EVANESCENCE ~秘蜜~ 【R18】

緋羅

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眠気まなこに瑠花がブルブルと震えるスマホを手にした

「う~ん…メール?

…電話!?…だ…れ、朝から

!!…蓮っ!?」

慌てて通話ボタンを押す

「っ…おはよ、蓮」

『おはよう瑠花。…今日会える?』

「今日、大丈夫だよ」

『良かったぁ。…なかなか出ないから、無理かと思ったよ』

「えっ!?…そんなことないよ」

(昨日なかなか眠れなくて…寝坊したなんて恥ずかしくて言えないよ、、、)

『じゃあ、1時間後に駅で待ち合わせね。いいかな?』

「1時間後に駅ね。OK」

電話を切ると瑠花はベッドから飛び降り、クローゼットを開けた

「……準備しないと!」










ーーーーーー

「ごめんなさい、待ったよね?」

息を切らして走り寄り、改札前で待つ蓮の元に瑠花が立つ

「走らなくても大丈夫だったのに」

瑠花の額の汗に蓮がハンカチを押し当てる

「……あっ、ありがと蓮」

「じゃあ行こうか」

「うん」

先へ歩き出す蓮を見つめながら、昨日の花火の帰りを思い出し、瑠花は足元へ視線を落とす


(昨日は…どうして……)


夏祭りの帰り、駅から蓮のマンションに到着すると、部屋では無くて駐車場へ行き、バイクで家へと連れて来られたのだ


(迷惑だったの?…かな)






ーーーーーー

電車に乗り、到着した駅からしばらく歩くと、蓮の目的に場所に着いたようだ

「ココ…水族館?」

「水族館、嫌いだった?瑠花」

「えっ?そんな事ないよ」

「なら良かった…行こう」

優しく微笑む蓮に手を繋がれ、歩き出す

「うん」

館内に入ると、平日のせいか、人はまばらだった

「海岸は混んでたけど、水族館は比較的空いてるね」

「やっぱり夏は海だもんね」

「…蓮?…久しぶりじゃな~い」

突然、蓮に抱き付く女性

「もう、元気にしてた?」

ふんわり栗毛のロングヘアーの綺麗な女性(ひと)が蓮に話し掛ける

「ちょっと…」

「あれ?…この可愛い子…蓮の?」

蓮に抱き付きながら、瑠花に気付き声をかける

「もう、離れろって!」

「お邪魔って事?も~う…

あ!こんな事してる場合じゃなかった!
急がないと!

…っと、もう少ししたらイルカショーあるから見に来てね♪」

瑠花にウィンクして去っていく

「…あの……」

「ゴメン…姉貴だから」

「えっ?お姉さん?」

「相変わらずテンション高くて、落ち着きがなくて、姉貴って感じじゃないだろっ」

「…そんな事ないよ
やっぱり姉弟(きょうだい)だからかなぁ綺麗な顔してるね」

「そうか?

それより、イルカショーはまだ始まらないから館内廻ろっか」

瑠花の手を握り、指先を絡める

「うん」

大小様々な水槽が並ぶ

エリア毎に色々な魚達が泳いでいる

日本、海外と、見た事のない魚がたくさん展示されている

動く歩道でゆったり先に進んでいく

途中、トンネルが海の中を歩いている見たいな感覚に陥る

「綺麗…」

先には、高いガラスが壁一面にそびえ立ち、海の底にいるかの様だった

「うわぁ~凄~い…」

たくさん魚達が所狭しと泳いでいる

「蓮、見て…」

水槽の近くで並んで魚を見続ける

「なんか飽きないねぇ」

「そうだなっ」

「ずっとこうしていてもいいくらい」

「……瑠花」

蓮が言葉を続けようとした時、グルッグルっと大きなお腹虫が鳴る

「……」

大きな声で肩を揺らし、蓮が笑い出す


「そんなに笑わなくても…」

「いや、可愛いなぁって…

じゃあ…お昼にしようかっ」


「まだ笑ってる~」

「ゴメンゴメン…
食べたいものある?」

レストランへ向かって歩いていく







ーーーーーー

「イルカショー凄いんだね
初めてだからビックリしちゃった~」

「この水族館のメインだからなぁ」

「それにお姉さんも凄かったよ」

「ホント?ありがと」

「…オイっ!なんで居るんだよ~」

「細かいことは気にしないの、それより、女の子を紹介しに来るなんて滅多にない事だもの、来ちゃった♪」

「紹介に来たわけじゃ…」

「照れないのっ、蓮
それより名前、何ちゃん?」

「あっ、初めまして、黒川瑠花と言います」

「瑠花ちゃん、可愛い名前

蓮を宜しくね」

「…お姉さん」

「や~ぁ~、おねえさんだって
もう~蓮」

「痛っ!…ったくバカ力」

蓮の背中をバシバシ叩く

「じゃあ瑠花ちゃん楽しんでいってね。
蓮は、またにじゃなくて…前みたいに来てよね」

「それを言うなら姉貴の方こそ家に帰って来たらいいだろ?」

「フ、フッ…そうね。

じゃあ、瑠花ちゃんが遊びに来てくれるなら、私も家に行くわよ。
またね♪」

瑠花をハグすると嬉しいそうに仕事に戻っていた

「お姉さん行っちゃいましたね」

「自由人でゴメン」

「そんなぁ、楽しかったよ」

「疲れたろ、カフェにでも行こっ瑠花」

「蓮…」

「ほら行くよ」

蓮が右手を差し出す





ーーーーーー

カフェでゆったりと寛いでいると

「折角だし、海岸歩いて帰ろっか」

カフェから覗く海を見つめている瑠花に話し掛ける

「いいの?」

「だって、さっきから海ばっかりみてるから」

「…そうだった?」

(まともに蓮を見れないから海を見てたってのもあるんだけどね…)

「今の時期は海水浴とかプールの方が良かったかな?」

「そんな事ないよ。日焼けとか気になるし…」

「そっか」

「海見に行こうよ」



2人は席を立ち、会計を済まして、海岸へ向かう



近くにつれ波の音が聞こえてくる



昼間の賑わっていた海岸も、太陽が傾きかけてきた今は静かで、波の打ち寄せる音が大きく響いている


帰る人と逆流する様に、2人は砂浜へと足を踏み入れる



「わぁ~海~」

「靴だと砂入るね」

「靴脱いで波打ち際まで行ってくるね…蓮は?」

「もちろん行くよ」



履いていた靴を脱ぎ捨てて、波打ち際まで駆けていく


「気持ちいいよ」

瑠花が海に足をつけ、振り返る

「蓮も早く」

大きく手を振って呼ぶ

「元気だな~」


「もう少しで太陽も沈みそうだね」

「陽が落ちる前に帰ろっか…涼しくなっるだろうし」

「夕焼け見てからがいいなぁ」

「じゃあ…後少しだけね」

「ありがと」



太陽の傾きと共に
青と赤が混ざり合う時間
ただ空を眺める

二人の時間が穏やかに過ぎていく

波の音が徐々に大きくなっていく

青が消え、赤く色付く空

しばらく言葉もなく見つめる







「綺麗…」



「今日ここに来れて良かった」




「…蓮」



「瑠花…話がある…」



空を眺めていた蓮が、ゆっくり瑠花を見つめる


「えっ?…話っ…」


瑠花が蓮を見つめる




「しばらく二人で会うのはヤメにしよう…」
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