初は漠然としていた自分の将来の夢。学校では友達の髪を触らせてもらっては編んだりアレンジしたりして遊んでいた。
最初は美容師になる事も考えたが、それよりもっと総合的に綺麗にする事ができるメイクの仕事を選んだ。
美容師なら田舎でも仕事はあるだろうけど、メイクに絞ると難しい。だから私は都会で頑張ってみようと思ったのだ。
「そうなんだね。さっちゃんがそう思わなかったら、今こうやって一緒に仕事する事も無かったってことかぁ……」
日本酒の入った御猪口を口に運びながら、睦月さんはしみじみと口にする。
「確かに。こっちに来なかったら香緒ちゃんとも出会えてなかったです」
グラスに入ったロックの梅酒をちびちびと口に含みながら、私はそう答える。
田舎にいるだけじゃ出会えなかったような沢山の人達。でも、都会に来たから出会えたわけじゃない。こんなに沢山の星の数程いる人の中で、出会えたのは奇跡でしかない。
香緒ちゃんと、希海さんに出会えたから今の私がある。そして、その2人だったからこそ、こうやって睦月さんと出会う事が出来たのだ。
「さっちゃんを見つけてくれた香緒に感謝、かな?」
少し赤みをさした顔を睦月さんは私に向ける。私も同じタイミングで睦月さんの方を向いたから、視線が合うとニコッと笑ってくれた。
そんなだから、恋愛音痴の私が勘違いしちゃうんだよ……。
お酒で顔は赤くならないのに、睦月さんの所為で赤くなりそうで、慌てて私は前を向き直すとグラスを口に運んだ。
「……睦月さんって、彼女いないんですか?」
唐突に、向かいから真琴がそんな事を言い出す。すでに2人は一つのお酒を酌み交わし、意気投合しているようだった。
それを聞いた睦月さんは、少し驚いたように目を開いてから、すぐに表情を和らげる。
「残念ながらいないんだよね。いいなぁって思ってる子はいるけどね?」
ウインクでもしそうな勢いで睦月さんはそう言うと、真琴はそれに笑って返す。
「相手が相手だと大変ですよね」
まるで知ったような口を聞く真琴に、いつの間にそんな話になったんだろうと私は不思議に思う。
「睦月さん!彼女になったら……じゃなかった、出来たら教えてくださいね!」
私の向かいからも、身を乗り出すように奈々美ちゃんは勢いよく声を上げた。
そんな話、私は聞きたくない。睦月さんの気になっている人や、その人とお付き合いする話なんて。
私は、そんな3人の会話をシャットアウトするように、解けかけの氷の入ったグラスをぼんやりと眺めていた。
「咲月は彼氏なんて、もちろんいないんだろ?」
一人蚊帳の外にいた私に、真琴はいきなり尋ねる。
「えっ?何で私?聞かなくても分かるでしょ!」
弟にそう言われ、つい可愛げなく返す。
「怒るなよ」
「怒ってない!」
小さな頃から一緒にいた姉弟なんだから、真琴は私の事なんてお見通しだろう。図星を突かれて私はつい声を荒げてしまう。
「別にダメなんて言ってないだろ?だってお前……」
呆れたように真琴が言った時、背中越しにおじさんの大きな声が響いてきた。
「おぉ!お前も来たのか!おーい!奈々美!」
こちらに向かって大声を出すおじさんに、奈々美ちゃんは何事かと立ち上がると「あっ!」と驚いたように声を上げた。
隣で同じように向こうの様子を伺った真琴も「えっ!」と声を出すと、その後の2人の声が重なった。
「「健太くん!」」
それに応えるように、背後から声がした。
「おー!奈々美に真琴か?久しぶりだなぁ!」
昔より少し低くなったその声。
嘘でしょ……。こんなところに何でいるの?
私はそう思いながら身を固くする。私の記憶を刺激する、聞きたくもなかったその声。
その人はこちらにやってくると、相変わらずの明るい口調で2人に話しかけた。
「こっちに遊びに来てんの?」
「そうそう。健太君は?その格好、もしかして仕事?」
「そうだよ!クリスマスなのに虚しいだろ?」
何て笑い合っている。その声を頭上で聞きながら、私は顔をあげる事が出来なかった。顔を合わせたく無いから。
「あれ?睦月さん?何で?知り合いだったの?」
「健太君こそ!」
驚いたような健太の声と、同じように驚いている睦月さんの声。
それに、俯いたままの私も同じように驚く。
何で……睦月さんと知り合いなの?
