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2 意を決する時
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「……よしっ、やってやるわーーーーっ!!」
私は決意して、両手を拳にして力いっぱい叫んだのだった。
さて、そうと決まればやることが山程ある。私は凛の記憶をフル回転させてシャワーを浴びて部屋着に着替えると、冷蔵庫の中身を適当に出して簡単に調理をした。ひとりで湯浴みをして(蛇口をひねるだけでお湯が出る事に驚いたが)ひとりで着替えてさらに料理までするなんて、公爵令嬢の私では逆立ちしても出来ない事だが凛の記憶があればなんでも出来てしまうのだ。体が覚えているという事なのだろうか……やはり凛はすごい。
「でも、服がダサいわ!」
半熟の目玉焼きとタコさんウィンナーを口に頬張り、私は凛のクローゼットから引っ張り出して着た服の裾をつまんだ。
シンプルと言えば聞こえはいいが、なんの飾りもない淡いベージュのスウェットとかいう服はとてもではないが私の好みではない。と言うか、凛のクローゼットには年頃の女子とは思えないほど服がなかったのだ。
「Tシャツ数枚に、このスウェットとジーンズ……制服以外にスカートすらないなんて……。それに、さすがに宝石なんて言わないけどアクセサリーのひとつもないなんて年頃の女子として見過ごせないわ!」
凛の記憶を共有しているからこの世界の常識はだいたいわかっているが、仮にもあんな最低男とは言え恋人がいたはずの凛がこんなにも地味なのはどうしたものかと首をひねったのだが……うん、なるほどそうだったのか。と納得するしかない。
凛が無意識に隠していた記憶をこじ開けて読み取ると、付き合い始めて最初にオシャレしようとした時にその彼氏に反対されていたようだ。「お前なんかが着飾ってもみっともないだけ。俺に恥をかかせるつもりか。そんな格好をして男に媚びようとするなんて最低な女だ」……とかねぇ。たかがピンクのワンピースになんて事を言うのか。
その他、付き合いたての恋人が発したとは思えないような発言ばかり浴びせられていたようなのだ。これはあれだ……凛の記憶の情報から照らし合わせるとーーーーそう!モラハラってやつだわ!(意味はよくわからないけどなんとなく嫌な感じは察した)凛が涙目で見たからだろう、ほのかにぼやけたその時の彼氏の顔はニヤニヤと下卑た笑みを浮かべていたように見えた。
純粋な凛は素直過ぎて“自分が悪かったのだ”としか思っていない。それ以来、凛は余計にオシャレとか女の子らしい事を遠ざけるようになっていった。さらにはその彼氏の代わりに宿題をしたり、掃除当番をさせられたり……第三者の視点から見れば、都合のいいように使われていただけである。その証拠に凛はまともなデートすらしたことがないのだ。まぁ、体を求められていなかったのは不幸中の幸いだろうか。ファーストキスは奪われてしまったようだが、クズ男がそれ以上を凛に望むことはなかった。
……たぶんだけれど、凛以外に女がいただろう事は推測出来る。だって、あの殿下にそっくりなんだもの。合意的に肉体の欲求を満たしてくれるお気に入りの者がちゃんと別にいる場合はリスクを犯してまではこちらには求めてこない。だから別の……そう、暴力とか精神的苦痛とか……そんなものをこちらに要求してくるのだ。
昔は、それがわかった途端に殺されてしまったけれど。
つまりこの最低クズ男は、“誰かを虐げたい”という自分勝手な欲求を満たすために凛にモラハラをしていたわけか……。
あぁあぁぁぁ……!む、か、つ、く!!
