7 / 68
第4話 新デザインの剣
しおりを挟む
ガラガラガラッ!!
乱暴に店の引き戸を引いて…入って来たのは、いつもの青年であった。
店主にモノを言う隙も与えず、憤怒し先日購入した“商品”への苦情をまくし立てる。
『あの日、街の至るところで同じ顔の彼女を見かけたし、話しかけてもにこにこ笑ってるだけ。返事も簡単な返事だけでしゃべらないじゃないか⁉食べ物を食べても美味しいとか不味いの感想も無いし、俺の事を思いやる心が無い‼この辺りは、一体どうしてくれるんだ⁉これは欠陥品ではないのか?』
そこまで何も言わずに、黙って青年の話を聞いていた店主。やがてヤレヤレ…と口を開いた。
『あの商品はあくまでも気分を楽しむものだからね、さすがに本物の人間を売ったらマズいでしょう?』
とニヤニヤ返された。
『………………………………………』
何も言えなくなった青年は苦虫を噛み潰した様な顔をしていた。
そうして青年は悔しそうに渋々と退散していった。
そこにまた、ガラガラガラッ‼と更に乱暴に引き戸が開き…どうやら常連客っぽい男が1人、入って来て店主に一言。……言おうとしていたが、店主は分かっていたのか、先にその男に“商品”をショーケースの上に出して確認した。
『お前さんが欲しい物は…コレで間違いなかったか?』
店主が差し出した物は、この冬新デザインの…斬れ味の良さそうな剣術用の剣であった。
その男は“俺が待っていたのはコレだ‼”と言わんがばかりに目を輝かせた。そして店主に言う。
『……斬れ味を試したいのだが?』
ショーケースに斬り掛からんとしていた男を、店主は上手いこと言って留まらせた。
『家の庭に巻藁を用意しよう』
下手に商品に斬り掛かられたら、たまったもんじゃないからだ。
店主と男は庭に出る。庭の巻藁に向かって、男は真剣な眼差しで剣を構える。男が剣を一振すると巻藁と共に…勢い余って柿の木が大きな音を立てて倒れた。
予想外の大事な柿の木まで斬り倒され…店主はあんぐりと口を開けて、
『なんとぉぉぉぉ‼』
と絶叫する事しか出来なかった。
その斬れ味に満足した男は、また店主に一言。
『なかなかの斬れ味だ。気に入った。これを貰おう』
低い声でそう言って、商品と引換に代金を支払った。
『銃刀法違反で捕まるんじゃないぞ?』
店主の忠告を、男は聞いていたのかいないのか、黙って引き戸の音と共に姿を消していた。男は何故か引き戸を閉めるのを忘れ、外を吹きすさぶ冷たい風が店内に入る。
店の隅に隠れて、じっと主と客のやり取りを見ていた店のマスコットキャラクター、たま。
『たま、おいで?オヤツの時間だ』
店の引き戸を閉めてオヤツを用意する主の声と(※正式な主は実は奥さん)、チラつく美味しそうなオヤツ目がけて店主の元に走り寄った。
乱暴に店の引き戸を引いて…入って来たのは、いつもの青年であった。
店主にモノを言う隙も与えず、憤怒し先日購入した“商品”への苦情をまくし立てる。
『あの日、街の至るところで同じ顔の彼女を見かけたし、話しかけてもにこにこ笑ってるだけ。返事も簡単な返事だけでしゃべらないじゃないか⁉食べ物を食べても美味しいとか不味いの感想も無いし、俺の事を思いやる心が無い‼この辺りは、一体どうしてくれるんだ⁉これは欠陥品ではないのか?』
そこまで何も言わずに、黙って青年の話を聞いていた店主。やがてヤレヤレ…と口を開いた。
『あの商品はあくまでも気分を楽しむものだからね、さすがに本物の人間を売ったらマズいでしょう?』
とニヤニヤ返された。
『………………………………………』
何も言えなくなった青年は苦虫を噛み潰した様な顔をしていた。
そうして青年は悔しそうに渋々と退散していった。
そこにまた、ガラガラガラッ‼と更に乱暴に引き戸が開き…どうやら常連客っぽい男が1人、入って来て店主に一言。……言おうとしていたが、店主は分かっていたのか、先にその男に“商品”をショーケースの上に出して確認した。
『お前さんが欲しい物は…コレで間違いなかったか?』
店主が差し出した物は、この冬新デザインの…斬れ味の良さそうな剣術用の剣であった。
その男は“俺が待っていたのはコレだ‼”と言わんがばかりに目を輝かせた。そして店主に言う。
『……斬れ味を試したいのだが?』
ショーケースに斬り掛からんとしていた男を、店主は上手いこと言って留まらせた。
『家の庭に巻藁を用意しよう』
下手に商品に斬り掛かられたら、たまったもんじゃないからだ。
店主と男は庭に出る。庭の巻藁に向かって、男は真剣な眼差しで剣を構える。男が剣を一振すると巻藁と共に…勢い余って柿の木が大きな音を立てて倒れた。
予想外の大事な柿の木まで斬り倒され…店主はあんぐりと口を開けて、
『なんとぉぉぉぉ‼』
と絶叫する事しか出来なかった。
その斬れ味に満足した男は、また店主に一言。
『なかなかの斬れ味だ。気に入った。これを貰おう』
低い声でそう言って、商品と引換に代金を支払った。
『銃刀法違反で捕まるんじゃないぞ?』
店主の忠告を、男は聞いていたのかいないのか、黙って引き戸の音と共に姿を消していた。男は何故か引き戸を閉めるのを忘れ、外を吹きすさぶ冷たい風が店内に入る。
店の隅に隠れて、じっと主と客のやり取りを見ていた店のマスコットキャラクター、たま。
『たま、おいで?オヤツの時間だ』
店の引き戸を閉めてオヤツを用意する主の声と(※正式な主は実は奥さん)、チラつく美味しそうなオヤツ目がけて店主の元に走り寄った。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる