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【〜No3〜】

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だが、ブラットリーは攻略対象でもなければ、裏ルートのキャラでもない。
ちょっとシスコン気味の、妹可愛さにマリアールがロバートの婚約者になる為に、手を貸し続けるキャラだった。

だから萌花は、いつもロバートルートを選び、マリアールが婚約者候補から、最初に脱落して修道院送りになるまでしか、プレイしないのだ。
それはマリアールが、ヒロインに対してイジメを繰り返していた事が、ロバートにバレて修道院送りとなると、兄のブラットリーも登場しなくなるからだった。

「あぁ…マリアールが羨ましい…。私ならロバートなんて放っといて、ブラッドリー様とずっと一緒に過ごすのに…。侯爵様だって、嫁に行かなくても、離れに別邸を建てると言ってくれてるんだし。
それにマリアールは、あんなに美少女で、スタイルも抜群なのに、ロバートに夢中になるなんて、男を見る目がないわね!!誰にでも優しい男なんて駄目よ!!それに、ちょっと意地悪したくらいで、修道院送りだなんて、ケツの穴の小さい男ね!!」

萌花は夢の中で、身体がふわふわする感じと、何処かから、いい匂いがするな…と思いながら、またオープニングからゲームを始めていた。

「んっ?気が付いたのかな?」

ブラットリーは、勤務時間が過ぎても目覚めない、リリアーナを抱き上げて馬車に運んでいた。
そして事前に屋敷へ知らせていたので、リリアーナを抱き上げて、部屋に運んでいる途中、突然リリアーナが自分の胸の匂いを、スンスン嗅いだと思ったら、頬を擦り寄せて来ていた。

「ふふっ…寝ぼけているね。御令嬢に、匂いを嗅がれたのは初めてだよ…」

ブラットリーはそう呟きながら、リリアーナを客間に寝かせると、侍女をつけて扉の前には、護衛を立たせた。

「さて…マリアールに、話を聞かなければいけないね…。キャロル、私はマリアールと父上に会いに行くから、こちらの御令嬢の世話を頼むよ。御令嬢はリリアーナ・パヴェル嬢だ。大切なお客様だから、粗相のないように…」

「畏まりました、ブラットリー様」

ブラットリーは、侍女のキャロルにリリアーナの世話を任せると、マリアールの元へと向った。

(コン・コン)

「マリアール、入るよ?」

そう言ってブラッドリーが、マリアールの部屋に入ると、マリアールはソファーに座り、クッションを抱えて怯えた顔をしていた。

「ブラットリーお兄様…。私、疲れていますの…。お話は明日にして下さい…」

「……疲れているなら、私が治癒魔法を掛けてあげるから、少し話をしようか…。今日の出来事を確認しないと、私や父上も色々対応が出来ないからね…。
マリアール…、リリアーナ・パヴェル嬢に、何故あんな事をしたんだい?」

そうブラットリーが、マリアールに優しく尋ねると、マリアールの身体はビクっと跳ねた。

「ブラットリーお兄様、何故それを…」

「んっ?言ってあっただろう?昨日と今日は、ポールに代わって学園の医療室に勤務すると…。ドナルドが血相を変えて、パヴェル嬢を医療室に運び込んで来たから、私が治療したんだよ。彼女の怪我は、頭部が少し切れていたのと、強く打ち付けたせいか、頭にコブが出来ていたし、左足首の捻挫と、擦り傷と打撲が少々だった。未だに目が覚めないよ…」

「そっ、そんな…。私はただ、身の程をわきまえさせようと、少し意地悪をして、後ろから突き飛ばしただけなのに…。こんな騒ぎになるなんて、思ってなかったの…」

そう言ってマリアールは、目に涙を溜めていた。ブラットリーはそんなマリアールの頭を撫でながら話し始めた。

「マリアール、身の程をわきまえさせようとは、どう言う事かな?パヴェル嬢が、何かマリアールに無礼な事をしたのかい?」

「…っ!なっ、何もされてないわ…。でも、聞いたのよ!あの男爵令嬢が、最近男子生徒達から、可愛いとちやほやされて、調子にのっていると…。それでロバート様にも近づいて、纏わり付いて迷惑をかけているとね!」

「マリアールそれは、誰に聞いたんだい?」

「エルーザとパトリシアからですわ…」 

その二人の名前を聞いたブラットリーは(はぁ…)と溜め息をついて、マリアールの横に座り説明を始めた。

「マリアールは、利用されたんだよ…。
エルーザ・デロリアン公爵令嬢とパトリシア・ハイビス伯爵令嬢にね…。二人もロバート様の婚約者候補だろう?
マリアールは直ぐ感情的に動くから、それを利用して悪い噂を広め、婚約者候補から脱落させようとしたのさ。

それにロバート様は、パヴェル嬢の事は余り知らなそうだったよ?
三年生のこの時期に、入学して来た事は知っていたようだがね…。
私も学園から帰る迄の間に、パヴェル嬢の事を調べさせたが、確かに周りの男子生徒は、可愛い彼女に夢中になっているようだが、彼女はその誘いにも乗らず、何時も授業以外の時は、本を読んでいるそうだよ。

子供の頃から病弱で、領地で暮らしていたらしく、最近やっと元気になって、学園にも通えるようになったから王都に来たらしい。
だから、マリアールに突き飛ばされた時に、まだ魔法を使うのが不慣れだったから、直ぐに防御魔法が使えないせいで、酷い怪我を負ったんだろう…」

「そっ、そんな…。私は何もしていない、無関係な人に、いきなり暴力を振るって、大怪我をさせたってこと…。私は…なんて酷い事を…」

マリアールそう言って、ぽろぽろ涙を流して泣き出した。

「マリアール…明日パヴェル嬢に謝るんだ。彼女の事は、私が責任を持って治療するから…」

「ブラットリーお兄様…迷惑掛けて、ごめんなさい…」

「それからマリアールは、直に感情的に行動してしまう…それで何時も誤解されるんだから、慎重に行動しないと駄目だよ?」
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