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月からの手紙
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陽菜が再び目を開けると、光景が変わっていた
樹の葬儀場ではなく、自分の家の寝室
時間が経ったのかと思い、日にちを見るが
変わってはいなかった
日にちと、時間も変わらず
場所だけが変わっている異様な光景
両親は在宅してるかと思い、リビングへ向かうと置き手紙がしてあった
その内容に驚きが隠せず、手が震え置き手紙がはらり、と床に落ちる
『陽菜へ、黙っていてごめんなさい
樹君の葬儀へ行ってきます』
膝からゆっくり力が抜けるように、その場に佇むしかなかった
彼は、生きているのに
陽菜のそばにいると、約束をしてくれたのに
あの時、離れるべきではなかったと
思うしかなかった
『嘘つき…』
言葉を口にすると、感情も溢れるようだったが歯を食いしばり堪えた
泣いてしまえば楽になるのに、と自分で思う
けれど泣いた後の喪失感が、酷く苦しいことを知ってるから
今だけは泣きたくなかった
両親は帰ってくると心配そうに、私に寄り添った
きっと酷い顔をしていたから
泣きたくて、我慢して堪えていた
誰か樹の葬儀を行われたことを、嘘だと言って欲しかった
真実は、目の前に見えているのに
今の私には、逸らすことしかできなかった
そんな真夜中、微かな音がした
目を開けると、枕元に一通の手紙が置いてあった
裏返してみると、陽菜へと記されてあった
急いで封を開け、手紙を開く
簡潔に書いてあった
『迎えにいくから、信じて待ってて』
それは宛名など見なくても分かる
樹の筆跡、陽菜に当てられた言葉
一言書いてあるだけでも、陽菜にはその文字に込められている思いが胸に染み渡るように響いた
彼は、生きていると
嬉しくて手紙を抱きしめ、微笑んだ
静寂な夜に、月明かりが窓から差し込む
もしかしたら、この手紙を届けてくれたのは
月に住んでいる神様なのかもしれないと
『信じて待ってるよ、樹君…』
安堵して私はそのまま眠りについた
そして、月日は流れ3年が経った
陽菜は18歳になった
無事に今日という日、卒業式を迎えることができた
友達もたくさん出来て、充実した高校生活が送れた
その中で、陽菜に告白してくる男子もいたが
断り続けた
友達も、付き合っちゃえばいいのに、と言うが私は首を振る
彼が迎えにきてくるのを待ってる、と
言ってしまえば様々な経緯を話さなくてはいけない
現実味が外れた話だから、皆信じてくれることはないだろう
だから、自分の胸の内に隠している
いつか、迎えに来ることを信じて
そんな時だった
校門の入り口の方で黄色い歓声が上がる
陽菜も教室の窓から校門の方を覗いてみる
すると、そこにいるのは一人の青年がいた
漆黒の髪、それだけで陽菜は校門へと駆け出した
友人達が陽菜の行動に驚き、陽菜の名を呼ぶ
けれど、そんなことも構ってる余裕はなかった
階段を駆け降りる時間、靴を履き替える時間さえも鬱陶しく思えるほどに
彼に会いたかったから
樹の葬儀場ではなく、自分の家の寝室
時間が経ったのかと思い、日にちを見るが
変わってはいなかった
日にちと、時間も変わらず
場所だけが変わっている異様な光景
両親は在宅してるかと思い、リビングへ向かうと置き手紙がしてあった
その内容に驚きが隠せず、手が震え置き手紙がはらり、と床に落ちる
『陽菜へ、黙っていてごめんなさい
樹君の葬儀へ行ってきます』
膝からゆっくり力が抜けるように、その場に佇むしかなかった
彼は、生きているのに
陽菜のそばにいると、約束をしてくれたのに
あの時、離れるべきではなかったと
思うしかなかった
『嘘つき…』
言葉を口にすると、感情も溢れるようだったが歯を食いしばり堪えた
泣いてしまえば楽になるのに、と自分で思う
けれど泣いた後の喪失感が、酷く苦しいことを知ってるから
今だけは泣きたくなかった
両親は帰ってくると心配そうに、私に寄り添った
きっと酷い顔をしていたから
泣きたくて、我慢して堪えていた
誰か樹の葬儀を行われたことを、嘘だと言って欲しかった
真実は、目の前に見えているのに
今の私には、逸らすことしかできなかった
そんな真夜中、微かな音がした
目を開けると、枕元に一通の手紙が置いてあった
裏返してみると、陽菜へと記されてあった
急いで封を開け、手紙を開く
簡潔に書いてあった
『迎えにいくから、信じて待ってて』
それは宛名など見なくても分かる
樹の筆跡、陽菜に当てられた言葉
一言書いてあるだけでも、陽菜にはその文字に込められている思いが胸に染み渡るように響いた
彼は、生きていると
嬉しくて手紙を抱きしめ、微笑んだ
静寂な夜に、月明かりが窓から差し込む
もしかしたら、この手紙を届けてくれたのは
月に住んでいる神様なのかもしれないと
『信じて待ってるよ、樹君…』
安堵して私はそのまま眠りについた
そして、月日は流れ3年が経った
陽菜は18歳になった
無事に今日という日、卒業式を迎えることができた
友達もたくさん出来て、充実した高校生活が送れた
その中で、陽菜に告白してくる男子もいたが
断り続けた
友達も、付き合っちゃえばいいのに、と言うが私は首を振る
彼が迎えにきてくるのを待ってる、と
言ってしまえば様々な経緯を話さなくてはいけない
現実味が外れた話だから、皆信じてくれることはないだろう
だから、自分の胸の内に隠している
いつか、迎えに来ることを信じて
そんな時だった
校門の入り口の方で黄色い歓声が上がる
陽菜も教室の窓から校門の方を覗いてみる
すると、そこにいるのは一人の青年がいた
漆黒の髪、それだけで陽菜は校門へと駆け出した
友人達が陽菜の行動に驚き、陽菜の名を呼ぶ
けれど、そんなことも構ってる余裕はなかった
階段を駆け降りる時間、靴を履き替える時間さえも鬱陶しく思えるほどに
彼に会いたかったから
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