【本編完結済】うろ覚えの転生令嬢は勘違いで上司の恋を応援する

柳葉うら

文字の大きさ
2 / 48

前世の記憶と知恵を絞り出して

しおりを挟む
 王立図書館の司書寮に私の部屋はある。部屋に戻って私はノートを取り出した。記憶を思い出してからというもの、私はここに思い出したことを書き残しているのだ。佳織がじっくりと布教してくれたおかげでその内容は攻略本級である。

 この世界を簡単に説明すると、この世界には魔法があり、魔力が高いものは王立魔法図書館の司書官になることが名誉とされた。

 司書官は王立図書館にのみ居る、司書兼官僚である職業だ。

 王立魔法図書館にある本は先人が培ってきた知識や魔法が込められており、読む人に新たな知識を与え、または助けの手を差し伸べるという。
 魔法が込められた本たちだから、魔法書同士が魔力の反発を招かないように管理には強い魔力を持った司書が必要で、そのため王立魔法図書館の司書官になるという事はとても名誉なのだ。

 主人公のジネットは公爵令嬢だが、元は孤児だ。それにはいきさつがあるのだが、それはまたおいおい説明しよう。彼女は孤児院に居たところ、跡継ぎが居ないエルランジェ公爵夫妻に引き取られて数百年に1度現れるという光属性の魔法を使える魔術師であることが分かり聖女候補となる。しかし、それは表沙汰にはなっていない。
 それは彼女の命が狙われかねないと危惧したエルランジェ公爵夫妻が望んだのだ。そもそも夫妻に跡継ぎが居ないのはエルランジェ公爵が国の平和のために討伐した魔術組織の一味にかけられた呪いがもとで。子どもがなかなか生まれず、生まれても10歳になる前に死んでしまうのだと言う。

 やがてジネットはメキメキと魔術の才を開花して王立魔法図書館の司書官になる。そこで彼女は5人の攻略対象と出会い恋と運命に翻弄されていくのだ。たしか、ルートによって聖女になるか司書のままでいるか、それか王妃となるか国外に逃げるか違っていたわね。

 そしてそんなゲームに転生した私はというと、モブである。

 それも微妙な立ち位置のモブで、兄が攻略対象なのだ。兄のリオネル・フェレメレンは女性と見紛う美しい顔立ちに慈愛に満ちた微笑みが魅力的な人物だが、なんと【ヤンデレ担当】なのである。
 幼い頃に母を亡くし、またシエナも不慮の事故で失ったためにヤンデレになってしまったらしい。そう、私はゲームの中では死んでいるのだ。それがきっかけでリオネルは破滅の道を進むのだと言う。
リオネルは恋心を抱いた主人公を異様に束縛しようとする。それは、大切なシエナを不慮の事故で失ったため大切な主人公もまた死なないように想ってのことなのだが、彼のルートはハッピーエンドでもバッドエンドでもあまり良いエンドではない。
なんと、ハッピーエンドでは聖女と司書の間に揺れて疲れた主人公と国外に逃亡するのだが彼女の道を奪ったと悩み定期的にヤンデレの発作を起こし、主人公に嫌われ捨てられるのを恐れて逃亡先の屋敷の中に閉じ込めてしまう。ハッピーじゃねぇじゃんと思ってしまった。
 バッドエンドでは主人公は死んでしまう。悪役令嬢パトリシア・ヴォルテーヌがエルランジェ公爵に討伐された魔術組織の残党と手を組んで主人公を殺してしまうのだが、それに激昂したリオネルがパトリシアを生け捕り尋問の挙句無残な方法で殺すらしい。

 ゲームでシエナが死んだのは、友だちと遊んでいたときに誤って湖に落ちたのが原因。しかしなぜか私は助かったのでリオネルのヤンデレへの道は防げたはずだ。もしかして、これが原因で設定が歪んでヒロインがあんなことになってしまったのだろうか?

