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前編 ※
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「きゃっ、あぁあ……っ!」
それは自分の悲鳴だった。ぱくりと大きく口を開けたまま、目を見開くと、目の前には。
「……えっ……バルドウィン侯爵……さま……?」
ベッドサイドの灯りに照らされ、自分の上の美しく獰猛な赤い瞳と目が合う。
「ヴィアンカ……『目が覚めた』のか……?」
「……あっ?!」
その瞬間、ぐいっと腰を押されて初めて気が付いた。
わ
私
服を着てないわ?!
「やあぁ……っ!」
「あっ、だめだ今、締めては……!」
「う、うそ、やだ、あっ、あぁん!!」
更に!あちらも裸のバルドウィン侯爵様に!!貫かれています!?!?!激しい抽送で揺さぶられ、一瞬で何も考えることもできないほど、内側が堪えきれない快感でいっぱいになる。
「ヴィアンカ、達って……!」
「や、ああ……っ」
その声と同時に中のものを締め上げ、目の前が真っ白に弾けた。
「あ……ぁああーっ!」
「……っ、く、はあ、あぁ……」
視界はぐるぐる回るのに急激に頭のもやが晴れ、明晰になっていく。今、私……何をしているの?
「ヴィアンカ……この責任は、……はぁ」
「待っ……あの……侯爵、さま?これは……」
「責任はとるから、このまま俺も……っ!」
「え?」
私の中にある杭が、その熱でさらにむくむくと膨らんでいるのを感じてしまう。
「いいか?」
「……選択肢、は」
「肯定で、頼む」
疼く胎の中をぐるん、と熱棒で中をかき回されれば、もうなす術はない。
「いやぁ、あっ!」
「ああ、ヴィアンカ……君の中が私に絡みつく……」
「あ、気持ち、い……だめ……で、」
「君はそのまま……感じていて」
「あっ、やめ……ー!」
やめてはもらえそうにない。自分も気持ちよさの波に呑まれて、もう溺れそうだ。唇を深く口付けに塞がれながら、今はどこまでも受け入れるしかない事を悟った……。
***
次に目が覚めると、すっかり室内が明るい。朝だ。そして……見知らぬ部屋だった。自分のものではない、豪奢なベッドに寝ているのはすぐにわかった。
「……い、いたた……?」
少し身体を動かすと、あちこちが軋む様に痛む。
「ヴィアンカ、起きたのか?」
「……っ、バ、バルドウィン侯爵様……?!」
横からの声に首を回す。窓を背に朝日に照らされている美しい男性を見て、目をちかちかと瞬かせた。この流れ、2度目だわ?
「すまない、かなり無理をさせてしまった……身体は痛むか?」
「ええと……」
壊れ物を扱う様にそっと頬に手を添え、心配そうな赤い瞳に顔を覗きこまれる。
白金の髪が陽の光に透けて、とても美しい。こんな方ですもの、女誑しと揶揄されての数々の浮名はむしろ勲章ね。それに、とても30歳には見えない……
……では、なくて。
身体をもう一度動かしてみると、さっきよりは普通に動く事に気づいた。眠る間に固まっていたものが解れたようだった。腰はまだ少し、重だるいけれど。
「だ、大丈夫みたい、です……」
「そうか。どこか辛いところがあったらすぐに言ってくれ。」
「はい。……あの、侯爵様」
「ヴィアンカ、どうか……昨夜のように、俺の名前を呼んで」
え?私、侯爵様を名前で……?
