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脱走成功_半分
しおりを挟む「はぁ、はぁ、はぁ」
レストランを出ると、ゆく当てもないまま
人通りの多い大通りをさまよっていく。
心臓が早鐘のようにどきどきと脈打ち、
流れる汗を止めることができない。
まっすぐ歩こうとしても、不自然にふらふらと
重心が揺れて、倒れそうになる。
そのたびにすれ違う人にぶつかり、
迷惑そうな顔をされた。
おそらく周りからは顔が紅潮して、息荒く歩いている
病人に見えるだろうな。
「…はぁ、あちぃ」
シャツの裾で汗をぬぐう。昼下がり炎天下のもと、
さまよっているわけだが、暑いのは太陽のせいではない。
「…うっ、くぅ、」
ふとした拍子に尻の中に入っているエネマグラがぐぃっと動き、
内部のしこりを刺激した。
腰から頭の先まで、びりっと体に電流が走り、
条件反射で声を上げて、倒れそうになった。
「…むぐっぅ!」
自分で自分の口を押えて、しばらく立ち止まる。
そして、ゆっくりと壁伝いに移動した。
このままでは人が行きかう道端でうずくまりそうになったので、慌てて近くの公園に行くと
芝生に横向きに倒れた。
「う、うぅ」
だが、痛いほど張り詰めたペニスも貞操帯によって戒められているため、
開放もできないまま、押さえつけ締め付けられる痛みだけがじわじわと増していく。
「…ダメだ。このままじゃ、後ろのこれを取らないと、満足に歩けねぇ」
ゼイゼイと吐いた息とともに、汗がぽたぽたと芝生に落ちる。
疲労と下半身の異物による責め苦のせいでもう一歩も動きたくないが、
動かなければいけない。
早く、早く、動かなければ。
俺は手の中にあったプラスチック製の小さな電子機器をぐっと握った。
つるりとした卵を思わせる表面のそれは『エネマグラバイブ』のスイッチだ。
「あいつは…、追ってきてないな」
あいつ、…リンクは俺を連れてきたレストランで、
運悪く(俺にとっては運よく)職場の上司に捕まった。
そして上司にごちゃごちゃと文句を言われて、リンクがイラついている隙をついて
俺はあいつのポケットから、このバイブのスイッチを抜き取った。
そのまま俺はレストランを出て、うろうろと知らない道を歩き回り、
今、この公園の芝生の上に横になっている。
つまり、俺はやっとあいつ(リンク)の支配から自由になれた。
しかし、それもまだ不完全だ。
完全にあいつから自由になるには尻の中を責め立てるエネマグラを取らないといけない。
さらに、前を戒める鍵付きの貞操帯を何とか外せば、それで任務完了。
晴れて自由の身だ。
しかし、ペニスが痛い。
初めて貞操帯なんてつけた(強制的に)が本当につらいな。
こんなぎちぎちに締め付けられて、後々俺の生殖機能に障害が残ったらどうしてくれるんだ。
そこまで考えて、俺は大きくため息をついた。
…あいつならその状況を手をたたいて喜びそうだ。
そうだった。
リンク、あいつは救いようのない、クズでサイコパスでサディストだ。
カ●ジとかのゲームだったら、人の苦しむ姿を特等席に座って、
大声で笑いながら見るだろう。そんな奴だ。
「…後ろの、…はぁ、早く、早くとらないと、はぁ…」
本当は今すぐにでもこの尻に入れられたバイブを抜き取りたい。
少し身じろぎするだけでも、中のバイブが動かないように慎重に
動かなくてはならず、通常の倍以上疲れるし、ふとした拍子に
泣き所に当たって、人前で何度も叫び声を上げそうになった。
早く、少しでも早くこれを取りたい。
そしてゴミ箱に突っ込んでもう二度とお目にかかりたくない。
しかし、今の状況はそうもいかなかった。
人がいないなら一か八かこのあたりの草陰でとってもよかったが、
休日の公園で、家族連れや、カップルや、学生やらが過ごしている。
俺も人並みに羞恥心は持っているし、また目撃したほうも気の毒だろう。
それに、万が一通報されでもしたらかなわない。
ゆっくり体を起こしてから、周りを見回す。
…くそっ、NYはトイレがねぇ。
日本だとつい当たり前になりがちだが、公衆トイレがどこにでもあり、
誰でも使うことができるというのがどれだけ恵まれていたかが身に染みて
分かった。
スマホは持っていない。
トイレを探して街を歩き回る余裕もない。
そんなことをすれば、おそらく途中で倒れるか、公衆の面前で失態を
しでかしてしまいそうだ。
だが、ここはレストランから数100メートルほどしか離れていないはずだ。
うかうかしていたら、リンクが追ってくるかもしれない。
「くそっ、どうすれば…」
「Hi!ずっと見てたんだけど、あんた、大丈夫か?」
急に親し気な英語で話しかけられ、顔を上げると
彫が深い浅黒い肌の男性がこちらを覗き込んでいた。
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ちゃんと逃げれるか心配・・・!
でもその後に捕まるのは絶対なので、楽しみにしときます!
良ければ知らない男に犯されて、お仕置きされるのがいいなぁ。
がんばってください!!!
すごくいいですね!
エッチシーン最高!
ペット設定もいい感じ
楽しませていただきありがとうございました、
続きが読みたくなる素敵な作品でした
ありがとうございます。
コメントすごくうれしいです。