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誓い

依頼

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ハイバックチェアから立ち上がり、客人を迎え入れる為に執務室の扉を開ける。

そこに立っていたのは小柄な女性だった。
黒く艶やかな長い髪に、傷一つない綺麗な肌、大きな瞳。
俺はルカにしか興味が無いから、正直ルカ以外の生き物は人間だろうと淫魔だろうと魅力的に感じることは無いが、きっと世間一般的には美人、と評されるのであろうその女性は、俺と目が合うなりふわっと花が咲くように微笑んだ。


「はじめまして。カリーナ・ナイトと申します」

「リヒト・ブラウです。お待ちしておりました。どうぞ」


扉を開いているのとは反対の手で室内に入るよう促すと、小さな声で「失礼します」と言って俺の執務室へと足を踏み入れた彼女は、俺にすすめられてソファに腰を下ろすとホッと溜め息を吐いた。


「こちらへは初めて参りましたの。とても厳かな雰囲気で緊張致しましたわ」

「一般の方にはあまり馴染みの無い場所ですからね。あまり気を張っていると疲れてしまいますから、どうぞ楽になさって下さいね、ナイトさん」

「ありがとうございます、リヒトさん。私のことはカリーナ、と呼んでくださいな」


紅茶を淹れて差し出せば、またふわりと微笑んだカリーナ。
きっとケンさんあたりが見たら顔を真っ赤にさせてしどろもどろになりそうだな...と思うその綺麗な笑顔に適当に微笑み返す。

ルカと出会う前は人並み程度に女性に興味があったはずなのに、今はもうルカに夢中過ぎてこれほどの美人を相手にしてもなんとも思わないし、むしろさっさとこの話し合いを終わらせてまた一人になってルカのことを考えたい。

自分の分の紅茶も淹れた俺は、彼女が座るソファの、ローテーブルを挟んだ向かい側のソファに腰を下ろすと、早速ですが...と彼女を悩ませている淫魔についての情報を聞き出すことにした。

彼女の話によると、淫魔による最初の夜襲は6日前。
それ以来その淫魔は毎晩のように現れるが、今のところカリーナの体液を奪うと去っていくそうで、淫魔の性器を挿入されたりはしていないらしい。

その時のことを思い出しているのか、自分の身体を抱き締めるようにして小さく震えながら話すカリーナは、相手が俺じゃなかったら発情してしまうのでは無いかという程、やたらと艶かしい雰囲気を醸し出している。


「私、もう悪魔に自分の身体を好き勝手されるのは嫌なんです。それに、もし悪魔の...を入れられたりでもしたらと思うと怖くて堪らなくて…お願いします、リヒトさん。助けて下さい」


確かに、今のところは体液を奪われるだけでそれ以外は何もされていないようだが、それだって相当な恐怖や嫌悪感が付き纏っている筈だし、ましてや悪魔の性器を体内に挿入されるかもしれないだなんて...まともな人間の女性からしたら耐え難い程不安だろう。

これは早急になんとかしてあげなくては。

この件が片付くまで、ルカをゆっくり可愛がってあげる時間が取れなくなるのは残念だが、俺は祓魔師。

自分の欲望を満たすよりも、依頼人を助けるのが最優先だ。


「...分かりました。もう安心して大丈夫ですよ。俺が必ず守りますから」

「リヒトさん...。嬉しい、ありがとうございます」


安心させるように優しく微笑みかけると、頬を赤らめて涙ぐむカリーナ。

そうして俺はこの日から毎晩、淫魔を祓いカリーナが日常を取り戻すまで、カリーナの家で張り込むことになった。

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