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01桐木純架君
変わった客事件01
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(四)変わった客事件
そんなわけで、ゴールデンウィークは奈緒と二人で遊ぶどころか、地味な喫茶店のアルバイトに精を出すこととなった。奈緒が宮古先生を慕っている以上、俺に勝ち目はない。純架のようにチョーク折りをネタに彼女を強請る気にもなれない。かといって家でゴロゴロするには両親の不仲が酷すぎる。毎日毎日離婚話を詰めていく光景は俺には耐えられなかった。
だから気晴らしに、また自分の金を持ちたいがために、近所の馴染みの喫茶店『シャポー』のアルバイトの面接を受けたのだ。自給は950円。一日7時間。朝8時から夕方4時までの昼勤務だ。
募集の張り紙を出した張本人、鏑敏晴店長は48歳。ボリュームのある黒髪と髭が年齢を感じさせない。小さな丸眼鏡をかけている。体格はがっしりしていて、なぜかと聞いたら、趣味のウェートトレーニングの成果だと教えてくれた。
俺の面接に立ち会ったのはその敏晴店長だけでなく、11歳下の奥さんの春恵さん、従業員の剣崎桜さんもだった。
春恵さんは愛嬌のある丸い顔が特徴で、そのお腹に子供を宿しているらしい。なかなか恰幅がよい婦人だ。
一方桜さんは31歳で、ほっそりと面長の顔に明確にそれと分かるそばかすが浮いている。世慣れた感じがあった。俺に興味がないのか、自分の爪ばかりいじっている。
店長が俺に白い歯を見せた。日焼けした肌の中、そこだけは別世界のようだ。
「ゴールデンウィークだけの短い期間だけど、よろしく頼むよ」
俺は喜色を隠さなかった。
「採用していただけるんですか?」
「ああ、採用だ。高校一年でアルバイトなんて感心ものだ。きっと店内も明るくなるだろう。……剣崎君」
「はい」
「この店でウェイターとして働く上での基礎知識を彼に教えてやってくれ」
「分かりました」
桜さんは不承不承といった体でうなずいた。
こうして俺の初労働は始まった。4月29日、30日とバイトし、5月1日、2日は登校。また3日、4日、5日、6日、7日とバイトするのが俺のシフトだった。
桜さんは煙草でもくわえて長髪をかき上げていたら様になっていただろう。実際は彼女は嫌煙家で、仕事中は髪を後ろで結っていた。
「坊や、この仕事は盆を運ぶ手際も良くなければならないけど、大事なのは愛想と記憶力だ。注文を間違っちゃいけないし、仏頂面では給仕は勤まらないよ。客が入ってきたら『いらっしゃいませ!』、出て行ったら『ありがとうございました、またのお越しを!』だ。それも満面の笑みでな。練習してみようか?」
桜さんはあれこれアドバイスしてくれる。俺は手帳にメモを取りながら、彼女の意外に早口な説明に必死で食らいついていった。
この『シャポー』は四人掛けの椅子4組とカウンターの椅子6組が、道路に平行した細長い店内に設置されている。敷居の奥にはカリタの業務用電動コーヒーミルと、瓶詰めされた各種コーヒー豆、更にコンロや流しなどのキッチン、壁にかけられたフライパンと、食材を詰めた冷蔵庫などがある。アルコールは出していない。それなりの大きさで、だから清掃も大変そうだった。外は大きな車道を挟むようにビルや店舗が軒を連ねており、ここに勤める人々が『シャポー』のメインの客層らしい。
やがて窓の外に通行人が目立ってきた。開店の朝8時まで後5分。初日の今日は1時間早く出勤し、桜さんの教導に学んでいたのだ。
「じゃ、開店しよう」
襟のある正装をした敏晴店長が、入り口のドアを開け、表の札を『準備中』から『営業中』に裏返した。俺は緊張しながら、制服の乱れはないか確認したり、鏡を見て頭髪のセットを気にしたりした。
ドアが開き、最初の客が入ってきた。桜さんの教え通り、俺は大声で叫んだ。
「いらっしゃいませ!」
俺の心は初めての体験にわくわくと弾んでいた。
午前11時。まだ空いている店内に一人の男性客が入ってきた。
客は老人だった。還暦は過ぎているだろう。こちらの案内に従わず、窓際の四人掛けの席に着席する。老人は好々爺といった風情で、白い口髭をたくわえていて、物静かだった。紺のジャケットを着用しているが、年季の入ったものであることがその色味の薄さから感じられる。ほっそりした印象で、丸い帽子を脱いで脇に置いた。
そして彼は注文する。
「カフェラテ一つ」
「カフェラテ一つですね、かしこまりました」
やがて時刻は午後1時を回った。昼時の混雑が収まり、俺は凝り固まった肩をほぐしながら、マスターに休憩を申請した。
その際にも、あの老人はまだ窓の外を眺めていた。コーヒーカップはその中身を一度も味わわれることなく、テーブルの上に鎮座ましましている。
一体何のために注文したんだろう? それにここから見える窓の外に何があるというのだろう? あるいは誰かを待っているのかもしれないが、なぜ誰も来ないのだろう?
