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第1章:オベール家の娘
7:制約
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今まさにローズマリーとクロードの唇と唇が触れ合う距離まで近づこうとしていた。ローズマリーは心臓をドキンッ! ドキンッ! と跳ね上がらせている。
クロードの体温が、自分の身体を包み込んでいる。クロードの鼻息が自分の鼻の頭に当たってくる。ローズマリーはそのクロードの鼻息がこそばゆいと思ってしまう。
ローズマリーの着ているドレスよりもさらに薄い紅色のまるで桜にも似た色の唇にクロードの唇が近づいていく。幸福感に今まさに包まれようとしていた彼女たちであったが、口吸いは敢行されなかった。
バチッ!!
今まさに触れ合おうとしていた唇と唇の間に反発しあう力が産まれる。まるで小さな雷が落ちたかのように音と衝撃が起こり、クロードは顔だけではなく、身体までもがローズマリーから無理やり弾き飛ばされる形となる。
クロードは自分の身に起きた衝撃により、草の上へと背中から打ち付けることになったのだ。ローズマリーには衝撃はなかったものの、いきなり起きた小さな落雷の音によって、何事が起きたの!? とギュッと閉じていた眼を見開いたのである。
その見開いた眼の先には、クロードが間抜けと言って差し支えのない恰好で草の上に転がっていたのだ。クロードは背中から草の上に叩きつけられて、さらには後方でんぐり返しをしていたのである。
「ク、クロ? いったい、何をしているの?」
幸いなことに彼女にはクロードがその身に受けたような衝撃は、彼女の身には、一切、起きなかったのであろう。それゆえに、クロードの身に何が起きたのかに関して、彼女の理解が遅れることに繋がったのである。
「いったたた……。いきなり、唇が痺れたと思ったら、顔面をぶん殴られたかのような衝撃を受けちまった……。って、ロージー! ロージーはっ!?」
未だ先ほど起きた小さな落雷に似た衝撃の後遺症が残るクロードは、ぼやける自分の眼をまぶたの上から必死に手でこすり、焦点を合わせることに努める。そして、ローズマリーが先ほどの場所に何事もなかったように立っていることに安心感を覚えるのであった。クロードはローズマリーが安全そうだったので、ほっと胸を撫で下ろすばかりである。
しかし、クロードに心配されているローズマリーとしては、何を独り芝居をしているの? クロは? と不可思議に思うのは致し方なかったのかもしれない。
クロードは頭をぶんぶんと左右に振り、次いで自分の身体を手でまさぐり、身体に異常をきたしていなか、チェックをするのであった。
「ねえ? クロ? 何があったの? わたしに状況を説明してほしいんだけど?」
「えっ? 俺は顔面をヌレバ師匠にぶん殴られたくらいの衝撃を喰らったんだけど……。ロージーは見たところ、何もなかった感じで安心しているんだが……。ロージーはさっきの小さな落雷で、何かしらの影響を受けたのか?」
クロードの大層、不安気な表情から、ローズマリーはクロードがそれほどまでに自分の身を心配してしまうほどのことが、クロードの身に起きたことを、今更ながらに理解するのであった。
「わたしはバチッ! っていう何か小さな落雷のような音を聞いただけよ? そして、驚いて眼を開けたら、クロードが草の上を転がっていってて……」
「そ、そうか……。音は互いに聞いたけれど、衝撃は俺だけだったのか……。いや、考えようによっては俺だけが衝撃を喰らっただけで済んでよかったと思うべきか……」
