巨人族の1/3の花嫁〜王様を一妃様と二妃様と転生小人族の僕の三妃で幸せにします〜〈完結〉

クリム

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2章

28 戦いの前に※

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 セリアン国戦闘要塞城は慌ただしくなっていました。じいやさんが来たすぐ後に、伝令の早馬がまたやってきたからです。二日後、ギガス国が再び攻めて来るのです。もう侵攻は始まっています。その数百名。それに対してこの要塞城には五十名程しかいません。そのうち十数名は馬車で本国に輸送する前の獣人さん達です。怪我の軽いものは、治癒魔法陣を使い治しました。

「石の準備を急がせろ」

 怪我人をなるべく犬走りに配置して二人一組にしました。

「小人、どうした?」

「閣下」

 僕がそう呼ぶと銀狼さんはすごく嫌な顔をしました。

「皇子様」

 また嫌な顔をしました。

「セフェム様」

 まだダメですか?

「セフェムさん」

 え、まだ?

「……セフェム」

 やっと破顔し頷きます。どうして僕はセフェムを拒否できないのでしょうか。発情期も終わりました。僕がこの城を出るのは簡単ですが、セリアンとタイタンの両国の問題になりそうです。

 僕は二国に跨る関係性に身を置いたことがありません。せいぜい二回目の人生において敵国の捕虜になって拷問されたくらいです。あの時は部下が奇襲してくれたおかげで、救われました。

「動ける怪我人を犬走りに配置して、二人一組にした理由は、投石具を使うからです。石は落とすのではなく投げます」

 僕は懐に入れていた紐を出しました。僕愛用の投石紐です。僕の拳くらいの石を入れて振りました。少し投げ方にコツはいりますが、誰でも出来ます。僕の投げた石は木を折りました。

「うお!」

「獣人さん達ならもっと威力があります。座って投げてもいいですのでコツを掴んで下さい」

 怪我人さん達は投石の練習です。よろしくお願いしますね。

「セフェム、今までの戦い方は?」

 僕はセフェムに抱っこされながらセフェムに見張り台に案内されました。

「基本的には籠城戦だ。俺には遠目と身体強化の魔法陣が使える。敵を察知し、城壁前で攻防するんだ」

 僕を抱っこしながら遠目と身体強化の魔法陣をさらっと見せてくれましたので、僕もさらっと指を動かしました。ありがとうございます。

「せっかく機動力のある獣人さん達なんですから、奇襲を掛けたらどうですか?追い払い恐怖を植え付け、和平交渉をするのです」

 僕は腰鞄から鉛筆と紙を出しました。セフェムに抱っこされながら触れていたので僕も遠見をしたのです。ここいら一帯の地形を見ることが出来ました。地図を描いていきます。沢沿いの道を歩いて来るだろうギガス軍さんを散らすことが出来れば上出来です。

「沢沿いに獣人さん達を配置して、投石部隊のち攻撃部隊の切り結びと役割を分けます。伝令をそれぞれの部隊に置いて常に連携していきます。出来そうですか?」

 僕はセフェムにだけ話します。あとはセフェムが隊長さん達に指示するかしないかです。僕はセフェムの発情期処理番いですから口を挟める立場ではありません。

「新しい戦い方だな。どうしてこんな考え方を……。まあいい。少し話して来るから、小人は寝室で待っていろ」

 セフェムが寝室の扉を開けてくれて、僕は部屋に残りました。三日目の夜が来ています。明日の朝、怠くなるはずです。王様不足は明日なのです。

「王様……僕の王様……どうして来てくれないのですか」

 言葉に出すと胸が痛くなります。青い瞳を細めて名前を呼んで欲しいです。でも、セフェムに身を委ねた僕は王様に許されるのでしょうか?僕の元いた中世史では、妃の不貞不義は斬首でした。僕は頑張って王様足らんとしている王様になら首を刎ねられてもいいですよ……。

 椅子を窓際に持って行き外の様子を見つめていました。篝火がたかれ戦闘モードですが、ギガス兵さんが来るのはどんなに早くても明日の昼です。早すぎではないですか。疲れてしまいますよ。

