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19話 王位継承権 その2

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 アレンとリオナ、それからシャルロッテの3人はその後、ヨハン国王陛下とリズリット王妃への謁見を試みた。通常であれば簡単に通る申請ではないのだが、今回ばかりは事情が事情のため、特別に認められる形となった。


 護衛の兵士や参謀は席を外した玉座の間にて、アレンは父を問い詰めた。

「父上……私がなにを言いたいかは、聡明なあなたであればわかっていただけますね?」

「うむ……大体はな」


 アレンの傍らに立っているのは、リオナと……シャルロッテだ。自らの息子が何を聞きたいのかは、ヨハンには理解出来ていた。「聡明な」とアレンが付け加えたのは、彼ありのフォローであった。

「隠し子の件……出来れば、私にも教えておいてほしかったです」

「済まない……お前は今後、ラウコーン王国の最高権力者になる身。余計な心労は悪いと思ってな」

 ヨハンなりの息子を思う気持ちの表れと言えるだろうか。隣に立つリズリットも頷いている辺り、気持ちは同じようだ。しかし、アレンは納得していない。その気持ちを代弁したのは、婚約者であるリオナだ。


「差し出がましい発言をお許しください、陛下。アレン様の妹君の存在は、余計な心労に該当するとお思いでしょうか?」


「……!」


 リオナの的を射た言葉。ヨハンとリズリットの二人は目から鱗が落ちたように、驚きを見せていた。同時にヨハンは、自らの娘を前になんと失礼な発言をしたのかと思い至る。


「いや……そうだな、済まなかった。前言を撤回させてほしい。シャルロッテ、申し訳ない」

「いえ……お父様。お気になさらないでください」

「ああ……」


「お父様」というシャルロッテの発言に血のつながりのないリズリットは微妙な顔になっている。正妻である彼女からすれば、シャルロッテは差して重要な存在ではない。それどころか、愛する夫の浮気の証拠でもあるのだ。喜べない感情は仕方ないと言えるのかもしれない。


 この問題の解決には時間を要するだろう。話の本筋は、いつの間にか王位継承権争いへと移行していた。


「父上は、国王の座を退位されるおつもりなのですか?」

「ああ……これ以上、民衆に嘘を付くのは忍びない。時期を見てシャルロッテの存在を公表、合わせて時期国王候補のお前たちに、私の席を譲るつもりだ」

 アレンは父の言葉を聞き、意志が固いことを確認した。最早、王位継承権争いは避けては通れないだろう。その場合に、候補に挙がるのは第一王子であるアレンと、第二王子であるグレンになるだろうか。


「本来であれば、アレンの勝ちは揺るがないはず……でも、あの子……グレンの余裕の態度は非常に気になるところではあります。あの子は甘やかされて育ったというよりは、別の方向でアレンにも負けない成長をしていると言えるから……」

 リズリットは、グレンの計略? のようなものを非常に警戒していた。彼は夜の街など、非合法な成長に関してはアレンをも圧倒していると言える。それだけに、親の心配は大きいものとなっていたのだ。
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