運命と運命の人

なこ

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第5章

9

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カイゼルはユアンの部屋から自室へ戻ると、ソファへと腰を下ろし、頭を抱え込んだ。

……ユアンは、そんなつもりはないと言っていたが、今回の出来事への責任を取るべきと言われれば、確かにその通りである。

だが、ユアンはそれでいいのだろうか。

まだ、あの男のことを愛しているのではないのか?

王都へ戻れば、他に幾らでも縁談はあるだろう。

今回の出来事を無かったものとして、新たに愛する者と結ばれればいいのだ。

わたしの元へ残ることに、なんの利点があるというのか。

これまでも、後妻の座を求めて何人かの者たちが、カイゼルの元を訪れている。

妻にして欲しいと、真っ直ぐに見つめるその瞳は、これまでの者たちのそれとは、異なっていた。
 
あの瞳に宿るものを、カイゼルは見たことがある。

今まで一度も、自分へと向けられることは無かった、あの目だ。

まさか、と、思う。

そんなはずはない。

それでも、ユアンのあの瞳を思い出すと、カイゼルは生まれて初めて、心がざわざわと騒ぎ出すのを感じずにはいられなかった。




「あんな事があり、気が動転しているだけだ。落ち着いて、もう一度考え直せ。」

カイゼルは、それだけを言うと部屋を出て行ってしまった。

発した言葉は取り返せない。

ユアンは後悔していない。

気になるのは、カイゼルがどう思ったかだけだ。

今回の出来事は、カイゼルにとっても不本意なことだっただろう。

好きでユアンを抱いた訳ではない。

ユアンもそれを理解している。

それでも、気が付いたとき、ユアンを抱くのがカイゼルだと分かり、ユアンは嬉しかった。

いつの頃からか、カイゼルが邸を留守にする度、ユアンはカイゼルを待ち続けるようになっていた。

苦しくて、ただひたすら苦しかったあの時も、ユアンが待ち続けていたのは、カイゼル1人だ。

マリやリヒト、他の騎士達、執事、使用人、ここでの仕事、辺境は居心地がいい。

ずっと、ここに居たいと思っていた。

それでも、カイゼルがいないと、ユアンはいつも不安でたまらなかった。

探した視線の先に、カイゼルがいると、いつも安心した。

ユアンは気がついてしまった。

自分がいたいのは、だと。

なぜ発情してしまったのか、その理由がわからない今、やはりユアンは不安で仕方がない。

それでも、カイゼルがいてくれたら、ユアンはそれだけで、安心できる。



ぼくは、カイゼル様に惹かれている。

心も、…今では身体も。

ラグアル様を愛していたのに。

浅ましいと思われてもいい。

もう、自分の居場所を誰にも奪われたくない。

カイゼル様の隣にいたい。

カイゼル様が欲しい。




ただ一つ。ここに来て、初めてユアンは気になった。

カイゼルの前妻とは、一体どのような人だったのだろうか、と。















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