と。
「良いなぁ東京!住んでみたーい!」
しばらくすると、ほろ酔いの奈々美ちゃんはそんな声を上げる。隣ではそこそこ飲んでいるのに全く変わらない真琴が、「そうかぁ?遊びに行くだけで充分だけど。俺は地元を愛してるからな!」なんて調子のいい事を返している。
「私だって好きだよ。いいところだと思ってるよ!でも田舎者だからこそ東京に憧れるの!咲月ちゃんだってそうでしょ?」
頰を膨らませてそう言う奈々美ちゃんに、「私は……単にやりたい事が都会でしか出来ないと思ったからなんだけど」と答えた。
最初は漠然としていた自分の将来の夢。学校では友達の髪を触らせてもらっては編んだりアレンジしたりして遊んでいた。
最初は美容師になる事も考えたが、それよりもっと総合的に綺麗にする事ができるメイクの仕事を選んだ。
美容師なら田舎でも仕事はあるだろうけど、メイクに絞ると難しい。だから私は都会で頑張ってみようと思ったのだ。
「そうなんだね。さっちゃんがそう思わなかったら、今こうやって一緒に仕事する事も無かったってことかぁ……」
日本酒の入った御猪口を口に運びながら、睦月さんはしみじみと口にする。
「確かに。こっちに来なかったら香緒ちゃんとも出会えてなかったです」
グラスに入ったロックの梅酒をちびちびと口に含みながら、私はそう答える。
田舎にいるだけじゃ出会えなかったような沢山の人達。でも、都会に来たから出会えたわけじゃない。こんなに沢山の星の数程いる人の中で、出会えたのは奇跡でしかない。
香緒ちゃんと、希海さんに出会えたから今の私がある。そして、その2人だったからこそ、こうやって睦月さんと出会う事が出来たのだ。
「さっちゃんを見つけてくれた香緒に感謝、かな?」
少し赤みをさした顔を睦月さんは私に向ける。私も同じタイミングで睦月さんの方を向いたから、視線が合うとニコッと笑ってくれた。
そんなだから、恋愛音痴の私が勘違いしちゃうんだよ……。
お酒で顔は赤くならないのに、睦月さんの所為で赤くなりそうで、慌てて私は前を向き直すとグラスを口に運んだ。
「……睦月さんって、彼女いないんですか?」
唐突に、向かいから真琴がそんな事を言い出す。すでに2人は一つのお酒を酌み交わし、意気投合しているようだった。
それを聞いた睦月さんは、少し驚いたように目を開いてから、すぐに表情を和らげる。
「残念ながらいないんだよね。いいなぁって思ってる子はいるけどね?」
ウインクでもしそうな勢いで睦月さんはそう言うと、真琴はそれに笑って返す。
「相手が相手だと大変ですよね」
まるで知ったような口を聞く真琴に、いつの間にそんな話になったんだろうと私は不思議に思う。
「睦月さん!彼女になったら……じゃなかった、出来たら教えてくださいね!」
私の向かいからも、身を乗り出すように奈々美ちゃんは勢いよく声を上げた。
そんな話、私は聞きたくない。睦月さんの気になっている人や、その人とお付き合いする話なんて。
私は、そんな3人の会話をシャットアウトするように、解けかけの氷の入ったグラスをぼんやりと眺めていた。
「咲月は彼氏なんて、もちろんいないんだろ?」
一人蚊帳の外にいた私に、真琴はいきなり尋ねる。
「えっ?何で私?聞かなくても分かるでしょ!」
弟にそう言われ、つい可愛げなく返す。
「怒るなよ」
「怒ってない!」
小さな頃から一緒にいた姉弟なんだから、真琴は私の事なんてお見通しだろう。図星を突かれて私はつい声を荒げてしまう。
「別にダメなんて言ってないだろ?だってお前……」
呆れたように真琴が言った時、背中越しにおじさんの大きな声が響いてきた。
「おぉ!お前も来たのか!おーい!奈々美!」
こちらに向かって大声を出すおじさんに、奈々美ちゃんは何事かと立ち上がると「あっ!」と驚いたように声を上げた。
隣で同じように向こうの様子を伺った真琴も「えっ!」と声を出すと、その後の2人の声が重なった。
「「健太くん!」」
それに応えるように、背後から声がした。
「おー!奈々美に真琴か?久しぶりだなぁ!」
昔より少し低くなったその声。
嘘でしょ……。こんなところに何でいるの?
私はそう思いながら身を固くする。私の記憶を刺激する、聞きたくもなかったその声。
その人はこちらにやってくると、相変わらずの明るい口調で2人に話しかけた。
「こっちに遊びに来てんの?」
「そうそう。健太君は?その格好、もしかして仕事?」
「そうだよ!クリスマスなのに虚しいだろ?」
何て笑い合っている。その声を頭上で聞きながら、私は顔をあげる事が出来なかった。顔を合わせたく無いから。
「あれ?睦月さん?何で?知り合いだったの?」
「健太君こそ!」
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何で……睦月さんと知り合いなの?
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