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【〜No5〜】

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それから一時間程した頃に、リリアーナは、もぞもぞと動き出してから目を開けた。
そして暫く天井を見上げて、深い溜め息をついた。

「はぁぁ……まかさの転生かぁ…。それにしても、ヒロインだなんて…なんでなの?こう言う時は、悪役令嬢でしょう…。はぁ…」

「パヴェル嬢、転生とかヒロイン?悪役令嬢って何かな?気分はどうだい?」

(?!)

突然、セクシーな甘いテノールボイスで、声をかけられて、リリアーナは首をぎぎっと横にして、相手を確認して固まった。
そして目を、これでもかと言うくらい見開いて、両手で口を押さえて震えていた。

(ひゃぁぁ~!! 生!! 生ブラットリ~!!)

(し、死ぬ!また私死んじゃうのね!!
覚えてはいないけど、きっと私は死んでるから、転生してるんだろうし…。あぁ…生ブラッドリーは、声もイケボ♪
神様~ありがとう御座います!!こんなご褒美を頂いて!!
うちは仏教だったけど、線香も数珠もありませんが、感謝を込めて、お経を覚えている所まで、あげさせてもらいます!全部は覚えてないので、同じ節をリピートするので、許して下さい!!)

リリアーナは、そう心の中で神様・仏様に呼びかけると、瞬きもせずにブラットリーをガン見して、口の前で手の平を合わせると、お経を口ずさみ始めた。

「観ζχ在菩ςπ薩 行深ξδ若λξ羅Επ多時照ςσ五蘊ζ空 度一ηθ苦厄…」

それを見たブラットリーは、慌てて立ち上がり、リリアーナの唇に手の平を押し当てて、お経を止めた。

「うわぁぁ~!!何?!何?!パヴェル嬢!!
それって呪いの呪文?!まって!!まって…。そんなに、マリアールの事を、怒っているのかい?」

(?!)

(手ぇぇ~!! ブラットリーの手が、私の唇に触れているわぁ~!!
しっ…心臓が口から出そう…私、死んじゃう…ドキドキどころじゃないわ!!本当に破裂する…)

リリアーナは顔を真っ赤にして、目に涙を溜めて、ブラットリーを見つめていた。
それを見たブラッドリーは、今迄感じた事のない、ゾクリとする感情に戸惑いながら、唇から手を離した。

「パヴェル嬢…。少し話をしたいのだが、いいかな…?」

そう声をかけられたリリアーナは、コクコクと頷いた。

「ありがとう。寝たままだと話しにくいから、身体を起こそうか…」

そう言ってブラットリーは、リリアーナに覆いかぶさるようにして、背中に片腕を差し込んで、抱き起こした。
するとリリアーナは、ブラットリーに抱きしめられた事で、もう限界だった。

「あぁ…ん…もう…だめ…」

リリアーナは、喘ぎ声のような、ドキリとする声を漏らして、カクンと項垂れて、また気を失った。

「…っ?!パヴェル嬢!! これは一体…。
全く困った子猫ちゃんだね…。ベッドの上で、あんな甘い鳴き声を聞かせたら、大人しくしている男はいないよ?
それにしても…気を失ってばかりだな…。まだ身体は健康ではないのか、可哀想に…」

ブラットリーは自分もベッドに上がると、リリアーナを後ろから抱きしめて、治癒魔法をかけた。そしてリリアーナの顎をクイっと上に向けると、唇を指でなぞった。

「ふふっ…柔らかくて甘そうな唇だね…」

そう言ってリリアーナに口づけをして、うっすら開いた唇から舌を滑りこませた。
そして舌を絡め取り、吸い上げては角度を変えて、深く口づけを続けた。

するとリリアーナにも変化が現れて、息苦しさに目を覚ました。

(あっ…なっ…何?…っ、苦しいし、舌?)

「んんっ!! ん~~!!」

リリアーナは、はっきりと目が覚めて、驚きで、身体を捩りだした。

(ブラッドリーに、キスされてる?!)

「パヴェル嬢、目が覚めた?まだ途中だから大人しくして…。でないと、また気を失ってしまうよ?」

そう言ってブラッドリーは、また深い口づけを始めた。

(なに、なに、なにぃ~!!これは夢?!
嫌、夢なら、リアル過ぎるわ…。それに…)

「ふっ……んん…っん…はぁ…ん…んん…っん……っ…あぁ…ん…っふ…んん…」

気がつけばリリアーナは、ブラッドリーに縋りつき、鼻に掛かった淫らな吐息をもらしていた。
ブラッドリーは、角度を変えては口づけを深くするので、リリアーナはゾクゾクしながら、何も考えられなくなっていた。

そしてリリアーナが、ぐったりした頃に、やっとブラッドリーは唇を離して、リリアーナの唇を指でなぞりながら、話し始めた。

「私としたことが…つい夢中になってしまったな…。パヴェル嬢、君が何度も気を失うから、私の魔力を注いだんだが、大丈夫かい?」

色気たっぷりで、ブラッドリーに囁かれたリリアーナは、顔を上げて潤んだ瞳で呟いた。

「だ…駄目です…もう…もう…胸が苦しくて、心臓が…」

「ええっ?!魔力を注ぎ過ぎたか?」

ブラッドリーは、魔力暴走が起きるのかと慌てたが、リリアーナは耳まで赤くなり、自分の胸に顔を埋めていた。

「パヴェル嬢…もしかして、口づけは初めてだったのかな?」

「はい…」

と消え入りそうな声で言われて、ブラッドリーは愕然とした。
この国では、平民でも少なからず魔力を持っている。それは生活魔法程度なのだが、貴族達は家格が高い程魔力量が多い。

だが下位貴族達は、それ程魔力量を多くは持っていないし、その女性となると平民よりは魔力量は多いが、それでも少ない方なのだ。
だから下位貴族達は、魔力不足になったり体調不良になると、手っ取り早くそれを補う為に、恋人や婚約者と口づけをして、相手の魔力を分けて貰うのがあたり前だった。

そのせいか高位貴族達とは異なり、子爵や男爵令嬢達は、幼い頃から婚約者がいる者が多かった。
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