疑問は募るばかりだったが、俺は考えてもしょうがないこととして、奥の控え室に入っていった。
『シャポー』の休憩は30分が2回の計1時間だ。俺は食事を済ませると、時間ぎりぎりで再び店内に戻った。老人は――
いた。まだ一人きりで無言の行を続けている。カフェラテ以外何を頼むでもなく、ただじっと窓外の景色を飽かず両目に焼き付けていた。桜さんが休憩を取り、ウェイターは俺と春恵さんの二人だけになる。客は老人と若い男女のカップルの計2組のみだった。老人はしきりと腕時計を気にしている。
午後2時を回った。すると老人が突然カフェラテに手を伸ばし、その冷えた中身を大きくあおった。まさに一息で飲み干したのだ。
老人は空のカップを置くと椅子から離れ、レジまでやってきた。
「美味しかったよ。お勘定」
そして代金を払うと、さっきまでの物憂げな沈鬱はどこへやら、妙に晴れ晴れとした表情で――それはどこか物悲しげだったが――ドアの外へと出て行った。
「ありがとうございました!」
俺は大声で見送った。まあ、たまにはこんな意味不明な客もいるのだろう。俺は老人のことを綺麗さっぱり忘れると、新しく入店してきた客の元へ急いだ。
翌日は4月30日。俺は少し早めに出勤し、テーブルや椅子の清掃に努めた。
「そんなに張り切ると後でばてるぞ、坊や。今の時間は給料出ないんだからな」
桜さんが髪の毛を後頭部で結びながら揶揄する。俺は微苦笑しながら続けた。
開店すると、朝食をしたために来た客たちで一気に席が埋まった。『シャポー』自慢のモーニングセットにありつこうとする人が多く、マスターはフル回転で調理の手を休めなかった。
それが一段落した午前11時。俺はすっかり頭から抜け落ちていた記憶を、来店した客の姿で一瞬にしてはめ直された。
それは昨日の同時刻にやってきて3時間粘った、あのカフェラテ老人の姿だったのだ。一人なのにカウンターに座らず、また昨日と同じ、窓際の四人掛けの席に座を占める。
「カフェラテ一つ」
老人は昨日同様、運ばれてきたコーヒーに手をつけず、窓の外にしきりと視線を飛ばした。昼になり、大量の客が押し寄せてきても、やはり老人は我関せずと窓外に目を向けたままだった。
午後2時。老人は腕時計で時間を確認すると、コーヒーを飲み干し、後はもう目もくれず外へ去っていった。
店がそれほど立て込んでない頃、俺は敏晴店長に聞いてみた。
「あのお年寄り、なんでコーヒー一つしか頼まないんですかね」
マスターは困惑気味だ。
「まあ、お客様の自由だから別に構わないんだけど。ただそれで四人掛けを3時間も占領されたら、こちらとしても渋い顔をせざるをえないんだけどね」
俺はこれでも『探偵同好会』会員だ。純架風に思索を進めてみることにしよう。色々可能性はあるが、たぶん老人にとってこれはもう何かの習慣なのだろう。恐らくあの老人は、毎日の散歩を自分に課しており、そのコース上に『シャポー』があるのだ。だから午前11時に『シャポー』で休憩して、午後2時に散歩を再開する。ただそれだけのことなのだ。
「はっはっは」