 私に布教してくれた前世の友人である佳織はリオネルへの思い入れが強く、このことについては詳細に教えてくれていた。

 それにしても、左遷となれば次にヘマすれば今度こそクビ。やっとなれた、前世でも憧れの司書なのに。
私は唇を噛んだ。この状況はもうどうにもできない。次の左遷先でどうにか頑張って1年後の人事会議で功績を認めてもらわないと、王立図書館内での勤務は絶望的だ。

 王立図書館の司書官をクビにされれば、その噂が回って他の図書館に行っても司書になれないだろう。
司書のままでいられるのであれば、私はなんだってする。

 うう……仕事でヘマはないかもしれないけど、左遷先では色恋沙汰に巻き込まれないようにしなきゃ。図書塔なんてゲームに出ていたのかな?
しかし、ハワードという名前は佳織の口から何度か出て来た気がする。

 ディラン・ハワード。

 公爵家の次期跡継ぎでその家は代々王家との親密な関係が続いているのだと言う。しかしなぜかディランは跡継ぎを渋っており、弟に譲ろうとしているらしい。仕事はできるし能力も買われているのだが、なぜか彼は図書塔に居る。噂では厳格過ぎて周りの司書たちが辞めてしまったとか彼ぐらいじゃないと図書塔を維持できる人はいないとか。

 私はノートをパラパラとめくってとあるメモ書きを見つけた。これだわ、ディランが継承を渋っている理由。そして、私がこれから気を付けなければならないこと!

 ディラノアかノアディラ?

 佳織が度々話していた気がするこのBLを匂わすワード。このメモが全てである。つまり、ディランは囚人であるノア・モルガンを監視しているうちに禁断の恋に落ちてしまったのだたぶん。しかし身分や性別の壁があるためにその恋は障壁が多い。司書官を辞めて家を継げば王立図書館は彼を図書塔という事実上左遷席には座らせられないだろう。そうなれば、ノアの傍にはいられないだろう。

 私は気合いを込めて拳を握る。

 未来の上司さん、そして未来の監視対象さん、私はあなたたちの敵ではありません。むしろ、応援します!
 障壁の多い恋であるのなら、必ず実るよう尽くしますので!!どうか1年後には王立図書館に戻れるようにしてください!
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

私をいじめていた女と一緒に異世界召喚されたけど、無能扱いされた私は実は“本物の聖女”でした。 

さら
恋愛
 私――ミリアは、クラスで地味で取り柄もない“都合のいい子”だった。  そんな私が、いじめの張本人だった美少女・沙羅と一緒に異世界へ召喚された。  王城で“聖女”として迎えられたのは彼女だけ。  私は「魔力が測定不能の無能」と言われ、冷たく追い出された。  ――でも、それは間違いだった。  辺境の村で出会った青年リオネルに助けられ、私は初めて自分の力を信じようと決意する。  やがて傷ついた人々を癒やすうちに、私の“無”と呼ばれた力が、誰にも真似できない“神の光”だと判明して――。  王都での再召喚、偽りの聖女との再会、かつての嘲笑が驚嘆に変わる瞬間。  無能と呼ばれた少女が、“本物の聖女”として世界を救う――優しさと再生のざまぁストーリー。  裏切りから始まる癒しの恋。  厳しくも温かい騎士リオネルとの出会いが、ミリアの運命を優しく変えていく。

取り巻き令嬢Aは覚醒いたしましたので

モンドール
恋愛
揶揄うような微笑みで少女を見つめる貴公子。それに向き合うのは、可憐さの中に少々気の強さを秘めた美少女。 貴公子の周りに集う取り巻きの令嬢たち。 ──まるでロマンス小説のワンシーンのようだわ。 ……え、もしかして、わたくしはかませ犬にもなれない取り巻き!? 公爵令嬢アリシアは、初恋の人の取り巻きA卒業を決意した。 (『小説家になろう』にも同一名義で投稿しています。)

ヒロイン気質がゼロなので攻略はお断りします! ~塩対応しているのに何で好感度が上がるんですか?!~

浅海 景
恋愛
幼い頃に誘拐されたことがきっかけで、サーシャは自分の前世を思い出す。その知識によりこの世界が乙女ゲームの舞台で、自分がヒロイン役である可能性に思い至ってしまう。貴族のしきたりなんて面倒くさいし、侍女として働くほうがよっぽど楽しいと思うサーシャは平穏な未来を手にいれるため、攻略対象たちと距離を取ろうとするのだが、彼らは何故かサーシャに興味を持ち関わろうとしてくるのだ。 「これってゲームの強制力?!」 周囲の人間関係をハッピーエンドに収めつつ、普通の生活を手に入れようとするヒロイン気質ゼロのサーシャが奮闘する物語。 ※2024.8.4 おまけ②とおまけ③を追加しました。

巻き込まれて婚約破棄になった私は静かに舞台を去ったはずが、隣国の王太子に溺愛されてしまった!