侯爵様が懇願する表情で私の頬をすり、と撫で摩る。その手が耳朶を柔らかく摘むと、頭の中で昨夜の記憶がチカチカと断片的に蘇った。
『あぁ、アルフレート、もっと……!』
『ヴィアンカ、いけない子だ……』
『あ、そこ、舐めちゃ……』
『こう?ああ君は……こんなところまで、熱くて……』
『や、アル……あぁ……!』
私、彼を愛称で呼んでた……?うそ。
「ヴィアンカ?大丈夫か?」
「……侯爵、さま。あの、……なんだか、昨夜からの記憶があやふや、で……。私はどうしてここに……?」
「ああ、そうか。……俺と何をしたかも、全て忘れてしまった?」
「いえ!それは……あの、なんとなく……!!」
顔が真っ赤に、言葉がしどろもどろになる。甘い濃密な行為の事を、身体の軋みと共にすっかり思い出してしまった。顔を隠すように、上掛けを引き寄せる。
「それは良かった。もしそれも忘れてしまっていたなら、今からもう一度と思っていたのでね」
「も、もう一度……何を?」
上掛けから顔を出すと、赤い瞳が怪しげな光を湛えている。
「貴女を……愛したい、と」
するりと頬から手が首筋をなぞり、剥き出しの背中に滑り降りる。その一瞬の感触に、びくんと背が跳ねた。
「ひゃ、んっ!」
「いい声……あぁ、やはりこのままもう一度、この朝日の中で貴女を……抱いてもいい?」
もはやすっかり抱き込まれて首筋へ唇を寄せられ、そこを舐りながら低い声が落とされる。背中にまわされた手は腰へ、もう片方の手が胸の下へと伸びてくる感触に、ゾクゾクと快感が湧き上がる。
「こ、侯爵様、あの!」
「……なに?」
「お、お話を先に……お願い、しても?」
「貴女の身体はこんなに素直なのに……まだ、名前で呼んでくれないのか。でも、そうだね。もう一度この身体を解きながら……」
そう言いながら、彼は胸の頂にあるすっかり赤く色づいた蕾をそっと摘んだ。
「きゃっ、やん!」
「あぁ、こんなに腫らして……美味しそうだ」
その瞬間、昨夜どれだけそこを弄ばれたかも思い出してしまう。と、その刺激に下腹がむずむずと疼き、自然に腿を擦り合わせていた。
「ヴィアンカ、もう気持ちいい?」
柔らかく名を呼ばれ、温かな大きい手でそっと腰をなぞられると、そこからぶわりと刺激が広がる。どうやら、昨夜のうちにすっかりこの身体を彼に暴かれてしまったと知り、ぞくっと震えた。
「こんな、の……無理です……!」
「やはり身体が辛いか?」
ふ、とその手から力が抜けた。自分がそれを求めて拒絶した筈なのに、物足りなさが吐息となる。
「あ、ん……」
「ん?そうでもない……のかな?」
再び肌をなぞられ、荒くなる呼吸と共にそれを受け入れる。ヴィアンカは白く美しいその手で、彼の頬に触れた。
「全部……思い出してきましたわ、……アルフレート」
「……!ああ、ヴィアンカ……もっと、俺を呼んで」
「あ!っアル、そこは……!」
「ん、こんなに硬く尖って……俺を誘ってるのか?」
胸の蕾を口に含んだ彼の優しい愛撫を受け入れながら、昨夜のことも、その前の夜会での事も蘇る。そうだ、この人と私は……。
***
「私、友人を待っているので」
「だから、その間だけでも私達と話していただけませんか?」
「そうそう。少しくらい、いいでしょう?」
久しぶりに参加した夜会で、下卑た笑みの男性ふたりに絡まれていた。少なくともどこぞの子爵や男爵の令息なのだろうが、ヴィアンカの知った顔ではない。また『あの噂』を鵜呑みにした、どうでもいい男性である事は間違いなかった。
夜会の会場に居るはずの友人は、どうやら忙しそうだ。エスコートして来てくれた父も先に帰ってしまったし、自分も早めに退散しようかと思っていたら、出口付近でおかしな人たちに捕まってしまった。
「ヴィアンカ嬢、『今宵の相手』にどうか私を……」
「なんなら、我々まとめてでもいかがです?」
ほら、やっぱり。
ヴィアンカ・ランバート(21)は過去に婚約者だった男性におかしな噂を立てられて以来、遊び人の浮名が流れてしまっている。実際、その時に経験はしたのだが……若さもあり、互いに初めての事だったので、全くいい思い出などでは無い。
それなのに、相手は見栄で具合がとても良かったと吹聴したものだから、とても恥ずかしい思いをさせられた。しかしその時の痛みがつらくて、いい方法があるのでは?と恋愛小説などをたくさん読むうち、褥の作法に詳しくなってしまったのも、いけなかった。
結婚した友人の密やかな夜の悩み相談に乗るうち、『あの令嬢は百戦錬磨だ』と噂に尾鰭がついてしまったのだ。しかも、元婚約者はその後すぐに親男爵の失墜でどこかへ去っていった。傷物にした上で婚約解消という、黒歴史だけを刻んで。
