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幕間四
本の御魂三人衆の箸休め・よたび
しおりを挟む「やっぱりハッピーエンドはいいわよね」
「火乃花、まだ終わっていないぞ。勝手に終わらすな」
「なによ、第四話は終わりじゃない。樹実渡の言い方だと第五話があるみたいに聞こえるけど。あるの」
「さあな。著者次第だろう」
「知らないんじゃない。それこそ勝手に決めつけているんじゃない。で、著者ってどこにいるの。私が直談判してくる」
「直談判だなんてしなくてもおいらたちの話を聞いているさ。それよりもおいらたちのコーナーだぞ。なにしようか」
「私はやらない。じゃあね」
なんだよ、火乃花の奴。流瀧は来ていないみたいだしどうしようか。楽しみにしてくれている人もいるはずなのに。みんないい加減だな。まあいいか。
「グレン、おいらと二人でこのコーナーやろう」
「ふにゃ」
グレンは尻尾をパタパタさせて変な返事だけして寝ている。グレンもヤル気なしか。
樹実渡は腕組みして唸る。
あっ、そうそう。おいら凛子の生まれ変わりの子の名前を考えみたぞ。
男の子らしいからな。女の子だったら凛子のままでもよかったと思ったけど、男の子だからな。
リオとかリオンとかどうだろう。女の子っぽいか。うーん。凛という文字を使いたいけど、名前って難しい。
まあ、いいか。名前は親がつけるものだろうし。頼まれてもいないのに考えたってしかたがない。
「さっきから何を唸っているんだ」
「あっ、遼哉はダメだ。今は、おいらのコーナーだからな」
「なんだよ、わかったよ。明太子パスタ作ったから食べるかなって思ったのに」
「うっ、そ、それを早く言え。もちろん食べるぞ。待て、遼哉。読者諸君、ちょっと行ってくる」
***
「ふにゃ」
静かになったか。
グレンは徐に起き上がると、当たりを見回して置物のように座りじっと前をみつめた。樹実渡はどこに向かって話していたのだろう。
何も見えない。天井を眺めてみたがやはり変わりはない。
読者とか言う奴らがいるらしいが、どこにいるのかさっぱりわからない。
もしかして、幽霊なのか。いや、それはないか。幽霊だとしても自分には見える。いったい読者ってなんだ。もしかして、美味いものか。
グレンは毛繕いをして香箱座りをした。
まあいいや、何か話せばいいのだろう。読者とやら、今回は特別に話してやろう。
どこにいるのかさっぱりわからないけど、聞いてくれていると信じよう。
「ああ、ああ。喉の調子は良さそうだ。吾輩は猫である。名前はグレン。そんなこと知っているか。一度でいいから言ってみたかっただけだ。それにしても久々に人の言葉を話しているからどうも変な感じがするにゃ」
おっと、猫の鳴き声のくせが抜け切れていない。
「にゃ」なんて言ってしまった。肉球に汗が。
「吾輩って言い方も古いとは思うが、もう長いこと生きている吾輩としてはその言い方がしっくりくる。違った。なんでも生まれ変わっているから勘違いした。確か、猫田彦とかいう奴も。いや違う、眠多猫だったか吾輩と言っていたのは。まあどっちでもいい。人の言葉を使うのも疲れる。やっぱり、話はやめた。もう寝る」
グレンは丸くなり尻尾をパタパタさせた。
なんだ、気まぐれな奴だなと思ったか。それが猫だ。もう飽きた。じゃあな。
なんていうのは冗談だ。
樹実渡が戻って来たから狸寝入りしようかと思っただけだ。猫だけど狸寝入りってなんか変だ。そんなものどうだっていいか。それにしても戻ってくるのが早過ぎだろう。早食い選手権でも出場したら上位狙えそうだな。
ほら、樹実渡ったら口の周りに明太子つけたままだ。しかたがない奴だ。そういうところがまたいいところでもあるけど。
「あっ、そうだ。吾輩がしゃべったのは内緒だぞ。いいにゃ」
***
「あれ、おかしいな。今、誰かの声がした気がしたんだけどな」
樹実渡は見回して首を捻った。
「おい、グレン。ここに誰かいなかったか」
グレンは尻尾をパタパタさせるだけ。
なんだ、冷たい奴だな。美味い明太子パスタを食べられたからまあいいか。小さいことは気にしない。
ということで、今回の本の御魂三人衆の箸休めはお終いだ。なんにもやっていないけどな。
えっ、いいものが見られたって。いったいなんのことだ。
秘密だって。
なんだよ、どいつもこいつも。
「おいらに隠し事する奴らは、読まなくてもいいぞ」
んっ、待て。そんなこと言っていいのか。これを書いている著者に怒られちまう。
「ごめん。今の言葉は撤回する。読んでくれ。じゃあな」
ああ、第五話あるのかな。
ある、絶対にある。そう信じよう。けど、なんだろう。何か嫌な予感がする。気のせいだったらいいけど。身体がムズムズする。虫でも入っちまっただろうか。
「遼哉、明太子パスタのおかわりないのか。もっと食べたいぞ」
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