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最後の願い
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陽菜が現実に戻ったことを、見届け樹は違えた道を歩む
どこまでも暗く、永遠に続くような道
そこに光が差し込むことはない
樹が辿り着いた場所は、見知っている場所
悪魔界なのだから
見上げると瘴気に満ちたような、重苦しい空気が漂う
それを懐かしい、と思う自分にも笑えてくる
強い風が吹き、目を開けていられなくて瞑る
立っているのもやっとの風
少しすると風が止み、目を開けると先ほどいた景色と変わっていた
謁見の間と呼べる場に、玉座に座っている人物がいた
その人物は、悪魔の王 サタン
樹と目が合うと、足を組み、玉座の肘掛けに肘をつき、威圧感あふれる態度であった
喉が鳴る
恐怖で足が竦む、だが瞳はサタンを捉えて視線を外すことはなかった
『やはり、お前は面白い
あの時もそうだったが、俺の前で
怖気付き逃げ出す奴もいたのに
お前は逃げずに、視線を外すことも
ないのだな』
サタンは、樹に対して好意的だ
樹の存在自体に惹かれているのだろう
それほどに、樹の魂は輝きを増している
『人の目を見て話せと、言われてきました
から
目を逸らすことは、相手には失礼です』
『ほう、俺を『人』と呼べるのか?
人の姿形をしただけの、非道の悪魔の王
の俺に?』
『たとえ、人ではなかったとしても
言葉を交わし合えることができるのだから
俺にとっては、人です』
言葉は、力がある
言霊とも呼び、それは人に伝えることで
人から人へと、繋いでいくことができる
大切なもの
それは人外にも同じことだと
樹は思っている
『そうか、お前のような人間は初めてだ
俺が手放したくない、と思えるほどにな』
『それよりも、本題に入ってください
あまり、時間は残されていないの
でしょう?』
せっかちな奴、と呟きながらもサタンは本題には入る
『俺はお前の願いを叶えた
だが、お前の魂の質と、願いの代償は
理に合わなく弾かれてしまった
だが、願いの代償を変えることで
もう一度お前を人として生き返り
あの娘と生を全うすることができる』
どうする?と言うように、サタンは不敵な笑みを浮かべる
以前の俺なら、提示された代償の代わりを言われても受け入れることはなかっただろう
陽菜の隣にいるべきなのは、自分ではないと
そうすることで、目の前のことから目を逸らしていた
けれど、陽菜は俺を望んでいる
それだけで、答えはもう決まっていた
『ああ、それでいい
俺は貴方に何を差し出せばいい
サタン』
その揺るぎない眼の奥に宿るのは、これから陽菜と歩み未来を見据えているようだった
どこまでも暗く、永遠に続くような道
そこに光が差し込むことはない
樹が辿り着いた場所は、見知っている場所
悪魔界なのだから
見上げると瘴気に満ちたような、重苦しい空気が漂う
それを懐かしい、と思う自分にも笑えてくる
強い風が吹き、目を開けていられなくて瞑る
立っているのもやっとの風
少しすると風が止み、目を開けると先ほどいた景色と変わっていた
謁見の間と呼べる場に、玉座に座っている人物がいた
その人物は、悪魔の王 サタン
樹と目が合うと、足を組み、玉座の肘掛けに肘をつき、威圧感あふれる態度であった
喉が鳴る
恐怖で足が竦む、だが瞳はサタンを捉えて視線を外すことはなかった
『やはり、お前は面白い
あの時もそうだったが、俺の前で
怖気付き逃げ出す奴もいたのに
お前は逃げずに、視線を外すことも
ないのだな』
サタンは、樹に対して好意的だ
樹の存在自体に惹かれているのだろう
それほどに、樹の魂は輝きを増している
『人の目を見て話せと、言われてきました
から
目を逸らすことは、相手には失礼です』
『ほう、俺を『人』と呼べるのか?
人の姿形をしただけの、非道の悪魔の王
の俺に?』
『たとえ、人ではなかったとしても
言葉を交わし合えることができるのだから
俺にとっては、人です』
言葉は、力がある
言霊とも呼び、それは人に伝えることで
人から人へと、繋いでいくことができる
大切なもの
それは人外にも同じことだと
樹は思っている
『そうか、お前のような人間は初めてだ
俺が手放したくない、と思えるほどにな』
『それよりも、本題に入ってください
あまり、時間は残されていないの
でしょう?』
せっかちな奴、と呟きながらもサタンは本題には入る
『俺はお前の願いを叶えた
だが、お前の魂の質と、願いの代償は
理に合わなく弾かれてしまった
だが、願いの代償を変えることで
もう一度お前を人として生き返り
あの娘と生を全うすることができる』
どうする?と言うように、サタンは不敵な笑みを浮かべる
以前の俺なら、提示された代償の代わりを言われても受け入れることはなかっただろう
陽菜の隣にいるべきなのは、自分ではないと
そうすることで、目の前のことから目を逸らしていた
けれど、陽菜は俺を望んでいる
それだけで、答えはもう決まっていた
『ああ、それでいい
俺は貴方に何を差し出せばいい
サタン』
その揺るぎない眼の奥に宿るのは、これから陽菜と歩み未来を見据えているようだった
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