「小人、待たせた。夕食にしよう」

 セフェムがサラダと果物をどっさり持ってきます。野菜スープもありました。巨人族よりは小さいですが、皆さん二メートルくらいありますし、セフェムは二メートル以上の獣人さんです。スープ皿が大きくてスプーンも大きいのです。僕はスプーンを諦めてビスケットみたいな堅パンを浸して食べています。

「小人、お前の案が通った。明日、朝には配置するようにした」

「はい」

 僕がテーブルの上でもそもそと食べていると、セフェムがマズルを僕の首に付けて首筋を舐めてきました。

「小人、万が一城壁を突破されたら、じいと元いた森に行かせる。俺はこの城塞と共にする」

 王家に生きる皇子としての矜持は、僕にもあります。

「大丈夫です。負けませんよ」

 かつて砂漠の狐の片腕として戦った僕の二回目の人生を舐めてもらっては困ります。戦術的には稚拙ですが、ギガス軍には初めての奇襲でしょう。奇襲に次ぐ奇襲は大得意ですよ。

 食事を終えてセフェムと湯を浴びてから早めの寝台に上がりました。僕は羽織着がないため裸です。灯りの中のセフェムは銀の毛で覆われた逞しい身体を僕にみせてくれました。獣面から背中にかけては長いもふもふの毛で覆われ、肩から全身は短い銀の毛です。尻尾のふさふさが自慢だそうです。包皮に包まれた陰茎が膨らみ陰嚢も大きいです。

「発情期の余韻だ」

 僕は発情期処理の番いとして、セフェムの滑らかな毛皮包皮を手にして少し下へ引っ張りました。真っ赤な陰茎が出てきて口をつけます。するとすぐに長くなり僕の喉まで来てしまいます。喉を輪のように広げて飲み込み、舌で絡めて舐め扱くと甘酸っぱい精液が溢れました。

「うを……出るっ!」

 セフェムの低い声と共に僕は頭を両手で掴まれます。そのまま頭を動かされました。

「ぐっ……うっ……」

 頭を掴まれて喉奥に射精されてえづいてしまい、鼻水が出ました。イラマチオです。強制口淫です。びっくりしました。しかし、舌に残る味はさらりとしたはちみつレモンです。僕はごくんと嚥下しました。陰茎に残る滴も舐めて、ふう……と息を吐きます。

「身体が軽くなった。大丈夫か?」

「はい、大丈夫です。少しむせてしまいました」

 それにしても王族の精液はどうしてこう甘いんでしょうか?僕も王族ですが、僕の精液は苦いのです。誰か賢者がいるといいのですが。

 セフェムは僕を胸の中に包み込むようにして眠りにつきます。僕も目を閉じました。





 まだ白む早朝、僕はセフェムの身動ぎで起きました。起きられました。身体はそんなに怠くはありません。王様不足がスタートするはずですが、体調はそれ程悪くないのです。身体が少し重いくらいです。これはどういうことでしょう。

「小人、服を着ろ。何か……来る」

 僕は慌てて服を着ました。腰鞄も付けておきます。セフェムも黒いサルエルに革の胸当てを着けて、部屋に置いていた長剣を手にしています。

 食事が運ばれて来る前に、二階にも響き渡る声が聞こえて来ました。

「先ぶれなくまかり通る」

 低い低い声。僕は窓際に椅子を寄せてよじ登りました。

 真下の広場が見えました。すでに戦いの準備が終わって、みなさんが仮眠を取っています。そんな城壁門の石畳に黒い輓馬が、獣人さん達を押し除けて入って来ました。輓馬のペルシュロンですかね、ラオウの黒王号の。でも、黒王号は言いにくいです。ラオウですね、あの黒馬は。ラオウに決めました。

「探し人がある!茶銀の髪の小人だ!」

 金の髪に青い瞳、タイタン王国一大きな体躯……王様です!

