144 / 144
第144話【第一部完】
しおりを挟む
リーゼルは以前、『フェルヴァは俺の説得なんて聞きゃしない』という感じのことを述べていたが、それでもやっぱり、心のどこかで、妹を説得できるかもしれないと、期待していたのだろう。それが失敗し、落ち込んでいるのね。
私は、そんなリーゼルに対し、『今さらそんなこと聞く?』と言うように、微笑んだ。
「もしよかったらも何も、このまま当然、一緒に旅するものだと思ってたわ。だって私たち、お友達でしょ? どうせ旅するなら、二人で旅した方が、楽しいに決まってるじゃない」
「そっか……うん……そうだな……ありがとな、ラディア」
「あっ」
「どうした?」
「名前」
「名前が、どうした?」
「どうしたじゃないわよ。リーゼル、あなた、初めて私の名前、ちゃんと呼んでくれたわね」
「初めてってこと、ないだろう。これまでも、何度か呼んでると思うけど……」
「初めてよ。絶対に初めて。だってあなた、いつも私のこと、『あんた』とか『なあ』としか呼ばないから、私、ちょっぴり寂しい思いをしてたもの」
「あんたがそんな、普通の女の子みたいな感性をしてたとは、驚きだな」
「失礼ね。前にも言ったけど、私はちょっと魔法が得意なだけの、普通の女の子よ」
「昨日、フェルヴァに対しては、『私、普通じゃないからね』って言ってなかったっけ?」
「あの時はあの時、今は今よ」
「それに、普通の女の子は、昨日みたいに、バカでかい魔法の太陽を跳ね返したりできないと思うけどね」
「あれは、あなたも一緒にやったことじゃないの」
「それもそうだな。ってことは、俺も普通じゃないんだな。……それじゃ、普通じゃない者同士、仲良く空を行くとするか」
「そうね。よぉし、話してるうちに、徹夜明けの頭もスッキリしてきたから、ちょっぴり巡航速度を上げるわよ。リーゼル、私の魔力のリズムに、あなたの魔力の波長を合わせてちょうだい。そうすれば、もっと楽に、もっと速く飛べるわ」
「言われなくても、もうやってるよ」
「わお、さすがね」
そして私たちは、少しだけ飛ぶスピードを上げた。
清々しいまでに良く晴れて、気持ちの良い空が、どこまでも広がっている。
思えば故郷を出てから今日まで、ずっと、隣国に留まっているだけだった。今日この時から、私の……いや、私たちの、本当の旅が始まったと言ってもいいだろう。
私は、ちらっと後ろを振り返り、旅の相棒に、悪戯っぽく話しかける。
「ねえリーゼル。もう一回、ラディアって呼んでみてよ」
「またいつか、気が向いたらな」
「けち」
第一部 追放された魔女と、至高なる魔女の会 完
――――――――――――――――――――――――――――――――
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
第一部の終了をもって、ひとまず完結とさせていただきます。
本日から新作『聖女ロボットが完成したので、人間の聖女はもう必要ないそうです』を投稿しております。よろしければ、見てもらえると嬉しいです。
私は、そんなリーゼルに対し、『今さらそんなこと聞く?』と言うように、微笑んだ。
「もしよかったらも何も、このまま当然、一緒に旅するものだと思ってたわ。だって私たち、お友達でしょ? どうせ旅するなら、二人で旅した方が、楽しいに決まってるじゃない」
「そっか……うん……そうだな……ありがとな、ラディア」
「あっ」
「どうした?」
「名前」
「名前が、どうした?」
「どうしたじゃないわよ。リーゼル、あなた、初めて私の名前、ちゃんと呼んでくれたわね」
「初めてってこと、ないだろう。これまでも、何度か呼んでると思うけど……」
「初めてよ。絶対に初めて。だってあなた、いつも私のこと、『あんた』とか『なあ』としか呼ばないから、私、ちょっぴり寂しい思いをしてたもの」
「あんたがそんな、普通の女の子みたいな感性をしてたとは、驚きだな」
「失礼ね。前にも言ったけど、私はちょっと魔法が得意なだけの、普通の女の子よ」
「昨日、フェルヴァに対しては、『私、普通じゃないからね』って言ってなかったっけ?」
「あの時はあの時、今は今よ」
「それに、普通の女の子は、昨日みたいに、バカでかい魔法の太陽を跳ね返したりできないと思うけどね」
「あれは、あなたも一緒にやったことじゃないの」
「それもそうだな。ってことは、俺も普通じゃないんだな。……それじゃ、普通じゃない者同士、仲良く空を行くとするか」
「そうね。よぉし、話してるうちに、徹夜明けの頭もスッキリしてきたから、ちょっぴり巡航速度を上げるわよ。リーゼル、私の魔力のリズムに、あなたの魔力の波長を合わせてちょうだい。そうすれば、もっと楽に、もっと速く飛べるわ」
「言われなくても、もうやってるよ」
「わお、さすがね」
そして私たちは、少しだけ飛ぶスピードを上げた。
清々しいまでに良く晴れて、気持ちの良い空が、どこまでも広がっている。
思えば故郷を出てから今日まで、ずっと、隣国に留まっているだけだった。今日この時から、私の……いや、私たちの、本当の旅が始まったと言ってもいいだろう。
私は、ちらっと後ろを振り返り、旅の相棒に、悪戯っぽく話しかける。
「ねえリーゼル。もう一回、ラディアって呼んでみてよ」
「またいつか、気が向いたらな」
「けち」
第一部 追放された魔女と、至高なる魔女の会 完
――――――――――――――――――――――――――――――――
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
第一部の終了をもって、ひとまず完結とさせていただきます。
本日から新作『聖女ロボットが完成したので、人間の聖女はもう必要ないそうです』を投稿しております。よろしければ、見てもらえると嬉しいです。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
3,451
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(117件)
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
フェルヴァはまだ人類絶滅計画を続けると言ってたけど、本当は姉と遊びたいだけで人類絶滅などどうでもいいんじゃないかなー?
シオシオになったリーゼルが不憫可愛いw
しかしこの娘、今後も「見た目は子供、中身はオ・ト・ナ♥」のままなのかな?
140話最後のフェルヴァの手紙。
おそらく「皆さんも」とするところが「明さんも」になっています。
これからマールセンの章に移行するのでしょうかね。