そんな事情を知る身内や友人は身持ちの硬さをわかってくれているが、外側の付き合いしかない相手には、割と噂を鵜呑みにしている人が多い。
親譲りの金髪碧眼で、それなりにスタイルも令嬢らしく磨いている。それでも『傷物な百戦錬磨の令嬢』には縁談が来ないまま……いつの間にか、21歳になっていた。
「お一人では寂しい夜もあるでしょう?」
そんな下卑た声をかけながら、視線はドレスの胸元を彷徨う。バレていないとでも思っているのかしら?それとも、私はそんなにも蔑まれるような事をしたのかしら……。と、うんざりとした気持ちになってしまう。
「必要ありませんわ。失礼いたします。」
「ええー、つれないなぁ。せめて一緒にワインだけでも、ね?」
「そうですよ、一口だけでも、お付き合いください」
そう言いながら、道を塞いでしつこくお酒を勧めてくる。赤ワインは渋くてあまり好きではないのだけれど……飲めば解放してくれるなら、とグラスを受け取ってしまった。
「本当に、一口だけです」
「ええ、構いません。それでは、今宵の出会いに」
「美しいヴィアンカ嬢に」
彼らは軽くグラスを掲げたが、それは無視して一口だけワインを含んだ。その途端、視界がくらりと歪む。
「あ……?」
お酒にそんなに弱い訳ではないはず、なのだけど。
「……おや?ヴィアンカ嬢、具合でも?」
「それは大変だ、休憩室へ行きましょう」
夜会の休憩室は邸内の奥まった場所にあり、……逢引きに使われることで有名だ。ダメだ、と頭の中に警鐘が鳴る。
「いえ、……私は、帰ります……ので」
目眩を抑えてふらりとそこを離れようとすると、後ろから現れた別の男性に肩を優しく掴まれた。
「そんな足取りでは危ないですよ。私が馬車まで送りましょう」
聞いたことのある落ち着いた声。その男性を見て、目の前にいた2人が慌てて立ち去る。ほっとして見上げた先には……
「バルドウィン侯爵様……?」
「ええ、こんばんは。ヴィアンカ嬢、先日ぶりですね。……酔っておられるのですか?」
「いえ、あの……今の方にいただいたお酒を、飲んだら……なんだか急に」
「……?失礼、グラスを」
持っていたワインのグラスを渡すと、彼は香りをかいでから舌先でそれを舐めると、眉を顰めた。その間にも私は呼吸が浅くなり、足に力が入らなくなっていくのを感じる。
「これは……。ヴィアンカ嬢、すぐにここを離れましょう」
「ええと、でもあの、すみません、ちょっと何だか私……」
またくらりと目を回してしまい、侯爵様にもたれかかる。
「!そのまま、少しだけ歩けますか?」
「は、い……」
支えられるようにして会場から出ると、人気のない廊下で侯爵様に抱き上げられた。
「失礼します」
「え、あの……!」
「馬車までお連れします、心配しないで?」
「は、はい……ありがとう、ございま……」
そこで一度、記憶は途切れている。気がつくと馬車に揺られていて……あれ?うちの馬車じゃないわ。カーテンが全て閉じられていて、そして妙に座り心地のいい、椅子……?
「目が覚めましたか?」
「あっ……ええ?!」
椅子と思っていたのは侯爵様のお膝の上で。慌てて降りようとした瞬間、自分の身体がなんだかおかしい事に気づく。
「は、あぁんっ……!」
「ヴィアンカ嬢、苦しいですか?!」
「あの、侯爵様、私……なんだか、……身体の中が、むずむずして……」
そのまま身体を彼に擦り付けてしまう。びくっ、と一瞬震えたかに思えたが、腰を抱く手は離さないでいてくれた。
「やはりか……多分ですが、貴女は媚薬を盛られています」
「びやく……?」
「あのお酒を、どのくらい呑んだ?」
「一口、だけです……」
「なら、そう時間はかからないとは思うけど……数時間くらいは辛いかもしれません。」
「ええ……」
なんて物を飲ませてくれたんだ、あの男たち。いや、それより今はこの身体の疼きが問題で……。
「あの、……このむずむずしたもの、どうにかならない、あん、かしら……」
「痛みや苦しさは、ないですか?」
「はぁ、それは……なくて、あの……ぁんっ」
馬車が揺れる度に身体を捻って悶えてしまう。どうやら刺激にかなり敏感になってしまっているようだ。自分で自分を抱き込み、その疼きに震えることしかできない。
「やん、……あ……はず、かしぃ……」
「ヴィアンカ……。私に、貴女に触れる許可を……頂ければ」
「触って、いただけたら……楽になります、の?」
涙目に視線が絡み合った、と思った瞬間に視界が真っ暗になる。目の前にあった唇に自分の唇を覆われ、目を閉じてしまったのだ。咥内を厚い舌にぐるりと舐め回され、さらに身体の疼きが増したように思えた。気づけばしっかりとその腕に抱かれている。
