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第4話
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あの物静かなルドウィンの口から、ワッと言葉の洪水が溢れてきたことにも驚いたが、それ以上に、彼の話した内容は、私の体にほんの少しだけ残っていた気力を奪い去っていった。
『適当に色目を使っておけば、きみを厚遇しただろうに』
ルドウィンは、確かにこう言った。
……普通なら、間違っても婚約者に対して言う台詞ではない。
あのエグバートに色仕掛けを使って成り上がるべきだったと、ルドウィンはそう言いたいの?
それに、最後に吐き捨てるように言った、『前々から思っていたが、愚かとしか言いようがない』という言葉。
……それって、以前から私のことを、馬鹿にしてたってこと?
突然のことに、私は言葉を返すこともできず、その場に立ち尽くした。
ルドウィンはそんな私を見て、わざとらしいほどの特大の溜息を吐くと、上手に手綱を引いて、馬を反転させた。そして、こちらを振り返ることもなく、一人でぶつぶつと喋りだす。
「まあ、過ぎたことを言っても仕方がない。これからのことを考えないとね。ああ、まったく、大変なことになった。面倒なことは嫌いなんだけどな。ああ、面倒だ、面倒だ……本当に面倒だ……人生計画が狂うのが、一番イラっとくるんだよな……」
独り言にしては、実に饒舌である。
彼はそのまま、どこかに行ってしまった。
……私は、それほど聡い人間ではないが、今のルドウィンの態度で、ほんの少し前までは、二人の間に確かにあったはずの『絆』が、粉々に砕け散ってしまったのを、なんとなく理解した。
・
・
・
失意の中、私は重たい足を引きずり、実家への帰路についた。
体力には自信があるが、ここまでの旅路と、精神的疲労で、膝から下が棒のようになってしまった。もうたったの三十分だって歩けはしないだろう。
すっかり日が沈んでしまい、周囲が闇に包まれると、ただでさえ落ち込んでいる気持ちが、さらに暗くなるようだった。そんな中、視界の先に、柔らかな明かりが見える。……やっとついた。私の実家だ。
私の実家は、小さな牧場をやっており、裕福とまではいかないものの、近隣の家よりは少しだけ大きい。瞳を閉じると、懐かしい干し草の香りが鼻腔に届き、なんとなく安らいだ気持ちになる。
正直言って、実家にはあまり良い思い出がないのだけれど、それでも、多感な子供時代を過ごした場所というのは、誰にとっても特別だということかしら。
そんなことを考えていると、家の戸が開き、誰かが出てきた。
その『誰か』が、義理の兄、ハーキースであることはすぐに分かった。暗闇の中でも、180cmを軽く超える義兄の長身は、良く目立つからだ。
ルドウィンに冷たくされた心の痛みを隠すように笑顔を作り、私は声をかける。
「ただいま、兄さん。また背が伸びたんじゃない?」
『適当に色目を使っておけば、きみを厚遇しただろうに』
ルドウィンは、確かにこう言った。
……普通なら、間違っても婚約者に対して言う台詞ではない。
あのエグバートに色仕掛けを使って成り上がるべきだったと、ルドウィンはそう言いたいの?
それに、最後に吐き捨てるように言った、『前々から思っていたが、愚かとしか言いようがない』という言葉。
……それって、以前から私のことを、馬鹿にしてたってこと?
突然のことに、私は言葉を返すこともできず、その場に立ち尽くした。
ルドウィンはそんな私を見て、わざとらしいほどの特大の溜息を吐くと、上手に手綱を引いて、馬を反転させた。そして、こちらを振り返ることもなく、一人でぶつぶつと喋りだす。
「まあ、過ぎたことを言っても仕方がない。これからのことを考えないとね。ああ、まったく、大変なことになった。面倒なことは嫌いなんだけどな。ああ、面倒だ、面倒だ……本当に面倒だ……人生計画が狂うのが、一番イラっとくるんだよな……」
独り言にしては、実に饒舌である。
彼はそのまま、どこかに行ってしまった。
……私は、それほど聡い人間ではないが、今のルドウィンの態度で、ほんの少し前までは、二人の間に確かにあったはずの『絆』が、粉々に砕け散ってしまったのを、なんとなく理解した。
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失意の中、私は重たい足を引きずり、実家への帰路についた。
体力には自信があるが、ここまでの旅路と、精神的疲労で、膝から下が棒のようになってしまった。もうたったの三十分だって歩けはしないだろう。
すっかり日が沈んでしまい、周囲が闇に包まれると、ただでさえ落ち込んでいる気持ちが、さらに暗くなるようだった。そんな中、視界の先に、柔らかな明かりが見える。……やっとついた。私の実家だ。
私の実家は、小さな牧場をやっており、裕福とまではいかないものの、近隣の家よりは少しだけ大きい。瞳を閉じると、懐かしい干し草の香りが鼻腔に届き、なんとなく安らいだ気持ちになる。
正直言って、実家にはあまり良い思い出がないのだけれど、それでも、多感な子供時代を過ごした場所というのは、誰にとっても特別だということかしら。
そんなことを考えていると、家の戸が開き、誰かが出てきた。
その『誰か』が、義理の兄、ハーキースであることはすぐに分かった。暗闇の中でも、180cmを軽く超える義兄の長身は、良く目立つからだ。
ルドウィンに冷たくされた心の痛みを隠すように笑顔を作り、私は声をかける。
「ただいま、兄さん。また背が伸びたんじゃない?」
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