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第9章
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せっかく皆が集まっているからと、カイゼルは暫し婚約期間をおくことになった旨を伝えた。
王がユアンの花嫁姿を見たいと言っていたと、とってつけたように話すと、少し戸惑っていた皆も納得したようだ。
「あの、先走ってしまったようで申し訳ございませんが、ユアン様のお部屋をカイゼル様のお部屋との続き部屋にご用意してしまいました。いかがいたしましょう。」
執事はカイゼルからの言いつけ通り、着々と準備を進めてしまっていた。
「別に構わないだろう。ユアンもいいな?」
「はい。よろしくお願いします。」
「左様でございますか。それでは、後ほどユアン様のお荷物をそちらへ移動させましょう。お疲れでしょうから、夕餉の支度が整うまでお部屋でお休み下さいませ。」
「そうだな。少し休むか。」
カイゼルの少し後ろを、まあるく着膨れしたユアンがついていく。
その様子を邸の皆が微笑ましく見送った。
「ユアン様。」
執事の呼びかけにユアンが振り向く。
「?」
「婚約期間とは言え、ここ辺境の邸に使える者は皆、ユアン様をすでに奥さまとして迎え入れる心づもりでございます。どうぞ、よろしくお願いいたします。」
執事が頭を下げると、他の者たちも皆頭を下げた。
「よかったな、ユアン。皆お前を歓迎しているようだ。」
戸惑うユアンにカイゼルが声を掛けると、ユアンは少し恥ずかしそうに、嬉しそうに微笑んだ。
カイゼルは部屋に戻ると、中の内扉を開いてユアンを招き入れた。
中には小さめの寝台と、机と椅子、衣装棚が並んでいる。
ユアンは真っ白なマントと耳当てを外すと、中に着込んだ数枚を脱いでやっと一息ついた。
まだ顔は火照ったままだ。
奥さま………
ぼく、奥さまだって………
頬に両手をあて、目をぱちぱちさせているユアンを、カイゼルは面白そうに眺めていた。
「あ、ぼくの荷物!カイゼル様、ぼくの荷物!大事な物が。」
今度はそわそわと荷物を探し始める。ユアンを見ていると飽きない。
「すぐにここまで運ばせる。そんなに焦るな。」
「あ、もう一つ大事な物があるんです!部屋から持ってこないと!」
ユアンは元の部屋へと行ってしまった。
帰ってきたばかりだと言うのに忙しないなと、カイゼルはふっと笑った。
今日聞かせてくれるのだろうか?
戻ったら、ゆっくり、ユアンはそう言っていた。
長椅子に座り、身体を休めるカイゼルの元へユアンが戻ってきた。
「大事な物はあったのか?」
「はい。ありました。」
ユアンは抱えた小さな箱を、新しい自室の机の上にそっと置いた。
カイゼルに貰った大切な髪留めだ。
それから、運ばれてきた自分の荷物の奥底から簡素な木箱を取り出すと、少し迷ってから机の引き出しの奥へとしまい、鍵をかけた。
夕餉が終わり、カイゼルが湯浴みを終えて部屋に戻ると、ユアンはすでに眠ってしまっていた。
「…色々あったような気がするな、ユアン。帰ってきたんだぞ。」
長旅で疲れたのだろう、ユアンは起きる気配もない。
「この先、時間はいくらでもあるからな。」
抱き寄せるユアンの体温はいつも少し高めで、その温もりに誘われるように、この日はカイゼルもすぐに眠りについた。
翌朝、目覚めたユアンの隣りにカイゼルの姿はなかった。
国境沿いでの諍いに、カイゼルはすでに出払ってしまった後だった。
マリもリヒトも既にいない。
これが辺境という場所なのだ。ユアンは身支度を整えると、自分のできる仕事へと取り掛かった。
カイゼルがいつ戻れるかは、わからないと言う。
