何でも屋さん

みのる

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第4話 新デザインの剣

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ガラガラガラッ!!
乱暴に店の引き戸を引いて…入って来たのは、いつもの青年であった。
店主にモノを言う隙も与えず、憤怒し先日購入した“商品”への苦情をまくし立てる。

『あの日、街の至るところで同じ顔の彼女を見かけたし、話しかけてもにこにこ笑ってるだけ。返事も簡単な返事だけでしゃべらないじゃないか⁉食べ物を食べても美味しいとか不味いの感想も無いし、俺の事を思いやる心が無い‼この辺りは、一体どうしてくれるんだ⁉これは欠陥品ではないのか?』

そこまで何も言わずに、黙って青年の話を聞いていた店主。やがてヤレヤレ…と口を開いた。

『あの商品はあくまでも気分を楽しむものだからね、さすがに本物の人間を売ったらマズいでしょう?』

とニヤニヤ返された。

『………………………………………』

何も言えなくなった青年は苦虫を噛み潰した様な顔をしていた。
そうして青年は悔しそうに渋々と退散していった。


そこにまた、ガラガラガラッ‼と更に乱暴に引き戸が開き…どうやら常連客っぽい男が1人、入って来て店主に一言。……言おうとしていたが、店主は分かっていたのか、先にその男に“商品”をショーケースの上に出して確認した。

『お前さんが欲しい物は…コレで間違いなかったか?』

店主が差し出した物は、この冬新デザインの…斬れ味の良さそうな剣術用の剣であった。

その男は“俺が待っていたのはコレだ‼”と言わんがばかりに目を輝かせた。そして店主に言う。

『……斬れ味を試したいのだが?』

ショーケースに斬り掛からんとしていた男を、店主は上手いこと言って留まらせた。

『家の庭に巻藁まきわらを用意しよう』

下手に商品に斬り掛かられたら、たまったもんじゃないからだ。

店主と男は庭に出る。庭の巻藁に向かって、男は真剣な眼差しで剣を構える。男が剣を一振すると巻藁と共に…勢い余って柿の木が大きな音を立てて倒れた。
予想外の大事な柿の木まで斬り倒され…店主はあんぐりと口を開けて、

『なんとぉぉぉぉ‼』

と絶叫する事しか出来なかった。

その斬れ味に満足した男は、また店主に一言。

『なかなかの斬れ味だ。気に入った。これを貰おう』

低い声でそう言って、商品と引換に代金を支払った。


『銃刀法違反で捕まるんじゃないぞ?』

店主の忠告を、男は聞いていたのかいないのか、黙って引き戸の音と共に姿を消していた。男は何故か引き戸を閉めるのを忘れ、外を吹きすさぶ冷たい風が店内に入る。

店の隅に隠れて、じっと主と客のやり取りを見ていた店のマスコットキャラクター、たま。

『たま、おいで?オヤツの時間だ』

店の引き戸を閉めてオヤツを用意する主の声と(※正式な主は実は奥さん)、チラつく美味しそうなオヤツ目がけて店主の元に走り寄った。
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