年上カメラマンと訳あり彼女の蜜月までー月の名前ー

玖羽 望月

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「そういえば、さっちゃん。式に呼びたい人ってどのくらいいる?」

実家から帰った次の日。
2人とも目が覚めたのは昼前だった。まぁ……結局遅くまで寝かせてもらえなかったっていうのもあるんだけど。

睦月さんが淹れてくれた濃いめのミルクティーだけ飲んで、そこから2人で買い物ついでにかんちゃんの散歩に出かけた。そして今はテイクアウトしてきたお弁当を頬張りながら、テーブルに置いたタブレットを眺めているところだ。画面には華やかな結婚式場が映し出されていて、どこに見学に行こうかと話をしていた。

で、不意に睦月さんにそう尋ねられたのだ。

「えーと。両親に真琴、あと祖父母でしょ?あとは香緒ちゃんと希海さんと武琉君。響君は難しいかなぁ。できたら明日香ちゃんと健太にもきて欲しい。……それくらい。睦月さんは?」

指を折りながら数えてみたけど、全員来てくれてもたったの11人だ。元々友達は少ないと自覚はしているし、知人は多くても式に呼ぶほど親しいかといえばそうじゃない。

「俺も、父さんと朔の家族。さっちゃんと被ってるからあとは司と瑤子ちゃんかな。……ニューヨークの友人はさすがに気軽に呼べないしねぇ」

睦月さんは残念そうにそう言ってからまた続けた。

「全部で20人くらいだね。正直、俺披露宴って苦手と言うか……。朔の式ってさ、職場結婚だったから親族友人の他に上司同僚後輩って結構な規模だったんだよね。余興とかスピーチとか大変そうだったし、本人達は高砂の上でゲストとあんまり話も出来なかったって聞いて。もちろんさっちゃんがそういう披露宴やりたいならそうするよ?」

結婚式に呼ばれたことなどまだあまりないけど、私もゲストとして参加するのはいいけど、自分が主役としてあの場所にいるのを想像するだけで顔が引き攣ってしまう。

「ううん?私も苦手かも。ゲストが少ないんだったら、もっとアットホームな感じがいいな。香緒ちゃんの結婚式みたいな」

約半年前にあった香緒ちゃんの結婚式。もちろん参列したのはごく少数。本人達を除けば10人だ。写真を撮るだけと伝えられていた2人に、サプライズで式とパーティが行われたのだけど、本当に素敵な式だった。私もできるならあんな式とパーティにしたいと思ってしまう。

「だよねぇ。結局、本当に身内みたいな人しかいないしね。そんな場所探してみよっか」

睦月さんはそう言うとタブレットを操作している。

「うん。そうしよう?」

すんなりと話はまとまり、私たちはタブレットとにらめっこしつつ、いくつかフェアの予約を入れたのだった。

連休の間、2人で探した式場を1日1箇所見学した。でも、見てまわるたび悩む一方だった。元々結婚できるなんて思ってもなかったから、今まで自分の結婚式を想像したことなんてなくて、どこも素敵だな、と思うぶん決め手に欠けていた。

そして、今日で5箇所目。一応これが最後。と言っても今まで見た中で決めなきゃいけないわけじゃないし、睦月さんも「まぁ、気楽に見に行こうよ」と少し焦り気味の私を落ち着かせるようにそう言った。


「岡田さん。お越し下さりありがとうございます」

最後の最後に訪れたのは、睦月さんが撮影した式場だった。到着して受付を済ませると、撮影時に担当くれたと言う女性が挨拶しに来てくれた。

「こちらこそ、撮影の時はお世話になりました。今日はよろしくお願いします」

そう言って会釈をする睦月さんに、その人は明るい笑顔を見せる。

「今回のパンフレット、社内でも評判がとてもいいんです。来シーズンも是非お願いしようと話が上がってるんですよ」
「そうですか。そう言っていただけてホッとしました。あまり手がけたことのない仕事だったので」

睦月さんは仕事モードの顔つきになると柔かにそう返していた。

「ではご案内いたしますね」

その女性はそう言って微笑む。会場内の様子を見ると、他の人達は数組に1人案内が付いているようだけど、式場のかたが気を利かせてくれたのか私達だけの案内みたいだ。

チャペルを見せてもらったあと、睦月さんは担当さんに声をかける。

「中じゃなく、外を先に見せてもらえないですか?」

それに快く応じてくれた担当さんは、私達を外の庭に連れてきてくれた。

「こちらは50人まで対応のガーデンになっております」

明るい午後の日差しが降り注ぐお庭。私が思わず「凄い。素敵」と呟くと、担当さんの耳に届いたのか「ありがとうございます」と返してくれた。

他の式場でも、庭は全部見せてもらっている。最初は何も思っていなかったけど、次も、その次もガーデンウエディングができるところだったから、睦月さんは狙って予約を取ってくれたんだなって思っていた。

そして今目の前にある庭が、一番自分のイメージに近いかもしれない。広すぎず狭すぎず、造られたというより自然を生かしている。なにより、庭には大きなシンボルツリーがあって、そこからの木漏れ日と、葉が風に揺れる音が心地良かった。

「さっちゃん。気にいった?」
「うん。凄く!」

私が弾むようにそう答えると、睦月さんはニコリと笑いこう言った。

「実は、もう一つアピールしたいポイントがあるんだよね」
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