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第8章
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あれほど楽しみにしていた外出から戻ってきたリオの姿に、ラグアルは眉を顰めた。
怯えたように震えながら、ごめんなさい、ごめんなさいと、何かにずっと謝り続けている。
「一体、どうしたんだ?何があった?リオ?」
リオは何も語らない。
ラグアルがリオを抱きしめようとするが、リオはそれを拒絶する。
「…リオ?」
呆然とするラグアルの横をすり抜けるように、リオは寝室に入るとそのまま寝台に潜り込んだ。
リオがラグアルを拒絶するのは初めてのことだ。
ラグアルはリオに付けた従者を呼び出した。
「…何があった?」
呼びつけられた2人の従者は震え上がった。
無表情に見据えるラグアルは、いつものラグアルとは違う。
すぐに答えられない2人に、一段と低い声が問い掛ける。
「何があった、と聞いているが?」
2人の従者は互いに見つめ合うと、恐る恐るその時の状況を語り始めた。
「……ユアンが?」
ユアンは2人のことを知らないだろうが、公爵家に仕えるものでユアンを知らない者はいない。
「…間違いないのか?」
「ま、間違いありません。ユアン様を見間違えるなど、決してございません!」
2人も驚いたのだ。なぜあの場にユアンが現れたのか。動揺し、引き止めることも出来なかった。
ラグアルは頭を抱えた。
噂では、王都を離れどこかで静養しているのではないかと耳にしていたが、実際、誰もその居場所を知る者はいなかった。
「…王都に、いたのか?」
「わ、わかりません。何も知りません!お止めできず、申し訳ございません!」
真っ青な顔色で謝り続ける従者たちの声はラグアルに届いていない。
「ユアンは、誰と、いた?」
2人は、ごくりと唾を飲み込んだ。
「おそらく、あの紋章は……」
ラグアルの圧に、2人の震えは止まらない。
「紋章は?」
「おそら、く……辺境の…」
「辺境?」
「…辺境の騎士が1人と…」
「他にも、いたのか?」
「…王弟でもある、辺境伯様かと、存じ上げます。」
「………まさか。なぜだ?」
「それは、存じ上げません……。ですが、あのお方は、間違いなく、そのお方だと。」
ラグアルは耳を疑った。
王宮ですれ違ったあの方と、ユアンが?
疑問ばかりが浮かび上がる。
ユアン……なぜ。なぜあの方と…。
ただ一つ、確かなことは、リオとユアンが偶然にもかち合ってしまったという事実だ。
「もう、下がっていい。」
2人の従者は逃げるようにその場を立ち去った。
ラグアルが寝室へ戻ると、リオは寝台に蹲ったまま振り返ることもない。
「…リオ。どうしたんだ?」
「…………。」
「リオ、ユアンと…」
がばりと、リオが起き上がった。
泣きそうな、睨むような、複雑な表情をしてラグアルを見上げる。
「ラグアル様は、わたしの、いや俺の好きな物が何か知ってる?」
今までのリオとは雰囲気が違う。
「リオ、何を……」
「俺は知ってる。ラグアル様は、少し脂っぽいのが苦手だろう。いつも脂身を残してる。あっさりとした魚や野菜の方が好きなんだ。それから、鮮やかな大輪の花より、鈴蘭みたいなひっそりとした花の方が好きだろ。それから、ユアン様が好きだった音楽が好きで、好きな色は、翡翠色で、ユアン様の色だ!」
「…………!」
ラグアルは初めてみるリオの姿に、驚きを隠せない。
「ラグアル様は、知ってる?俺が好きな物。」
ラグアルは何も答えられない。
言葉が出てこない。
「知らないだろ?知りたいとも思わないだろ?」
ふ、は、はっ、はははははははははは
リオは突然笑い出した。
「ラグアル様は運命の番だから俺を選んだだけなんだよ。ラグアル様の心の中には、いつだってユアン様がいるんだ。
俺が、どんなに頑張ったって、無理なんだ。ユアン様になんてなれない!」
「違う!リオ、わたしは…」
「ラグアル様は、まだユアン様を愛してる。」
「リオ……」
「…違うって、俺を愛してるって、愛してるのは俺だけだって、嘘でも言えばいいのに!」
「っ、リオ!」
「……ごめんなさい。ラグアル様。もう、無理です。もう、無理………」
リオの瞳から涙が溢れ出す。
抱きしめようとするラグアルをリオは振り払う。
「少し、1人に、して、ください。ごめん、なさい。」
ラグアルは、何も言う事ができなかった。
リオは、愛しい「運命の番」なのに。何も。