クロードは自分の身体に異常が無いことを軽く確認できたあとに、自分の身に起きたことをつぶさにローズマリーに説明をするのであった。ローズマリーはクロードの身に起きたことを興味深く聞くのであった。
(わたしは音だけ。そして、クロードは音と彼がヌレバに顔面をぶん殴られたかのような衝撃を受けたわけなのね……。でも、なんでこんなことになったのかしら……。こんなに大空は気持ち良く晴れてるから、雷が実際に落ちてきたたわけでもなさそうだし……)
ローズマリーは大空を見上げて、雲ひとつない夏の晴れ渡った蒼い空だということを視認する。するとだ。どこからともなく、その蒼い空から小さな白い縦長の紙片が1枚だけ落ちてくるのである。ローズマリーは、その舞い落ちてくる紙片を上手に両手で包みこむ。そして、その紙片を右手に持ち、裏表を確認する。
「えっ? この紙片に何か書かれてる。えっと『誓約を破ろうとしていたので、我が罰を与えた』って……。え? え? えええ!?」
ローズマリーが驚くのも無理がなかった。白い小さな縦長の紙片には、これまた小さめの字で、はっきりとそう書かれていたのである。それは天上に住まうと言われているヤオヨロズ=ゴッドからの天啓だということに、ローズマリーは、この紙片により気づかされることになる。
「クロ……。わたしたちの身に起こったことは、ヤオヨロズ=ゴッドの仕業みたい……」
ローズマリーはクロードに大空から舞い落ちてきた紙片を渡す。クロードはその紙片に書かれている天啓に眼を白黒させて、えっ? えっ? えええ!? と素っ頓狂な声をあげるのであった。
「おいおいおいっ! なんだよ……。俺はロージーに口吸いをするのは禁止ってのかよっ! そんなのおかしいだろっ! いくらヤオヨロズ=ゴッドと言えども、恋仲の2人の口吸いを制限する権利なんて、もちあわせているわけがないだろっ!」
クロードが憤るのも無理はない。何ゆえに、2人の恋路を邪魔される必要性があるのか理解できないのだ、彼には。怒りの表情に染まるクロードとは対照的にローズマリーの顔面は蒼白へと変わっていく。
「わたしたち、失敗したんだ……。今更になって、わたしがまだ小さい頃にヌレバが言っていたことを思い出した……。これって『婚約』時の『誓約』が『制約』になっちゃったんだ……」
ローズマリーは、幼い頃にヌレバに何度もお伽噺をせがんだのであった。その時にヌレバに聞かされたことのひとつに『誓約と制約』があった。男女が『婚約』をする際に『誓約』を交わしあうのは、男女間の『約束』だけでは済まされないと。
『誓約』はヤオヨロズ=ゴッドとニンゲンとの『約束』でもある。
「わたしたち、『誓約』を交わす時に『結婚するまで清い関係でいましょ?』ってのも言ったじゃない……。融通の利かないヤオヨロズ=ゴッドが本当に言葉通りに受け取っちゃったみたい……」
「普通、そんなの常識的に考えて、エッチをしないって意味に決まってるだろうが……。ヤオヨロズ=ゴッドたちの認識だと、口吸いは『清い関係』を破ることになるって言いたいのかよ……」
「なんで、わたしはヌレバの言っていたことを忘れてたのかしら……。『ヤオヨロズ=ゴッドのみぞ知る』って、言葉があるけれど、こんなのひどすぎるわよっ!」
クロードの体温が、自分の身体を包み込んでいる。クロードの鼻息が自分の鼻の頭に当たってくる。ローズマリーはそのクロードの鼻息がこそばゆいと思ってしまう。
ローズマリーの着ているドレスよりもさらに薄い紅色のまるで桜にも似た色の唇にクロードの唇が近づいていく。幸福感に今まさに包まれようとしていた彼女たちであったが、口吸いは敢行されなかった。
バチッ!!