ユウ
恋愛
伯爵令嬢ジゼルはある騒動に巻き込まれとばっちりに合いそうな下級生を庇って大怪我を負ってしまう。 学園内での大事件となり、体に傷を負った事で婚約者にも捨てられ、学園にも居場所がなくなった事で悲しみに暮れる…。 「好都合だわ。これでお役御免だわ」 ――…はずもなかった。          婚約者は他の女性にお熱で、死にかけた婚約者に一切の関心もなく、学園では派閥争いをしており正直どうでも良かった。 大切なのは兄と伯爵家だった。 何かも失ったジゼルだったが隣国の王太子殿下に何故か好意をもたれてしまい波紋を呼んでしまうのだった。

春の女神は知っている。~モフモフと力を合わせて、ヤンデレメリバフラグ回避してみせます!~

古駒フミ
恋愛
教師との悲恋、そして突然の死をもって転生をした少女、シャーロット・ジェム。凍れる国にて、小さな魔法屋を営んでいた。名門学園からの推薦状が届いたことにより、平和だった日々に暗雲が訪れるように。 今世も彼女に死は訪れる――未来を望むには二つ。 ――ヤンデレからもたらされる愛によって、囲われる未来か。そして。 ――小さくて可愛いモフモフ、女神の眷属と共に乗り越えていくか。 鳥籠に囚われるカナリア色の髪の少女、ヤンデレホイホイの彼女が抗っていく物語。 生きていく物語。 小説家になろう様でも連載中です。

看病しに行ったら、当主の“眠り”になってしまった

星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー全36話⭐︎ 倒れた当主を看病する役目を振られた使用人リィナは、彼の部屋へ通うことになる。 栄養、灯り、静かな時間、話し相手――“眠れる夜”を整えていく。そして、回復していく当主アレクシス。けれど彼は、ある夜そっと手を握り返し、低い声で囁く。 「責任、取って?」 噂が燃える屋敷で、ふたりが守るのは“枠(ルール)”。 手だけ、時間だけ、理由にしない――鍵はリィナが握ったまま。 けれど、守ろうとするほど情は育ち、合図の灯りはいつしか「帰る」ではなく「眠る」へ変わっていく。 看病から始まった優しい夜は、静かな執着に捕まっていく。 それでも、捕獲の鍵は彼ではなく――彼女の手にある。

生まれ変わりも楽じゃない ~生まれ変わっても私はわたし~

こひな
恋愛
市川みのり 31歳。 成り行きで、なぜかバリバリのキャリアウーマンをやっていた私。 彼氏なし・趣味は食べることと読書という仕事以外は引きこもり気味な私が、とばっちりで異世界転生。 貴族令嬢となり、四苦八苦しつつ異世界を生き抜くお話です。 ※いつも読んで頂きありがとうございます。誤字脱字のご指摘ありがとうございます。

我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。

たぬきち25番
恋愛
「ここはどこですか?私はだれですか?」目を覚ましたら全く知らない場所にいました。 しかも以前の私は、かなり我儘令嬢だったそうです。 そんなマイナスからのスタートですが、文句はいえません。 ずっと冷たかった周りの目が、なんだか最近優しい気がします。 というか、甘やかされてません? これって、どういうことでしょう? ※後日談は激甘です。  激甘が苦手な方は後日談以外をお楽しみ下さい。 ※小説家になろう様にも公開させて頂いております。  ただあちらは、マルチエンディングではございませんので、その関係でこちらとは、内容が大幅に異なります。ご了承下さい。  タイトルも違います。タイトル:異世界、訳アリ令嬢の恋の行方は?!~あの時、もしあなたを選ばなければ~

処理中です...