その日から誰も近づけようとせず、リオは1人部屋に閉じこもったまま寝込んでしまった。
怯えたように震えながら、ごめんなさい、ごめんなさいと、何かにずっと謝り続けている。
「一体、どうしたんだ?何があった?リオ?」
リオは何も語らない。
ラグアルがリオを抱きしめようとするが、リオはそれを拒絶する。
「…リオ?」
呆然とするラグアルの横をすり抜けるように、リオは寝室に入るとそのまま寝台に潜り込んだ。
リオがラグアルを拒絶するのは初めてのことだ。
ラグアルはリオに付けた従者を呼び出した。
「…何があった?」
呼びつけられた2人の従者は震え上がった。
無表情に見据えるラグアルは、いつものラグアルとは違う。
すぐに答えられない2人に、一段と低い声が問い掛ける。
「何があった、と聞いているが?」
2人の従者は互いに見つめ合うと、恐る恐るその時の状況を語り始めた。
「……ユアンが?」
ユアンは2人のことを知らないだろうが、公爵家に仕えるものでユアンを知らない者はいない。
「…間違いないのか?」
「ま、間違いありません。ユアン様を見間違えるなど、決してございません!」
2人も驚いたのだ。なぜあの場にユアンが現れたのか。動揺し、引き止めることも出来なかった。
ラグアルは頭を抱えた。
噂では、王都を離れどこかで静養しているのではないかと耳にしていたが、実際、誰もその居場所を知る者はいなかった。
「…王都に、いたのか?」
「わ、わかりません。何も知りません!お止めできず、申し訳ございません!」
真っ青な顔色で謝り続ける従者たちの声はラグアルに届いていない。
「ユアンは、誰と、いた?」
2人は、ごくりと唾を飲み込んだ。
「おそらく、あの紋章は……」
ラグアルの圧に、2人の震えは止まらない。
「紋章は?」
「おそら、く……辺境の…」
「辺境?」
「…辺境の騎士が1人と…」
「他にも、いたのか?」
「…王弟でもある、辺境伯様かと、存じ上げます。」
「………まさか。なぜだ?」
「それは、存じ上げません……。ですが、あのお方は、間違いなく、そのお方だと。」
ラグアルは耳を疑った。
王宮ですれ違ったあの方と、ユアンが?
疑問ばかりが浮かび上がる。
ユアン……なぜ。なぜあの方と…。
ただ一つ、確かなことは、リオとユアンが偶然にもかち合ってしまったという事実だ。
「もう、下がっていい。」
2人の従者は逃げるようにその場を立ち去った。
ラグアルが寝室へ戻ると、リオは寝台に蹲ったまま振り返ることもない。
「…リオ。どうしたんだ?」
「…………。」
「リオ、ユアンと…」
がばりと、リオが起き上がった。
泣きそうな、睨むような、複雑な表情をしてラグアルを見上げる。
「ラグアル様は、わたしの、いや俺の好きな物が何か知ってる?」
今までのリオとは雰囲気が違う。
「リオ、何を……」
「俺は知ってる。ラグアル様は、少し脂っぽいのが苦手だろう。いつも脂身を残してる。あっさりとした魚や野菜の方が好きなんだ。それから、鮮やかな大輪の花より、鈴蘭みたいなひっそりとした花の方が好きだろ。それから、ユアン様が好きだった音楽が好きで、好きな色は、翡翠色で、ユアン様の色だ!」
「…………!」
ラグアルは初めてみるリオの姿に、驚きを隠せない。
「ラグアル様は、知ってる?俺が好きな物。」
ラグアルは何も答えられない。
言葉が出てこない。
「知らないだろ?知りたいとも思わないだろ?」
ふ、は、はっ、はははははははははは
リオは突然笑い出した。
「ラグアル様は運命の番だから俺を選んだだけなんだよ。ラグアル様の心の中には、いつだってユアン様がいるんだ。
俺が、どんなに頑張ったって、無理なんだ。ユアン様になんてなれない!」
「違う!リオ、わたしは…」
「ラグアル様は、まだユアン様を愛してる。」
「リオ……」
「…違うって、俺を愛してるって、愛してるのは俺だけだって、嘘でも言えばいいのに!」
「っ、リオ!」
「……ごめんなさい。ラグアル様。もう、無理です。もう、無理………」
リオの瞳から涙が溢れ出す。
抱きしめようとするラグアルをリオは振り払う。
「少し、1人に、して、ください。ごめん、なさい。」
ラグアルは、何も言う事ができなかった。
リオは、愛しい「運命の番」なのに。何も。
その日から誰も近づけようとせず、リオは1人部屋に閉じこもったまま寝込んでしまった。
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