今まさに触れ合おうとしていた唇と唇の間に反発しあう力が産まれる。まるで小さな雷が落ちたかのように音と衝撃が起こり、クロードは顔だけではなく、身体までもがローズマリーから無理やり弾き飛ばされる形となる。
クロードは自分の身に起きた衝撃により、草の上へと背中から打ち付けることになったのだ。ローズマリーには衝撃はなかったものの、いきなり起きた小さな落雷の音によって、何事が起きたの!? とギュッと閉じていた眼を見開いたのである。
その見開いた眼の先には、クロードが間抜けと言って差し支えのない恰好で草の上に転がっていたのだ。クロードは背中から草の上に叩きつけられて、さらには後方でんぐり返しをしていたのである。
「ク、クロ? いったい、何をしているの?」
幸いなことに彼女にはクロードがその身に受けたような衝撃は、彼女の身には、一切、起きなかったのであろう。それゆえに、クロードの身に何が起きたのかに関して、彼女の理解が遅れることに繋がったのである。
「いったたた……。いきなり、唇が痺れたと思ったら、顔面をぶん殴られたかのような衝撃を受けちまった……。って、ロージー! ロージーはっ!?」
未だ先ほど起きた小さな落雷に似た衝撃の後遺症が残るクロードは、ぼやける自分の眼をまぶたの上から必死に手でこすり、焦点を合わせることに努める。そして、ローズマリーが先ほどの場所に何事もなかったように立っていることに安心感を覚えるのであった。クロードはローズマリーが安全そうだったので、ほっと胸を撫で下ろすばかりである。
しかし、クロードに心配されているローズマリーとしては、何を独り芝居をしているの? クロは? と不可思議に思うのは致し方なかったのかもしれない。
クロードは頭をぶんぶんと左右に振り、次いで自分の身体を手でまさぐり、身体に異常をきたしていなか、チェックをするのであった。
「ねえ? クロ? 何があったの? わたしに状況を説明してほしいんだけど?」
「えっ? 俺は顔面をヌレバ師匠にぶん殴られたくらいの衝撃を喰らったんだけど……。ロージーは見たところ、何もなかった感じで安心しているんだが……。ロージーはさっきの小さな落雷で、何かしらの影響を受けたのか?」
クロードの大層、不安気な表情から、ローズマリーはクロードがそれほどまでに自分の身を心配してしまうほどのことが、クロードの身に起きたことを、今更ながらに理解するのであった。
「わたしはバチッ! っていう何か小さな落雷のような音を聞いただけよ? そして、驚いて眼を開けたら、クロードが草の上を転がっていってて……」
「そ、そうか……。音は互いに聞いたけれど、衝撃は俺だけだったのか……。いや、考えようによっては俺だけが衝撃を喰らっただけで済んでよかったと思うべきか……」
クロードは自分の身体に異常が無いことを軽く確認できたあとに、自分の身に起きたことをつぶさにローズマリーに説明をするのであった。ローズマリーはクロードの身に起きたことを興味深く聞くのであった。
(わたしは音だけ。そして、クロードは音と彼がヌレバに顔面をぶん殴られたかのような衝撃を受けたわけなのね……。でも、なんでこんなことになったのかしら……。こんなに大空は気持ち良く晴れてるから、雷が実際に落ちてきたたわけでもなさそうだし……)
ローズマリーは大空を見上げて、雲ひとつない夏の晴れ渡った蒼い空だということを視認する。するとだ。どこからともなく、その蒼い空から小さな白い縦長の紙片が1枚だけ落ちてくるのである。ローズマリーは、その舞い落ちてくる紙片を上手に両手で包みこむ。そして、その紙片を右手に持ち、裏表を確認する。
「えっ? この紙片に何か書かれてる。えっと『誓約を破ろうとしていたので、我が罰を与えた』って……。え? え? えええ!?」
ローズマリーが驚くのも無理がなかった。白い小さな縦長の紙片には、これまた小さめの字で、はっきりとそう書かれていたのである。それは天上に住まうと言われているヤオヨロズ=ゴッドからの天啓だということに、ローズマリーは、この紙片により気づかされることになる。
「クロ……。わたしたちの身に起こったことは、ヤオヨロズ=ゴッドの仕業みたい……」
ローズマリーはクロードに大空から舞い落ちてきた紙片を渡す。クロードはその紙片に書かれている天啓に眼を白黒させて、えっ? えっ? えええ!? と素っ頓狂な声をあげるのであった。
「おいおいおいっ! なんだよ……。俺はロージーに口吸いをするのは禁止ってのかよっ! そんなのおかしいだろっ! いくらヤオヨロズ=ゴッドと言えども、恋仲の2人の口吸いを制限する権利なんて、もちあわせているわけがないだろっ!」
クロードが憤るのも無理はない。何ゆえに、2人の恋路を邪魔される必要性があるのか理解できないのだ、彼には。怒りの表情に染まるクロードとは対照的にローズマリーの顔面は蒼白へと変わっていく。
「わたしたち、失敗したんだ……。今更になって、わたしがまだ小さい頃にヌレバが言っていたことを思い出した……。これって『婚約』時の『誓約』が『制約』になっちゃったんだ……」
ローズマリーは、幼い頃にヌレバに何度もお伽噺をせがんだのであった。その時にヌレバに聞かされたことのひとつに『誓約と制約』があった。男女が『婚約』をする際に『誓約』を交わしあうのは、男女間の『約束』だけでは済まされないと。
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