「王様っ!」

 僕は思わず窓から飛び降りました。何も考えず、ただ、王様なら抱きとめてくれると思ったからです。

「ターク!」

 王様は輓馬のラオウから降りて、落下してくる僕を軽々と当たり前のように抱きとめてくれました。だから僕は王様の胸をドンと両手で叩いてしまったのです。そのまま太鼓でも叩くように左右の拳でドンドンと叩きます。

「来るのが遅すぎます!どうしてもっと早く迎えに来てくれなかったのですか!僕はもうてっきり見捨てられたのかと思いました!……聞いていますか!王様」

 王様は僕の猫パンチみたいに叩きを続ける僕を、見下ろしてにこにこしています。

「タークの可愛いお小言は心地よい。昨日昼、ロキの昏睡が解けたのだ。それでターク居場所を知った。そなたが湖に落ちたと思い、ずっと探させていたのだ。ロキが獣人とやりあったと聞き、こちらに来るのに内政省を説得出来ず見切りをつけ、ソニンに国を任せて単身で来た」

 僕が湖に行くことを知っていたのは、通りすがりの農婦さんです。王様はそれを聞いて湖周りを探してくれていたのですね。ロキの昏睡が長かったから探しあぐねていたとは……解毒もしたのにもう少し効き目が強くなければなりません。

「小人、そいつは誰だ」

 セフェムが二階からひょいという感じで飛び降りて、腰に手を掛けて訪ねました。王様は僕を左腕に乗せて抱えています。

「余はタイタン国王ガリウスと申す。小人族のタークはタイタン国第三妃である。保護をしてもらい助かった。礼を言う」

 セフェムは鼻白み、王様に対して無礼な物言いをします。

「タイタン……?俺は前線城壁要塞城主セリアン国第三皇子セフェム。礼には及ばん、小人は俺の発情期処理用の番いだ。俺の発情期は年一不定期なので、手元に置いておきたい。小人を掴むその手を離せ」

 王様は僕を見下ろしました。青い透ける瞳が丸くなりました。

「タークが第三皇子の発情期の処理をしたというのか?」

 僕は頷きました。王様に嘘はつけません。

「不快だったり痛かったり辛くはなかったか?」

 僕は今度は首を横に振りました。不貞と罵られたくはありませんが、正直に言いました。

「気持ち……よかったです」

 消えてなくなりたいくらいです。見ないでください。

「ふむ……。では、セフェムとやら。発情期が来たらタイタン国を訪ねるがよい。後宮でタークがその方の発情期処理をするのを認める」

 王様は僕を連れてラオウの手綱を引き寄せました。

「はあっ?どうしてそうなるんだ!所詮三妃だろうが!」

「発情期処理用の番いならば、発情期のみタークが必要だろう?それに『所詮三妃』とは聞き捨てならぬな。ガルド神における数字『三』は、『希望』の数字の意味合いを持つ。タークは我が国の第三妃、我が国の大切な三つの宝のうちの一つだ。セリアン国には置いてはおけぬ」

 成人したての王様の王様然とした姿に、セフェムが動揺しています。セフェムは成人して少し経ているはずですが、立場が違うのです。責任ある立場は人を大きくします。

「閣下、ならびにタイタン王に申し上げます」

 セフェムのじいやさんがセフェムと王様の間に立ちました。

「なんだ、じい」

 セフェムがじいやさんを一瞥します。

「閣下は六月の小人様を発情期処理用と申しておりましたが、獣人にとって番いとは刻印による契約の上、唯一無二のお相手。さらに閣下の場合、六月の小人様はセリアン国第三皇子のご信託の番い。つまり、第三皇子妃となります」

 僕は王様の妃であり、セフェムの妃になってしまったのですか?

「すでに宿り木には閣下と六月の小人様の実が実りましてございます故に、タイタン国へ戻る前にセリアン国に一度渡り、王と話し合いを持たれるのがよろしいかと」

「むう……ターク、これが番いの刻印か」

 王様は僕の首筋を見下ろしました。見下ろせば服の立ち襟から見える噛み傷です。

「処理中に無意識って感じで噛まれました」

「まして今、我がセリアン国はギガス国との戦闘状態です。今しばらく、お留まりください」

 平に平にとじいやさんが頭を下げて、王様は引綱を近くの獣人さんに手渡しました。
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