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第一話 謎の鍵が示す先
【二十五】源じぃからの手紙
しおりを挟む『どうやら、みつけられたようだな。おめでとう。
私も嬉しいよ。
まあなんだ。この手紙を読んでいるということは、すでに私は天国に旅立っているということだろうな。そう考えると寂しいものだ。
ああ、つまらない。もう私には出来ることがないのか。
この部屋で手紙を書いていると思い出す。ハルさんと伴治と三人であれやこれやと論議したなと。遼哉は知らないだろうが、この部屋からたくさんの物語が生まれたのだよ。とは言え、その物語は残っていないだろうけどな。
いや、『本の御魂』だけはどこかにあるはずだ。年はとりたくない。つくづくそう思うよ。どこへやったか思い出せないのだから。
おっと、私の思い出話を聞かせるつもりじゃなかった。
遼哉はこの部屋でのことを覚えているかい。小さい頃だからな、忘れてしまっているかもしれないな。その話をしたかったわけでもない。伝えたいことがあったのだよ。
本当だったらこの部屋はずっと封印しておこうと思っていたのだが。どうにも体調がすぐれなくなってからというもの不思議と昔のことばかり考えてしまってな。みんなと会いたくなってしまったのだよ。
それなのに、どうにも踏ん切りがつかなくて時が経ってしまった。
情けないなと私も思う。
生きているうちに遼哉に来てほしいと一言話せばよかったものを。ああ、なぜ私は死んでしまったのだ。ひとりぼっちは寂しくて堪らない。
だから、この部屋に再びハルさんと伴治を呼んでほしいのだよ。死んでもなお、会いたいのだよ。勘違いで仲違いしてしまったあのときのことが悔やまれてならない。本当だったら死ぬ前に三人でもう一度小説を書きたかった。
御魂三人衆とともに。
伴治は確かあのあとどこかへ引っ越してしまってな。おそらく、ハルさんのことも誤解したままいるのではないだろうかと思う。いや、知っているのだろうか。
私が聞いた話だと最近また近所に戻って来たようなのだが、どうにも躊躇ってしまってな。
いやいや、こんな話はどうでもいい。
遼哉、どうか頼む。
ハルさんと伴治を連れて来てくれ。
ハルさんはどうしているだろうか。伴治も気にかかる。
ああ、あのときハルさんに告白しておったらどうなっていただろうか。遼哉、それとなく聞いといてくれないだろうか。なんて、馬鹿なことを言っていると思うだろう。
まあ、なんだ。老いぼれの戯言だと思ってくれて構わない。
ハルさんにそれとなくだぞ、聞いておいてくれな。
伴治には気づかれぬようにな。
とにかく、ハルさんと伴治を連れてきてくれ。そうすれば、きっと寂しさも癒されるだろうから。そして、和解したい。それだけだ。
それと、なんとなくだが御魂三人衆が復活する気がする。
頼んだぞ、遼哉。
高宮源蔵より』
まったく、源じぃは何を言っているのだろう。要は仲直りしたいって話だろう。ハルについては本人がここにいる。聞いちまっているし。
源じぃもこの手紙のことをハルに知られるとは思って書いていないだろう。
あれ、なんだろう。遼哉はふと手紙に違和感を覚えた。どこか変な気がする。いったい何が変なのだろう。
ハルのほうに目を遣ると、潤んだ瞳をしていた。
「本当に、源蔵さんたら馬鹿ですねぇ。そんなこと孫に頼むだなんて」
「そうですね。源じぃは何を考えているんでしょうね」
照れ笑いしているハルはなんだか可愛い。目上の人にそんなこと思うなんて、失礼だろうか。
「源蔵さんには、あとでお墓参りしたときにこっそりと返事をするとしましょうかねぇ」
「そうしてくれるとありがたいです」
遼哉はハルに軽く頭を下げ、苦笑いを浮かべた。
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