黒髪が王族の証という異世界に転移しました、自重は致しません。

クレハ

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一章

この気持ちが分からない(?side)

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物心ついた頃から自分は孤児院という所にいた

お母さんとお父さんという言葉は聞いた事があるけどそれが何を意味するのかは知らない。

そしてたまにこの孤児院という所から人がいなくなる事がある

昨日自分のベッドの隣で寝ていた人が次の日目を開けると居なくなっていて、どこに行ったのか分からない。

そして自分よりはるかに大きい人がたまに自分を蹴ったり殴ったりしてくる。

でもこの感情がなんなのか分からない

最初は勝手に目から水が出て来ていたが物心つく頃にはそれも出て来なくなった

自分の見た目は価値があると大きい人が言っていた

そして自分は別の大きな人に孤児院じゃない違う所に連れて行かれた。

それからはあまり良く覚えていない

綺麗な大きい家に連れて行かれて綺麗な服を着せられて使用人?と言われるものになれといわれたが、それが上手くできなかったのか孤児院の大きな人がした様に沢山殴られたし蹴られた。

そしてまた大きな人が自分を引き取りに来て自分を殴ったり蹴ったりしてきた

結局それを何回か繰り返すと自分は牢屋と言われる所にずっと閉じ込められ、たまに憂さ晴らしだと言われて殴ったり蹴られたりした

自分の心の中にあるモヤモヤは増える一方だ

殴ったり蹴られたりする時間が終わるとつまらないと言われて牢屋と言われる所から出ていく大きい人達。

もうずっとそんな事を繰り返しされてきた

どの位ここにいるかも分からないが、たまに出される水とパンを食べると胸の奥がなんだか変な感じがした

そんなある日、また大きな人がやって来て、初めて見る大きな人を自分が居る牢屋に投げ入れてきた。

なんだろうと思い身じろぎをするとその人はこっちを見た。

「だ、誰かいるの...か?」

「......」

なんて言ったらいいのか分からなくて答えれずにいるとまた話しかけてきた

「こ...ども?」

「君も此処の連中に捕まったのか?」

「......」

こんなふうに話しかけられた事がなくて余計に分からなくなってきた

すると大きな人がまたやって来て

「おい、クソガキ、お前は見た目だけは良いがもうダメだな、使い物にならねぇ、よって処分だ。出ろ!」

と言ってきた

処分?ってなんだろう...

するとさっきの人が自分を背に庇いながら

「...る...なっ!」

「あ?」

「こ、この子供に指一本触れるな!!」

と大きな声で肩を振るわせながらそう言った

どうしてそんな事を言っているのかが分からない

「...プッ!ギャハハハハッ!!正義の味方気取りかよ、そんな偽善捨てて大人しく命乞いでもしとけよなっ!」

自分の目の前にいる人は大きな人に蹴られる

「グッ!」

ドサっと壁にぶつかる人

一直線に自分の方へ剣を抜いて歩いてくる大きな人

そしてその手に持った剣を大きく振りかぶった瞬間

唐突に理解した気がした。

自分はもう頑張らなくてもいいんだと

すると突然生暖かい液体がパタタッと頬に飛んできた

さっき蹴られていた人が自分の代わりに剣で斬られていたのだ。

なんで?どうして?この胸のモヤモヤは何?

自分はどうしたらいいの?

この人から目が離せない

でもやっぱり言葉は出て来なくて、この胸のモヤモヤも分からなくて...

そうして只々その場を見ていると牢屋の外から女の人と男の人の声が聞こえてきた

女の人が目から水を流しながらこっちに向かって走って来る。

そして男の人の周りの空気がザワザワしていてよく分からないけど見てはいけないと本能で分かった。

そしてザワザワがおさまった頃男の人が女の人に薬を他に捕まっている人にも分けてあげてと言って一度この牢屋から出て行った

「この薬は!お婆婆の所の高級な薬!これならっ!あぁ、早く目を覚ましてっ!セド!」

そしてまた目から水を流しだした

「あぁ、あなたさっきセドが庇っていた子ね、大丈夫?怪我は?」

「......」

「困ったわね、他の人達の治療もして来るから、待っていられるかしら?」

「.......」

女の人は眉を下げ牢屋を出て行った












暫く経ってザワザワした空気を出していた男の人が戻ってきた。

部屋を移動すると言って皆んなで移動を始めたので大人しくついていく

部屋に着くと自分と一緒に牢屋にいた人がベッドに寝かせられた。

自分は何故かこの人から目を離せなかった

その間にあの男の人は部屋を出て行った

「ねぇ、ここの椅子に座っていいのよ?」

女の人はそう言うが自分はどうしていいのか分からずにそのままそこに立ってジッと見つめる

どの位そうしていただろうか

気がつくとあの男の人が自分に近づきズボッと自分の脇に手を入れ抱え上げると膝の上に横向きに座らせられた。

「......」

それでも自分は視線をあの人から外す事ができない

「君、名前は?」

「......」

「君を助けてくれた人はセドと言ってね、ワシの友達だ」

「......」

セド...女の人も言っていた、名前...というものだろうか

「普段は気の弱そうな感じなんだけどね、情に熱い人だとワシは思っているよ」

「......」

「君を助けた姿はカッコよかったろう?」

「......」

「なんで助けてくれたと思う?」

「......」

助ける?よく分からないよ、なんでそんなこと聞くの?ザワザワした空気をしていた男の人は今はポカポカした声で問いかけて来る。

「それはきっとね、君に同情したのもあるだろうけど、何より放って置けなかったから。そんな単純な理由なんじゃないかな?」

「......」

難しいよ、分からない。

「セドだって怖かったろうに、痛かったろうに、それでも君の事は守るべき存在であると、自分を奮い立たせて助けたんだとワシは思うよ」

「......」

「だってワシの知ってるセドはそういう人間だから。」

「......」

「君はどう思う?」

「......」

「会って間もない人からの善意は怖いかな?」

「......」

怖い?怖いって何?

そしたら男の人が頭を撫でてくる

何?胸の奥がポカポカする

するとポタリと水が目から落ちて来た

「うん、そうだね、これからその感情がなんなのかセドや周りの人達と一緒に知っていこうね」

「......」

溢れた水は止まる事を知らないらしい。



end

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