「ん、ふぁ……」
「ヴィアンカ、触れても……?」
「お願い、もっと……つよく、触って……!」
彼の上で身じろぎすると、腰の下に何か硬い物を感じる。短剣でも仕込んでるのかしら……?あら、でもこれに腰を押し付けると……なんだか疼きが満たされる、ような。
「あっ、……ヴィアンカ、それは」
「はぁ、あん……あ、気持ち、いい……」
何かを考えようとしても、頭はもやがかかったようでぼんやりしたままだ。それよりもお腹のむずむずをどうにかしたくて、快感を追いかけてしまう。
ゆっくりとその硬い物に腰を擦り付けるけど、まだ足りなくてもどかしくなり、ドレスを捲って彼の膝を跨いで座り直した。すると、硬い物が真っ直ぐに疼きに当たった。馬車の揺れに合わせて何度も擦り付けると、疼きが快感に変わっていく。
「あん、あ、これ……いい……っ」
「ダメだ、ヴィアンカ……!」
「や、侯爵様、もっと……」
躊躇いつつ離れようとした彼にぎゅっとしがみつき、白いふわふわの胸をその美しい顔に押し付けてしまった。
「ああ……もう、」
その瞬間、彼の手がしっかりとヴィアンカの腰を捕らえ、ぐっと硬い鞘に押し付けたかと思うと、腰を揺すってゴリゴリと秘所を擦り上げた。
「きゃあんっ!!あっ、いい、そこ……!」
「……くっ、貴女は……ああ、くそ……っ」
自らも擦り付けてしまい、侯爵様から、聞き慣れない言葉が飛び出した気がする。ああ、そんなことより、今はもっとここを、
「失礼、する」
「あっ?!」
ドレスの胸元が肌蹴けられ、その薄桃色の蕾が露わになる。
「こんなにもう、硬くして……」
はくりとそこへ齧り付くと、今度はそのしこりを舌と歯で攻め立てた。
「あん、やぁ……っ」
「ああ……こんな、つもりでは……」
「ここも、もっとちょうだい」
「ヴィアンカ、そこに触れてはダメだ……!」
「あら……これ、短剣では、なくて?」
秘所に当てていた硬い物に両手で触れると、それは仕込んでいた短剣などではなく……もっと熱く、大きなものだった。
「うそ……」
「は、ダメだと……言ったのに、貴女は……」
カチャリと音を立ててベルトを緩めると、下着を押し上げるその屹立が先走りで濡れているのがわかった。その正体を見て、さらに自分の中の疼きが加速するのを感じる。
「ああ、ここに……」
「ヴィアンカ」
「ぁあっ……!」
薄い下着越しに再び秘所を擦り付けると、先ほどより鋭敏に快感を拾い上げてしまう。馬車の揺れだけではない、彼が腰を揺らす度に花芽にその突起が当たり、蜜壺からとぷとぷと蜜が溢れだす。
「ああっ、やん、んっ、はぁん」
「はぁ、はぁ、ヴィアンカ、大丈夫か……?」
「あぁ……気持ちいい、の……これ、もっと」
「……もっと、気持ちよくしてほしいのか?」
「……お願い……」
その返事を待ち侘びていたかのように、腰を押さえていた手が後ろから下着の中へと忍び込んだ。襞をゆっくりと大きな指がなぞる。
「あぁあんっ!」
「こんなに蜜を溢れさせて……いけない子だ」
「やぁ、なんか、来ちゃう!」
「ああ。一度、達するといい」
性急に唇を奪われ、口の中を厚い舌でぬめぬめと蹂躙される。無骨な指は襞を往復し、ちゅこちゅこと水音を響かせて浅いところを弄る。そこから蜜をすくい、花芽をぬるりとまるく撫で摩った。下腹の疼きはみるみるうちに快感へと変わり、指の腹でくりくりっと軽く摘んで捻られ、呆気なく……
「ふ……ああぁーっ!」
温かく大きな肩にしがみつき、震えるような嬌声をあげた。
「……いけたね。どう?少しは楽になったかい?」
「ん、あふ……はい……」
確かに、少しだけさっきよりむずむずはマシになった、気がする。しかし指が離れると途端にまたそれが欲しくなり、腰を揺らした。
「あ、やん、もっと……」
「だめか……しかし、そろそろ私の別邸に着く」
「べつ、てい……?」
「ああ。こんな状態で、家に帰せないだろう?俺が君を……しっかり、解してあげる」
耳元でそう囁かれ、擽ったさに下腹がきゅんと締まる。
その時、車寄せに馬車がゆっくりと止まった。
***
「きゃっ、あぁあ……っ!」
それは自分の悲鳴だった。ぱくりと大きく口を開けたまま、目を見開くと、目の前には。
「……えっ……バルドウィン侯爵……さま……?」
ベッドサイドの灯りに照らされ、自分の上の美しく獰猛な赤い瞳と目が合う。
「ヴィアンカ……『目が覚めた』のか……?」
「……あっ?!」
その瞬間、ぐいっと腰を押されて初めて気が付いた。
わ
私
服を着てないわ?!
