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21話 昼食
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エンディングソングと共にスタッフロールが流れ、猫田さんは満足した様子で一つ息を吐く。
私も久々の映画に満足しながらスクリーンを眺めていると、スタッフロールが終わり、劇場内の明かりが点く。
暗い所に慣れてしまっていた目が少し痛みを訴えるのを無視して立ち上がり、足元に置いていた荷物を手に取る。
と、ジュースの入っていたカップを片手にした猫田さんが。
「どうだ、アクション映画は楽しめたか?」
「はい、楽しかったです」
「なら機会があったらまた来ようか」
「良いんですか? じゃあ、また来たいです」
高校や大学時代の友人たちとは疎遠になってしまって、映画を一緒に見る人なんて誰もいない。
そのこともあって、この提案は私が一番欲していた物と言っても過言では無い。
猫田さんは機嫌良さそうに「行くか」と言って他の客がいなくなった通路を歩き始め、私はその後に続く。
劇場を出るとロビーには来た時よりも人の姿があり、この時間に来ていなかったら席を取れなかったかもしれない事実に少し驚くと共に安心する。
すると前を歩いていた猫田さんがこちらを振り返って。
「腹減ったし飯食いに行かねえか? 確か下に中華店とかあったよな」
「そうですね、折角ですし食べて行きましょうか」
そう言えば映画を見る前にコーヒーを飲んだだけで、昼をとっくに過ぎた十三時だと言うのにまだ何も食べていない。
炭酸ジュースを飲んだからかそこまで腹は減っていないが、店に入ればきっと空腹に襲われる事だろう。
そんな事を考えながら猫田さんと共に下の階へ降りると、料理店が集結しているだけのことはあってそこの匂いは鼻腔を刺激される。
それによって液体しか入っていない私の胃袋は飯を寄越せと訴え始め、やはりこうなったかと内心苦笑する。
「何か食べたいのあるか?」
「うーん、さっき話してた中華で良いんじゃないですか?」
「お、気が合うな」
猫田さんはそう言って笑うと既にすぐ近くまで来ていた中華店に入った。
昼時を過ぎているのもあって人の数は少なく、さっきまで人混みの中を歩いていた私にとってここはとても静かに感じる。
店員に席まで案内してもらいながらぼんやりと考えていると、席に着いた猫田さんが笑って。
「今日の昼飯代は俺が出してやるよ。良い暇潰しを教えて貰ったからな」
「本当ですか? でも、前酒場で奢って貰ってますし……」
「気にすんな。これでも俺、それなりに金は持ってるからよ」
「そ、そうなんですか?」
私も大村で働いていた時の金が貯まっているおかげでかなりもっていたりするが、これは黙っておこう。
と、メニューを眺めていた猫田さんが何か思い出した様子で顔を上げて。
「そう言えばよ、深川さんのあやかし、何か分かったかもしれない」
「本当ですか?!」
「おう、俺は猫又だって話したと思うが、その俺が毎回怖がるってことは猫の天敵の動物と関係があると思うんだよ」
猫の天敵の動物と言えば、カラスや蛇、そして猛禽類だったか。
「そこで俺が思うに、お前は烏天狗なんじゃないかと考えたんだ」
「でも、苗字には天狗も烏も入ってませんよ?」
「烏天狗は一応、人に対して攻撃した歴史があるから先祖がそれを隠したくて苗字を変えた可能性があるんじゃないかと思う」
なるほど、そう考えてみれば私のタフさにも説明が付くような気がする。
何故だか少しもやもやするが、私の先祖は烏天狗なのかもしれない。
「まあ、まだ憶測に過ぎないけどな。もし何か思い当たるものがあったら教えるよ」
「ぜひ、お願いします」
軽く頭を下げると猫田さんは「任せとけ」とだけ言ってメニューを眺め。
そうして中華料理を楽しんだ私たちは、その後駅中の店を何件か巡り、休日を存分に楽しんだ。
私も久々の映画に満足しながらスクリーンを眺めていると、スタッフロールが終わり、劇場内の明かりが点く。
暗い所に慣れてしまっていた目が少し痛みを訴えるのを無視して立ち上がり、足元に置いていた荷物を手に取る。
と、ジュースの入っていたカップを片手にした猫田さんが。
「どうだ、アクション映画は楽しめたか?」
「はい、楽しかったです」
「なら機会があったらまた来ようか」
「良いんですか? じゃあ、また来たいです」
高校や大学時代の友人たちとは疎遠になってしまって、映画を一緒に見る人なんて誰もいない。
そのこともあって、この提案は私が一番欲していた物と言っても過言では無い。
猫田さんは機嫌良さそうに「行くか」と言って他の客がいなくなった通路を歩き始め、私はその後に続く。
劇場を出るとロビーには来た時よりも人の姿があり、この時間に来ていなかったら席を取れなかったかもしれない事実に少し驚くと共に安心する。
すると前を歩いていた猫田さんがこちらを振り返って。
「腹減ったし飯食いに行かねえか? 確か下に中華店とかあったよな」
「そうですね、折角ですし食べて行きましょうか」
そう言えば映画を見る前にコーヒーを飲んだだけで、昼をとっくに過ぎた十三時だと言うのにまだ何も食べていない。
炭酸ジュースを飲んだからかそこまで腹は減っていないが、店に入ればきっと空腹に襲われる事だろう。
そんな事を考えながら猫田さんと共に下の階へ降りると、料理店が集結しているだけのことはあってそこの匂いは鼻腔を刺激される。
それによって液体しか入っていない私の胃袋は飯を寄越せと訴え始め、やはりこうなったかと内心苦笑する。
「何か食べたいのあるか?」
「うーん、さっき話してた中華で良いんじゃないですか?」
「お、気が合うな」
猫田さんはそう言って笑うと既にすぐ近くまで来ていた中華店に入った。
昼時を過ぎているのもあって人の数は少なく、さっきまで人混みの中を歩いていた私にとってここはとても静かに感じる。
店員に席まで案内してもらいながらぼんやりと考えていると、席に着いた猫田さんが笑って。
「今日の昼飯代は俺が出してやるよ。良い暇潰しを教えて貰ったからな」
「本当ですか? でも、前酒場で奢って貰ってますし……」
「気にすんな。これでも俺、それなりに金は持ってるからよ」
「そ、そうなんですか?」
私も大村で働いていた時の金が貯まっているおかげでかなりもっていたりするが、これは黙っておこう。
と、メニューを眺めていた猫田さんが何か思い出した様子で顔を上げて。
「そう言えばよ、深川さんのあやかし、何か分かったかもしれない」
「本当ですか?!」
「おう、俺は猫又だって話したと思うが、その俺が毎回怖がるってことは猫の天敵の動物と関係があると思うんだよ」
猫の天敵の動物と言えば、カラスや蛇、そして猛禽類だったか。
「そこで俺が思うに、お前は烏天狗なんじゃないかと考えたんだ」
「でも、苗字には天狗も烏も入ってませんよ?」
「烏天狗は一応、人に対して攻撃した歴史があるから先祖がそれを隠したくて苗字を変えた可能性があるんじゃないかと思う」
なるほど、そう考えてみれば私のタフさにも説明が付くような気がする。
何故だか少しもやもやするが、私の先祖は烏天狗なのかもしれない。
「まあ、まだ憶測に過ぎないけどな。もし何か思い当たるものがあったら教えるよ」
「ぜひ、お願いします」
軽く頭を下げると猫田さんは「任せとけ」とだけ言ってメニューを眺め。
そうして中華料理を楽しんだ私たちは、その後駅中の店を何件か巡り、休日を存分に楽しんだ。
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