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第8章
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ぐっすりと眠った翌朝、ユアンが目覚めると隣りに寝ていたカイゼルがじっとユアンを見つめていた。
「…おはよう、ございます。」
「おはよう。まだ眠っていてもいいぞ。」
「…カイゼル様は?」
「一度湯浴みをさせてもらって、それからセレンの小言に付き合わねばな。」
「小言?」
「今頃やきもきしてるだろう。」
「?」
「共に湯浴みするか?」
「え」
「それも全て、帰ってからだな。」
カイゼルはふっと笑うと、ユアンの頭を一撫でして部屋を出て行った。
「え?湯浴み?」
寝起きのユアンは、まだぼーっとしている。
その日、カイゼルは一日中セレンと父に捕まり、マリは母に捕まり、ユアンは昼過ぎまで寝台で過ごしていた。
父とセレンからは、婚約期間中ならば家に残ってはどうかと言われたが、ユアンは首を縦に振らなかった。
その夜、酒が進む男性陣を残し、母とマリと穏やかな時間を過ごすと、ユアンは先に客室に戻った。
明日には辺境に帰る。
荷物の奥にある木箱を確認し、ユアンは寝台に潜り込んだ。
帰ったら、たくさんすることがあるような気がする。
ああ、そうか、ぼくの帰る場所はもうあそこなんだな。
ユアンが眠りについた頃、酒の匂いを漂わせカイゼルが戻ってきた。
「相変わらず無防備に寝てるな。わたしの忍耐にも限界があるのだぞ、ユアン。」
ユアンを抱き寄せると、カイゼルも眠りについた。
翌日、なんとか引き留めようとする侯爵とセレンを宥め、辺境の地へと一行は旅立った。
「マリ、荷物が増えすぎだろう。」
「だって、ユアン様のお母様がたくさんくれたから。ユアン様のお母様にね、また来てねって言われちゃった~。」
2人の会話を聞きながら、ユアンは窓の外を眺めていた。
セレンと辺境へ向かったあの日、こんな日が来るとは想像もつかなかった。
あ、あの店。
あの日、ラグアルとリオが幸せそうに微笑みあい、寄り添い合っていたあの光景。
あんなに幸せそうだったのに。
冷静に思い返せば、ユアンを見るリオの目は怯えているように見えた。
そう言えば、初めて対面したときも何度も何度もユアンに謝っていた。
ぼくの事、気にしてるのかな…
ユアンとて、カイゼルの前妻のことが気になってしょうがない。
あの子も気にしてるのかも。
ぼくのことなんて、気にしなくていいのに。
ラグアル様は、あんなにあの子のこと大事そうにしてた。
運命の番なんだから、きっと幸せになるよね。
ぼくにはカイゼル様がいるから、もう大丈夫だよって、いつか話せたらいいな。
あ、でもカイゼル様はとらないでねって、言わないと。
ラグアル様がいるんだから。
「ユアンどうした?」
外を眺めながら黙りこくるユアンを、カイゼルが心配そうに覗き込む。
「ユアン様、どうかした?」
マリも心配そうだ。
「なんでもありません。早く帰りたいなあって、そう思っていただけです。」
ユアンはにっこりと微笑んだ。
ぼくは、きっと幸せ。だから、君も幸せになって…。
ユアンとカイゼルが辺境へと立った日、王都は2人の噂で沸き立った。
ラグアルに運命の番が現れたときと同じぐらいか、それ以上の衝撃が貴族たちの間に広がった。
あの辺境伯と、あのユアン様が。
なぜあの2人が?
どこに接点が?
その噂は、花屋から戻ってずっと寝込んだままのリオを心配する公爵家にも伝わった。
ラグアルにとって、衝撃的な出来事だった。
「…おはよう、ございます。」
「おはよう。まだ眠っていてもいいぞ。」
「…カイゼル様は?」
「一度湯浴みをさせてもらって、それからセレンの小言に付き合わねばな。」
「小言?」
「今頃やきもきしてるだろう。」
「?」
「共に湯浴みするか?」
「え」
「それも全て、帰ってからだな。」
カイゼルはふっと笑うと、ユアンの頭を一撫でして部屋を出て行った。
「え?湯浴み?」
寝起きのユアンは、まだぼーっとしている。
その日、カイゼルは一日中セレンと父に捕まり、マリは母に捕まり、ユアンは昼過ぎまで寝台で過ごしていた。
父とセレンからは、婚約期間中ならば家に残ってはどうかと言われたが、ユアンは首を縦に振らなかった。
その夜、酒が進む男性陣を残し、母とマリと穏やかな時間を過ごすと、ユアンは先に客室に戻った。
明日には辺境に帰る。
荷物の奥にある木箱を確認し、ユアンは寝台に潜り込んだ。
帰ったら、たくさんすることがあるような気がする。
ああ、そうか、ぼくの帰る場所はもうあそこなんだな。
ユアンが眠りについた頃、酒の匂いを漂わせカイゼルが戻ってきた。
「相変わらず無防備に寝てるな。わたしの忍耐にも限界があるのだぞ、ユアン。」
ユアンを抱き寄せると、カイゼルも眠りについた。
翌日、なんとか引き留めようとする侯爵とセレンを宥め、辺境の地へと一行は旅立った。
「マリ、荷物が増えすぎだろう。」
「だって、ユアン様のお母様がたくさんくれたから。ユアン様のお母様にね、また来てねって言われちゃった~。」
2人の会話を聞きながら、ユアンは窓の外を眺めていた。
セレンと辺境へ向かったあの日、こんな日が来るとは想像もつかなかった。
あ、あの店。
あの日、ラグアルとリオが幸せそうに微笑みあい、寄り添い合っていたあの光景。
あんなに幸せそうだったのに。
冷静に思い返せば、ユアンを見るリオの目は怯えているように見えた。
そう言えば、初めて対面したときも何度も何度もユアンに謝っていた。
ぼくの事、気にしてるのかな…
ユアンとて、カイゼルの前妻のことが気になってしょうがない。
あの子も気にしてるのかも。
ぼくのことなんて、気にしなくていいのに。
ラグアル様は、あんなにあの子のこと大事そうにしてた。
運命の番なんだから、きっと幸せになるよね。
ぼくにはカイゼル様がいるから、もう大丈夫だよって、いつか話せたらいいな。
あ、でもカイゼル様はとらないでねって、言わないと。
ラグアル様がいるんだから。
「ユアンどうした?」
外を眺めながら黙りこくるユアンを、カイゼルが心配そうに覗き込む。
「ユアン様、どうかした?」
マリも心配そうだ。
「なんでもありません。早く帰りたいなあって、そう思っていただけです。」
ユアンはにっこりと微笑んだ。
ぼくは、きっと幸せ。だから、君も幸せになって…。
ユアンとカイゼルが辺境へと立った日、王都は2人の噂で沸き立った。
ラグアルに運命の番が現れたときと同じぐらいか、それ以上の衝撃が貴族たちの間に広がった。
あの辺境伯と、あのユアン様が。
なぜあの2人が?
どこに接点が?
その噂は、花屋から戻ってずっと寝込んだままのリオを心配する公爵家にも伝わった。
ラグアルにとって、衝撃的な出来事だった。
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