どうか、ご無事に。
ユアンはそう願いながら、それから何日も何日も、カイゼルの、皆の帰りを待ち侘びた。
王がユアンの花嫁姿を見たいと言っていたと、とってつけたように話すと、少し戸惑っていた皆も納得したようだ。
「あの、先走ってしまったようで申し訳ございませんが、ユアン様のお部屋をカイゼル様のお部屋との続き部屋にご用意してしまいました。いかがいたしましょう。」
執事はカイゼルからの言いつけ通り、着々と準備を進めてしまっていた。
「別に構わないだろう。ユアンもいいな?」
「はい。よろしくお願いします。」
「左様でございますか。それでは、後ほどユアン様のお荷物をそちらへ移動させましょう。お疲れでしょうから、夕餉の支度が整うまでお部屋でお休み下さいませ。」
「そうだな。少し休むか。」
カイゼルの少し後ろを、まあるく着膨れしたユアンがついていく。
その様子を邸の皆が微笑ましく見送った。
「ユアン様。」
執事の呼びかけにユアンが振り向く。
「?」
「婚約期間とは言え、ここ辺境の邸に使える者は皆、ユアン様をすでに奥さまとして迎え入れる心づもりでございます。どうぞ、よろしくお願いいたします。」
執事が頭を下げると、他の者たちも皆頭を下げた。
「よかったな、ユアン。皆お前を歓迎しているようだ。」
戸惑うユアンにカイゼルが声を掛けると、ユアンは少し恥ずかしそうに、嬉しそうに微笑んだ。
カイゼルは部屋に戻ると、中の内扉を開いてユアンを招き入れた。
中には小さめの寝台と、机と椅子、衣装棚が並んでいる。
ユアンは真っ白なマントと耳当てを外すと、中に着込んだ数枚を脱いでやっと一息ついた。
まだ顔は火照ったままだ。
奥さま………
ぼく、奥さまだって………
頬に両手をあて、目をぱちぱちさせているユアンを、カイゼルは面白そうに眺めていた。
「あ、ぼくの荷物!カイゼル様、ぼくの荷物!大事な物が。」
今度はそわそわと荷物を探し始める。ユアンを見ていると飽きない。
「すぐにここまで運ばせる。そんなに焦るな。」
「あ、もう一つ大事な物があるんです!部屋から持ってこないと!」
ユアンは元の部屋へと行ってしまった。
帰ってきたばかりだと言うのに忙しないなと、カイゼルはふっと笑った。
今日聞かせてくれるのだろうか?
戻ったら、ゆっくり、ユアンはそう言っていた。
長椅子に座り、身体を休めるカイゼルの元へユアンが戻ってきた。
「大事な物はあったのか?」
「はい。ありました。」
ユアンは抱えた小さな箱を、新しい自室の机の上にそっと置いた。
カイゼルに貰った大切な髪留めだ。
それから、運ばれてきた自分の荷物の奥底から簡素な木箱を取り出すと、少し迷ってから机の引き出しの奥へとしまい、鍵をかけた。
夕餉が終わり、カイゼルが湯浴みを終えて部屋に戻ると、ユアンはすでに眠ってしまっていた。
「…色々あったような気がするな、ユアン。帰ってきたんだぞ。」
長旅で疲れたのだろう、ユアンは起きる気配もない。
「この先、時間はいくらでもあるからな。」
抱き寄せるユアンの体温はいつも少し高めで、その温もりに誘われるように、この日はカイゼルもすぐに眠りについた。
翌朝、目覚めたユアンの隣りにカイゼルの姿はなかった。
国境沿いでの諍いに、カイゼルはすでに出払ってしまった後だった。
マリもリヒトも既にいない。
これが辺境という場所なのだ。ユアンは身支度を整えると、自分のできる仕事へと取り掛かった。
カイゼルがいつ戻れるかは、わからないと言う。
どうか、ご無事に。
ユアンはそう願いながら、それから何日も何日も、カイゼルの、皆の帰りを待ち侘びた。
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