翌日、1年3組の教室だった。純架は俺の推理を聞くと、腹を露出してブリッジし、水を溜めたやかんをへそに載せた。『へそで茶を沸かす』という意味らしく、馬鹿にされた俺は憤懣やるかたなかった。
「楼路君、君の予想は僕には納得できないよ」
ふざけた格好をしながら純架は俺を見下す。
「『シャポー』で休憩? 3時間はいくらなんでも長過ぎるよ。いや楼路君、僕はそれには首肯できないね」
バランスが崩れ、転倒したやかんの水が盛大に純架の全身にかかった。
「あれ、熱くない」
当たり前だ。
奈緒がはしゃいでいる。両手で自分の顔を挟み、浮き浮きと体を揺すった。
「午前11時に来て、コーヒー一杯で3時間粘り、午後2時に帰っていく老人。凄くミステリアスね。私も見に行っていい?」
「見世物じゃないんだけどな」
それでも俺はまんざらでもなかった。好きな人がバイト先に来てくれるなんて望外の喜びだ。明後日だけといわず、毎日来てほしいぐらいだ。
純架はアントニオ猪木の赤い闘魂タオルで顔を拭った。
「僕はパスだな。というか、老人に直接聞けば済む話じゃないか。それを実行せずただ遠巻きにああでもない、こうでもないと予測するなんて、あんまり失礼というものだよ。それは謎解きとは言わないね」
奈緒が笑みを含んで反論した。
「馬鹿ね。聞かないから面白いのよ。じゃ、明後日の3日にお邪魔するね、朱雀君」
そんなわけで、ゴールデンウィークは奈緒と二人で遊ぶどころか、地味な喫茶店のアルバイトに精を出すこととなった。奈緒が宮古先生を慕っている以上、俺に勝ち目はない。純架のようにチョーク折りをネタに彼女を強請る気にもなれない。かといって家でゴロゴロするには両親の不仲が酷すぎる。毎日毎日離婚話を詰めていく光景は俺には耐えられなかった。
だから気晴らしに、また自分の金を持ちたいがために、近所の馴染みの喫茶店『シャポー』のアルバイトの面接を受けたのだ。自給は950円。一日7時間。朝8時から夕方4時までの昼勤務だ。
募集の張り紙を出した張本人、鏑敏晴店長は48歳。ボリュームのある黒髪と髭が年齢を感じさせない。小さな丸眼鏡をかけている。体格はがっしりしていて、なぜかと聞いたら、趣味のウェートトレーニングの成果だと教えてくれた。
俺の面接に立ち会ったのはその敏晴店長だけでなく、11歳下の奥さんの春恵さん、従業員の剣崎桜さんもだった。
春恵さんは愛嬌のある丸い顔が特徴で、そのお腹に子供を宿しているらしい。なかなか恰幅がよい婦人だ。
一方桜さんは31歳で、ほっそりと面長の顔に明確にそれと分かるそばかすが浮いている。世慣れた感じがあった。俺に興味がないのか、自分の爪ばかりいじっている。
店長が俺に白い歯を見せた。日焼けした肌の中、そこだけは別世界のようだ。
「ゴールデンウィークだけの短い期間だけど、よろしく頼むよ」
俺は喜色を隠さなかった。
「採用していただけるんですか?」
「ああ、採用だ。高校一年でアルバイトなんて感心ものだ。きっと店内も明るくなるだろう。……剣崎君」
「はい」