「……ぷはーっ!」
冷蔵庫から出してきた牛乳をパックから一気飲みする。お行儀は悪いだろうがどうせ凛の両親は家にいないし、昔の私なら絶対に出来なかったであろうことをするこの高揚感は何よりも楽しかった。
そう、やることは決まっている。私は新たに決意を固めた。
この人生を、全て覆してやる。と。
「とりあえず、買物に行こうかしら!」
私は決意して、両手を拳にして力いっぱい叫んだのだった。
さて、そうと決まればやることが山程ある。私は凛の記憶をフル回転させてシャワーを浴びて部屋着に着替えると、冷蔵庫の中身を適当に出して簡単に調理をした。ひとりで湯浴みをして(蛇口をひねるだけでお湯が出る事に驚いたが)ひとりで着替えてさらに料理までするなんて、公爵令嬢の私では逆立ちしても出来ない事だが凛の記憶があればなんでも出来てしまうのだ。体が覚えているという事なのだろうか……やはり凛はすごい。
「でも、服がダサいわ!」
半熟の目玉焼きとタコさんウィンナーを口に頬張り、私は凛のクローゼットから引っ張り出して着た服の裾をつまんだ。
シンプルと言えば聞こえはいいが、なんの飾りもない淡いベージュのスウェットとかいう服はとてもではないが私の好みではない。と言うか、凛のクローゼットには年頃の女子とは思えないほど服がなかったのだ。
「Tシャツ数枚に、このスウェットとジーンズ……制服以外にスカートすらないなんて……。それに、さすがに宝石なんて言わないけどアクセサリーのひとつもないなんて年頃の女子として見過ごせないわ!」
凛の記憶を共有しているからこの世界の常識はだいたいわかっているが、仮にもあんな最低男とは言え恋人がいたはずの凛がこんなにも地味なのはどうしたものかと首をひねったのだが……うん、なるほどそうだったのか。と納得するしかない。
凛が無意識に隠していた記憶をこじ開けて読み取ると、付き合い始めて最初にオシャレしようとした時にその彼氏に反対されていたようだ。「お前なんかが着飾ってもみっともないだけ。俺に恥をかかせるつもりか。そんな格好をして男に媚びようとするなんて最低な女だ」……とかねぇ。たかがピンクのワンピースになんて事を言うのか。
その他、付き合いたての恋人が発したとは思えないような発言ばかり浴びせられていたようなのだ。これはあれだ……凛の記憶の情報から照らし合わせるとーーーーそう!モラハラってやつだわ!(意味はよくわからないけどなんとなく嫌な感じは察した)凛が涙目で見たからだろう、ほのかにぼやけたその時の彼氏の顔はニヤニヤと下卑た笑みを浮かべていたように見えた。
純粋な凛は素直過ぎて“自分が悪かったのだ”としか思っていない。それ以来、凛は余計にオシャレとか女の子らしい事を遠ざけるようになっていった。さらにはその彼氏の代わりに宿題をしたり、掃除当番をさせられたり……第三者の視点から見れば、都合のいいように使われていただけである。その証拠に凛はまともなデートすらしたことがないのだ。まぁ、体を求められていなかったのは不幸中の幸いだろうか。ファーストキスは奪われてしまったようだが、クズ男がそれ以上を凛に望むことはなかった。
……たぶんだけれど、凛以外に女がいただろう事は推測出来る。だって、あの殿下にそっくりなんだもの。合意的に肉体の欲求を満たしてくれるお気に入りの者がちゃんと別にいる場合はリスクを犯してまではこちらには求めてこない。だから別の……そう、暴力とか精神的苦痛とか……そんなものをこちらに要求してくるのだ。
昔は、それがわかった途端に殺されてしまったけれど。
つまりこの最低クズ男は、“誰かを虐げたい”という自分勝手な欲求を満たすために凛にモラハラをしていたわけか……。
あぁあぁぁぁ……!む、か、つ、く!!
「……ぷはーっ!」
冷蔵庫から出してきた牛乳をパックから一気飲みする。お行儀は悪いだろうがどうせ凛の両親は家にいないし、昔の私なら絶対に出来なかったであろうことをするこの高揚感は何よりも楽しかった。
そう、やることは決まっている。私は新たに決意を固めた。
この人生を、全て覆してやる。と。
「とりあえず、買物に行こうかしら!」
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