「やあぁ……っ!」
「あっ、だめだ今、締めては……!」
「う、うそ、やだ、あっ、あぁん!!」
更に!あちらも裸のバルドウィン侯爵様に!!貫かれています!?!?!激しい抽送で揺さぶられ、一瞬で何も考えることもできないほど、内側が堪えきれない快感でいっぱいになる。
「ヴィアンカ、達って……!」
「や、ああ……っ」
その声と同時に中のものを締め上げ、目の前が真っ白に弾けた。
「あ……ぁああーっ!」
「……っ、く、はあ、あぁ……」
視界はぐるぐる回るのに急激に頭のもやが晴れ、明晰になっていく。今、私……何をしているの?
「ヴィアンカ……この責任は、……はぁ」
「待っ……あの……侯爵、さま?これは……」
「責任はとるから、このまま俺も……っ!」
「え?」
私の中にある杭が、その熱でさらにむくむくと膨らんでいるのを感じてしまう。
「いいか?」
「……選択肢、は」
「肯定で、頼む」
疼く胎の中をぐるん、と熱棒で中をかき回されれば、もうなす術はない。
「いやぁ、あっ!」
「ああ、ヴィアンカ……君の中が私に絡みつく……」
「あ、気持ち、い……だめ……で、」
「君はそのまま……感じていて」
「あっ、やめ……ー!」
やめてはもらえそうにない。自分も気持ちよさの波に呑まれて、もう溺れそうだ。唇を深く口付けに塞がれながら、今はどこまでも受け入れるしかない事を悟った……。
***
次に目が覚めると、すっかり室内が明るい。朝だ。そして……見知らぬ部屋だった。自分のものではない、豪奢なベッドに寝ているのはすぐにわかった。
「……い、いたた……?」
少し身体を動かすと、あちこちが軋む様に痛む。
「ヴィアンカ、起きたのか?」
「……っ、バ、バルドウィン侯爵様……?!」
横からの声に首を回す。窓を背に朝日に照らされている美しい男性を見て、目をちかちかと瞬かせた。この流れ、2度目だわ?
「すまない、かなり無理をさせてしまった……身体は痛むか?」
「ええと……」
壊れ物を扱う様にそっと頬に手を添え、心配そうな赤い瞳に顔を覗きこまれる。
白金の髪が陽の光に透けて、とても美しい。こんな方ですもの、女誑しと揶揄されての数々の浮名はむしろ勲章ね。それに、とても30歳には見えない……
……では、なくて。
身体をもう一度動かしてみると、さっきよりは普通に動く事に気づいた。眠る間に固まっていたものが解れたようだった。腰はまだ少し、重だるいけれど。
「だ、大丈夫みたい、です……」
「そうか。どこか辛いところがあったらすぐに言ってくれ。」
「はい。……あの、侯爵様」
「ヴィアンカ、どうか……昨夜のように、俺の名前を呼んで」
え?私、侯爵様を名前で……?