「この店でウェイターとして働く上での基礎知識を彼に教えてやってくれ」
「分かりました」
桜さんは不承不承といった体でうなずいた。
こうして俺の初労働は始まった。4月29日、30日とバイトし、5月1日、2日は登校。また3日、4日、5日、6日、7日とバイトするのが俺のシフトだった。
桜さんは煙草でもくわえて長髪をかき上げていたら様になっていただろう。実際は彼女は嫌煙家で、仕事中は髪を後ろで結っていた。
「坊や、この仕事は盆を運ぶ手際も良くなければならないけど、大事なのは愛想と記憶力だ。注文を間違っちゃいけないし、仏頂面では給仕は勤まらないよ。客が入ってきたら『いらっしゃいませ!』、出て行ったら『ありがとうございました、またのお越しを!』だ。それも満面の笑みでな。練習してみようか?」
桜さんはあれこれアドバイスしてくれる。俺は手帳にメモを取りながら、彼女の意外に早口な説明に必死で食らいついていった。
この『シャポー』は四人掛けの椅子4組とカウンターの椅子6組が、道路に平行した細長い店内に設置されている。敷居の奥にはカリタの業務用電動コーヒーミルと、瓶詰めされた各種コーヒー豆、更にコンロや流しなどのキッチン、壁にかけられたフライパンと、食材を詰めた冷蔵庫などがある。アルコールは出していない。それなりの大きさで、だから清掃も大変そうだった。外は大きな車道を挟むようにビルや店舗が軒を連ねており、ここに勤める人々が『シャポー』のメインの客層らしい。
やがて窓の外に通行人が目立ってきた。開店の朝8時まで後5分。初日の今日は1時間早く出勤し、桜さんの教導に学んでいたのだ。
「じゃ、開店しよう」
襟のある正装をした敏晴店長が、入り口のドアを開け、表の札を『準備中』から『営業中』に裏返した。俺は緊張しながら、制服の乱れはないか確認したり、鏡を見て頭髪のセットを気にしたりした。
ドアが開き、最初の客が入ってきた。桜さんの教え通り、俺は大声で叫んだ。
「いらっしゃいませ!」
俺の心は初めての体験にわくわくと弾んでいた。
午前11時。まだ空いている店内に一人の男性客が入ってきた。
客は老人だった。還暦は過ぎているだろう。こちらの案内に従わず、窓際の四人掛けの席に着席する。老人は好々爺といった風情で、白い口髭をたくわえていて、物静かだった。紺のジャケットを着用しているが、年季の入ったものであることがその色味の薄さから感じられる。ほっそりした印象で、丸い帽子を脱いで脇に置いた。
そして彼は注文する。
「カフェラテ一つ」
「カフェラテ一つですね、かしこまりました」
やがて時刻は午後1時を回った。昼時の混雑が収まり、俺は凝り固まった肩をほぐしながら、マスターに休憩を申請した。
その際にも、あの老人はまだ窓の外を眺めていた。コーヒーカップはその中身を一度も味わわれることなく、テーブルの上に鎮座ましましている。
一体何のために注文したんだろう? それにここから見える窓の外に何があるというのだろう? あるいは誰かを待っているのかもしれないが、なぜ誰も来ないのだろう?
