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寂しがり屋のセレナーデ
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ニコラさんはずっと孤独と戦っていた。
子供の頃からずっと……。
施設の周りの子供たちが次々と幸せになっていくのを、目の当たりにしながら。
「アリシアを運命だと思ったのは、もちろんアルファの本能的な部分が大きいけど、あんな大きな森の奥で……。この子も一人ぼっちなのかな? って、不思議と惹かれたんだ」
ニコラさんは私の髪を撫でながら静かに喋っている。私もそれを黙って聞いていた。
私が番になってくれたら、孤独から離れられる。
だから引き止めようと必死だったと振り返った。
「ごめんね。無理矢理押し付けちゃったよね」
口角だけを上げた。目は寂しそうだった。
私は膝立ちになり、ニコラさんを抱きしめた。自分の胸にニコラさんの顔を埋め、頭を耳ごと撫でた。
「私は、ニコラさんに救われました。あなたが連れ去ってくれたから、私の人生は大きく変わったんです」
ニコラさんが望みを絶望だと言うならば、私は生きることさえも絶望だった。
望んではいけなかった『生きる』と言う希望の、絶望の淵から掬い上げてくれたのは、紛れも無いニコラさんなのだ。
「私たちの望みは、絶望なんかじゃなかった。それを証明してくれたのはニコラさんです」
私から額に口付ける。
本当は、寂しい者同士の穴の埋め合いから始まった恋だった。
“仮”の恋だったのかもしれない。
でも今は確かに“真実”なのだ。
「私たちが番になったのが、偶然だとは思っていません。あの森で出会えたのも、必然だったと信じています」
ニコラさんが私を見上げて微笑んだ。
腰に腕を回すと、ぎゅっと力を込めて引き寄せる。
「バカみたいな夢だと思ってたんだ」
「そんなバカみたいな夢を、私は叶えた!」
「アリシア、君のお蔭だ!」
私は首を横に振る。
私たちが今一緒にいるのは、あの時ニコラさんが行動してくれたからだ。
沢山『好きだ』と伝えてくれたから。
全部、ニコラさんが導いてくれた。
「私がいなくなった時、なぜあの大木まで行ったのです?」
「もしアリシアが、まだ僕への気持ちが残っているなら、必ずあの場所へ来てくれると信じていた」
ずっとあの場所で待っているつもりだったと言った。
一人ぼっちの家には帰りたくないと。
あの森で生き絶えたとしても……。
「君は来てくれた。なぜアリシアはあの大木に行ったの?」
「……ニコラさんと出会った場所だから」
私も、あの場所で生き絶えるまでいるつもりだった。
「似た者同士だね。僕達」
「これも、運命の番だから……なんでしょうか?」
「本当に? それなら、もっと明るい運命がいい!」
気付けば声を出して笑い合っていた。
「大好きだよ」と何度も言いながら、口付けを交わした。
☆:。・:*:・゚' ☆,。・:*:♪・゚'
次回、完結です。
最後までお付き合い頂けると嬉しいです!
よろしくお願いします。
子供の頃からずっと……。
施設の周りの子供たちが次々と幸せになっていくのを、目の当たりにしながら。
「アリシアを運命だと思ったのは、もちろんアルファの本能的な部分が大きいけど、あんな大きな森の奥で……。この子も一人ぼっちなのかな? って、不思議と惹かれたんだ」
ニコラさんは私の髪を撫でながら静かに喋っている。私もそれを黙って聞いていた。
私が番になってくれたら、孤独から離れられる。
だから引き止めようと必死だったと振り返った。
「ごめんね。無理矢理押し付けちゃったよね」
口角だけを上げた。目は寂しそうだった。
私は膝立ちになり、ニコラさんを抱きしめた。自分の胸にニコラさんの顔を埋め、頭を耳ごと撫でた。
「私は、ニコラさんに救われました。あなたが連れ去ってくれたから、私の人生は大きく変わったんです」
ニコラさんが望みを絶望だと言うならば、私は生きることさえも絶望だった。
望んではいけなかった『生きる』と言う希望の、絶望の淵から掬い上げてくれたのは、紛れも無いニコラさんなのだ。
「私たちの望みは、絶望なんかじゃなかった。それを証明してくれたのはニコラさんです」
私から額に口付ける。
本当は、寂しい者同士の穴の埋め合いから始まった恋だった。
“仮”の恋だったのかもしれない。
でも今は確かに“真実”なのだ。
「私たちが番になったのが、偶然だとは思っていません。あの森で出会えたのも、必然だったと信じています」
ニコラさんが私を見上げて微笑んだ。
腰に腕を回すと、ぎゅっと力を込めて引き寄せる。
「バカみたいな夢だと思ってたんだ」
「そんなバカみたいな夢を、私は叶えた!」
「アリシア、君のお蔭だ!」
私は首を横に振る。
私たちが今一緒にいるのは、あの時ニコラさんが行動してくれたからだ。
沢山『好きだ』と伝えてくれたから。
全部、ニコラさんが導いてくれた。
「私がいなくなった時、なぜあの大木まで行ったのです?」
「もしアリシアが、まだ僕への気持ちが残っているなら、必ずあの場所へ来てくれると信じていた」
ずっとあの場所で待っているつもりだったと言った。
一人ぼっちの家には帰りたくないと。
あの森で生き絶えたとしても……。
「君は来てくれた。なぜアリシアはあの大木に行ったの?」
「……ニコラさんと出会った場所だから」
私も、あの場所で生き絶えるまでいるつもりだった。
「似た者同士だね。僕達」
「これも、運命の番だから……なんでしょうか?」
「本当に? それなら、もっと明るい運命がいい!」
気付けば声を出して笑い合っていた。
「大好きだよ」と何度も言いながら、口付けを交わした。
☆:。・:*:・゚' ☆,。・:*:♪・゚'
次回、完結です。
最後までお付き合い頂けると嬉しいです!
よろしくお願いします。
応援ありがとうございます!
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