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第1章 ざまぁがしたいっ!!

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「シェリー様、エスコートの件ですが王子様に冷たく断わられました」

 わたくしはお屋敷のマッサージルームで寝そべっている馬鹿女に淡々と報告した。いえ、少々悪意に満ちた気持ちを込めている。だってコイツの代わりに危うく『ざまぁ』されそうだったからね。

「あ、そう…」

 シェリーは別段驚く素振りもなく、静かな物言いだった。どういう心境なのかさっぱり分からない。

「自分たちが目立つ行為は控えよう…と王子様は仰いました。その旨を御主人理事長様にも伝えると」

「…」

「シェリー様?」

「…くかー」

 おい、寝てんのかい⁈ 今、大事な話してんだよ! ったく、コイツだきゃーよいよっ!!

「えー、それとですねー、」

 わたくしは態と大声を出してみる。

「う、うーん…なによ」

「御主人様からお話がありました?」

「…は? 何の話?」

「シェリー様が院内でお酒飲んで女生徒を執拗に虐めてるって、王子様から御主人様にご報告なされたと思いますが?」

「知らないし、虐めてないし」

 いえいえ、思っきし虐めてるっしょう⁈

「お咎め受けるかもしれませんよ?」

「ふぁぁぁぁああああ…!」

 あ、あくびすんじゃないわよ! くそう、腹立つなぁぁー!

「あー、アンタがお酒の話するから飲みたくなったわ。ワイン頂戴」

「…あの、わたくしの話聞いてます?」

「いいから…あ、それと今度は肩揉みね」

 コイツとことん腹立つ、腹立つわ!

 仕方なくワインを準備すると、馬鹿女はグラスを一気に空けた。

「うぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ」

「…で、お話続けますね?」

「あのねー  、それよりアンタに面白い事教えてあげるわ」

「はい⁈」

 何なのよー、コイツ!

「わたくしがしてるミー…何とかっての?」

「ミーア様ですね」

 本当は名前知ってるんでしょ! 白々しい! それと指導ってアンタ?? でしょうが!

「そう、そのミーアって女。アレ、実は平民なのよ。ふふふ、知ってた?」

「いえ、知りませんでした」

「わたくしちょっと調べたの。貴族院に時々平民が紛れてるんだけど、ミーアって特待生、実は皇室の推薦枠で編入したらしいわ。これは滅多にない事よ」

「そうなのですね」

「うん、察するに王子の愛人と思うの。でも平民だから正式な公妾にはなれない。まあ、卒業したら宮廷で特別な使用人でもやるんだろうね」

 いえ、ミーア様は愛人ではなく女兵士。王子様の護衛をお勤めになられるのよ。

「で、それがどうかなさいました?」

「だからね、もうどうでも良くってよ。たかが愛人如き、正妻のわたくしのライバルでも何でもない。そもそも王子の事は好きでもないしね。…という事でミーアと王子がイチャつこうが相手にしないって決めたの」

「はあ…それは良かったです……ん?」

 えっ、なに? なに今の? 全てが解決した風な言い回ししてるけど何にも解決してないわよね? これまで散々虐めておいて、今更もう相手にしないって…それで済む話じゃないでしょうが?

 アンタが貴族院でお酒を飲んで、女生徒を虐めた事に対して断罪されないといけないの! ひいては婚約破棄の口実にされるべき!

 この馬鹿女の思考を軌道修正しなければっ!!









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