疑問は募るばかりだったが、俺は考えてもしょうがないこととして、奥の控え室に入っていった。
『シャポー』の休憩は30分が2回の計1時間だ。俺は食事を済ませると、時間ぎりぎりで再び店内に戻った。老人は――
いた。まだ一人きりで無言の行を続けている。カフェラテ以外何を頼むでもなく、ただじっと窓外の景色を飽かず両目に焼き付けていた。桜さんが休憩を取り、ウェイターは俺と春恵さんの二人だけになる。客は老人と若い男女のカップルの計2組のみだった。老人はしきりと腕時計を気にしている。
午後2時を回った。すると老人が突然カフェラテに手を伸ばし、その冷えた中身を大きくあおった。まさに一息で飲み干したのだ。
老人は空のカップを置くと椅子から離れ、レジまでやってきた。
「美味しかったよ。お勘定」
そして代金を払うと、さっきまでの物憂げな沈鬱はどこへやら、妙に晴れ晴れとした表情で――それはどこか物悲しげだったが――ドアの外へと出て行った。
「ありがとうございました!」
俺は大声で見送った。まあ、たまにはこんな意味不明な客もいるのだろう。俺は老人のことを綺麗さっぱり忘れると、新しく入店してきた客の元へ急いだ。
翌日は4月30日。俺は少し早めに出勤し、テーブルや椅子の清掃に努めた。
「そんなに張り切ると後でばてるぞ、坊や。今の時間は給料出ないんだからな」
桜さんが髪の毛を後頭部で結びながら揶揄する。俺は微苦笑しながら続けた。
開店すると、朝食をしたために来た客たちで一気に席が埋まった。『シャポー』自慢のモーニングセットにありつこうとする人が多く、マスターはフル回転で調理の手を休めなかった。
それが一段落した午前11時。俺はすっかり頭から抜け落ちていた記憶を、来店した客の姿で一瞬にしてはめ直された。
それは昨日の同時刻にやってきて3時間粘った、あのカフェラテ老人の姿だったのだ。一人なのにカウンターに座らず、また昨日と同じ、窓際の四人掛けの席に座を占める。
「カフェラテ一つ」
老人は昨日同様、運ばれてきたコーヒーに手をつけず、窓の外にしきりと視線を飛ばした。昼になり、大量の客が押し寄せてきても、やはり老人は我関せずと窓外に目を向けたままだった。
午後2時。老人は腕時計で時間を確認すると、コーヒーを飲み干し、後はもう目もくれず外へ去っていった。
店がそれほど立て込んでない頃、俺は敏晴店長に聞いてみた。
「あのお年寄り、なんでコーヒー一つしか頼まないんですかね」
マスターは困惑気味だ。
「まあ、お客様の自由だから別に構わないんだけど。ただそれで四人掛けを3時間も占領されたら、こちらとしても渋い顔をせざるをえないんだけどね」
俺はこれでも『探偵同好会』会員だ。純架風に思索を進めてみることにしよう。色々可能性はあるが、たぶん老人にとってこれはもう何かの習慣なのだろう。恐らくあの老人は、毎日の散歩を自分に課しており、そのコース上に『シャポー』があるのだ。だから午前11時に『シャポー』で休憩して、午後2時に散歩を再開する。ただそれだけのことなのだ。
「はっはっは」
翌日、1年3組の教室だった。純架は俺の推理を聞くと、腹を露出してブリッジし、水を溜めたやかんをへそに載せた。『へそで茶を沸かす』という意味らしく、馬鹿にされた俺は憤懣やるかたなかった。
「楼路君、君の予想は僕には納得できないよ」
ふざけた格好をしながら純架は俺を見下す。
「『シャポー』で休憩? 3時間はいくらなんでも長過ぎるよ。いや楼路君、僕はそれには首肯できないね」
バランスが崩れ、転倒したやかんの水が盛大に純架の全身にかかった。
「あれ、熱くない」
当たり前だ。
奈緒がはしゃいでいる。両手で自分の顔を挟み、浮き浮きと体を揺すった。
「午前11時に来て、コーヒー一杯で3時間粘り、午後2時に帰っていく老人。凄くミステリアスね。私も見に行っていい?」
「見世物じゃないんだけどな」
それでも俺はまんざらでもなかった。好きな人がバイト先に来てくれるなんて望外の喜びだ。明後日だけといわず、毎日来てほしいぐらいだ。
純架はアントニオ猪木の赤い闘魂タオルで顔を拭った。
「僕はパスだな。というか、老人に直接聞けば済む話じゃないか。それを実行せずただ遠巻きにああでもない、こうでもないと予測するなんて、あんまり失礼というものだよ。それは謎解きとは言わないね」
奈緒が笑みを含んで反論した。
「馬鹿ね。聞かないから面白いのよ。じゃ、明後日の3日にお邪魔するね、朱雀君」
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