運命と運命の人

なこ

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第10章

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夜が来る度、いくらを抱いたとしても、抱きしめても、愛してると言っても、

リオは、と笑うだけだ。

もうラグアルの声は、リオへと届かない。

リオはこんな風に笑うことはなかった。

……そもそも、リオが心から笑っている姿を目にしたことがあっただろうか。

日中のリオと夜のリオとの境目が、日毎曖昧になっている。

ラグアルは、行き詰まっていた。




「…急に訪れて、すまない。」

花屋の奥で、ラグアルが向かい合うのはシルビオだ。

リオのことを1番よく知る人物は、結局シルビオ以外に思いつかなかった。

「いえ、先日は、申し訳ありませんでした!」

シルビオは何度も頭を下げた。シルビオも妻もあの日からずっとリオを心配していた。

「いや、いいんだ。今日はその話しをしにきた訳ではない…。」

ラグアルはとても疲弊した様子だ。

「リオに、何か…?」

「いや………リオは、どんな子だった?教会でも、ここでも、ずっと一緒に暮らしていただろう?

リオは、何が好きで、どんなことをしている時が1番楽しそうなのか、君なら知っているだろう。教えて欲しい…」

「…………リオの好きなこと、ですか?」

「ああ。そんな事も知らないのかと、そう思うか?」

「いいえ。リオは……」

シルビオは教会にいた頃のリオの事、ここで働いていたリオの事をラグアルに話した。

結局リオは、草花の世話をしている時だけが、いつも楽しそうだったと言う。

他に何かを欲しがる様子は見たことがないと言う。

「そうか……ありがとう。急に来てすまなかった。」

ここまで足を運んでも、リオについて何かを得ることはできなかった。

シルビオは、八方塞がりのこの状況に落胆した。

「あの、こんなことをお聞きしていいのか、不躾かもしれませんが……」

「わたしに答えられることであれば、何でも聞いてくれ。」

「あの日、ここを訪れてきたのは、ラグアル様の……。」

「ああ、ユアンのことか。わたしの……元の婚約者だ……」

「やはり、そうでしたか……」

「まさか、ユアンが訪れてくるとは思ってもいなかった。リオもきっと、驚いたのだろう。」

ラグアルは深く溜め息を吐いた。

「やはり、あの方が、ユアン様だったのですね。…リオは、幼い頃から会ったことのないユアン様のことを、ずっと、知っていたんです。」

「…どう言う事だ?ユアンを知っていた?」

シルビオは苦い顔をする。

「教会で保護されてる珍しい孕み子だから、貴族の方たちはリオを見るために、よく訪れてきたんです。

もしかしたら、養子に迎えようと考えていたのかもしれません。

リオはいつも言っていました。

結局みんな、同じ孕み子でもユアン様とは全然違うって、がっかりして帰るだけだって。

俺はで、じゃないのに。

そう言っていたんです。」

ラグアルは頭を抱えた。

ラグアルの知らない所で、ずっとずっと前からリオはユアンと比べ続けられていたのだ。

それなのに、今のリオは……

「ラグアル様、後悔していますか?リオとの
こと。

リオは、あの日言ってたんです。早く帰って、ラグアル様に会いたいって。

始まりはどうであれ、リオはラグアル様に惚れてます!

リオのこと、お願いします!

リオには、幸せになって欲しいんです!」

シルビオはまた何度も頭を下げた。

「リオが、そんなことを……」

リオの過去を、今を思うとラグアルの胸は痛んだ。

始まりはどうであれ……

……そうだ。もう一度、やり直そう。

……始めから、やり直せばいい。

「やはり、ここに来て良かった。わたしはリオを大切にするよ。安心してくれ。始まりはどうであれ、わたしが愛するのはだけだ。」

ラグアルは、リオが好きだと言う花をたくさんシルビオに見繕ってもらった。

抱えきれない程の花々を。

「ラグアル様も、リオに惚れてるんですね。」

ニカっと笑うシルビオに、ラグアルは笑った。

店を出るラグアルと入れ違うように、1人の男が店へと入っていった。

すれ違いざま、男はラグアルに気が付くと、一瞬驚いた顔をして、それから意味深に、にやりと笑った。

ラグアルは気が付く様子もない。

早く帰って、リオに会いたい。

ラグアルも、あの日のリオと同じように、そう思って、邸へと急いだ。














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