侯爵様が懇願する表情で私の頬をすり、と撫で摩る。その手が耳朶を柔らかく摘むと、頭の中で昨夜の記憶がチカチカと断片的に蘇った。
『あぁ、アルフレート、もっと……!』
『ヴィアンカ、いけない子だ……』
『あ、そこ、舐めちゃ……』
『こう?ああ君は……こんなところまで、熱くて……』
『や、アル……あぁ……!』
私、彼を愛称で呼んでた……?うそ。
「ヴィアンカ?大丈夫か?」
「……侯爵、さま。あの、……なんだか、昨夜からの記憶があやふや、で……。私はどうしてここに……?」
「ああ、そうか。……俺と何をしたかも、全て忘れてしまった?」
「いえ!それは……あの、なんとなく……!!」
顔が真っ赤に、言葉がしどろもどろになる。甘い濃密な行為の事を、身体の軋みと共にすっかり思い出してしまった。顔を隠すように、上掛けを引き寄せる。
「それは良かった。もしそれも忘れてしまっていたなら、今からもう一度と思っていたのでね」
「も、もう一度……何を?」
上掛けから顔を出すと、赤い瞳が怪しげな光を湛えている。
「貴女を……愛したい、と」
するりと頬から手が首筋をなぞり、剥き出しの背中に滑り降りる。その一瞬の感触に、びくんと背が跳ねた。
「ひゃ、んっ!」
「いい声……あぁ、やはりこのままもう一度、この朝日の中で貴女を……抱いてもいい?」
もはやすっかり抱き込まれて首筋へ唇を寄せられ、そこを舐りながら低い声が落とされる。背中にまわされた手は腰へ、もう片方の手が胸の下へと伸びてくる感触に、ゾクゾクと快感が湧き上がる。
「こ、侯爵様、あの!」
「……なに?」
「お、お話を先に……お願い、しても?」
「貴女の身体はこんなに素直なのに……まだ、名前で呼んでくれないのか。でも、そうだね。もう一度この身体を解きながら……」
そう言いながら、彼は胸の頂にあるすっかり赤く色づいた蕾をそっと摘んだ。
「きゃっ、やん!」
「あぁ、こんなに腫らして……美味しそうだ」
その瞬間、昨夜どれだけそこを弄ばれたかも思い出してしまう。と、その刺激に下腹がむずむずと疼き、自然に腿を擦り合わせていた。
「ヴィアンカ、もう気持ちいい?」
柔らかく名を呼ばれ、温かな大きい手でそっと腰をなぞられると、そこからぶわりと刺激が広がる。どうやら、昨夜のうちにすっかりこの身体を彼に暴かれてしまったと知り、ぞくっと震えた。
「こんな、の……無理です……!」
「やはり身体が辛いか?」
ふ、とその手から力が抜けた。自分がそれを求めて拒絶した筈なのに、物足りなさが吐息となる。
「あ、ん……」
「ん?そうでもない……のかな?」
再び肌をなぞられ、荒くなる呼吸と共にそれを受け入れる。ヴィアンカは白く美しいその手で、彼の頬に触れた。
「全部……思い出してきましたわ、……アルフレート」
「……!ああ、ヴィアンカ……もっと、俺を呼んで」
「あ!っアル、そこは……!」
「ん、こんなに硬く尖って……俺を誘ってるのか?」
胸の蕾を口に含んだ彼の優しい愛撫を受け入れながら、昨夜のことも、その前の夜会での事も蘇る。そうだ、この人と私は……。
***
「私、友人を待っているので」
「だから、その間だけでも私達と話していただけませんか?」
「そうそう。少しくらい、いいでしょう?」
久しぶりに参加した夜会で、下卑た笑みの男性ふたりに絡まれていた。少なくともどこぞの子爵や男爵の令息なのだろうが、ヴィアンカの知った顔ではない。また『あの噂』を鵜呑みにした、どうでもいい男性である事は間違いなかった。
夜会の会場に居るはずの友人は、どうやら忙しそうだ。エスコートして来てくれた父も先に帰ってしまったし、自分も早めに退散しようかと思っていたら、出口付近でおかしな人たちに捕まってしまった。
「ヴィアンカ嬢、『今宵の相手』にどうか私を……」
「なんなら、我々まとめてでもいかがです?」
ほら、やっぱり。
ヴィアンカ・ランバート(21)は過去に婚約者だった男性におかしな噂を立てられて以来、遊び人の浮名が流れてしまっている。実際、その時に経験はしたのだが……若さもあり、互いに初めての事だったので、全くいい思い出などでは無い。
それなのに、相手は見栄で具合がとても良かったと吹聴したものだから、とても恥ずかしい思いをさせられた。しかしその時の痛みがつらくて、いい方法があるのでは?と恋愛小説などをたくさん読むうち、褥の作法に詳しくなってしまったのも、いけなかった。
結婚した友人の密やかな夜の悩み相談に乗るうち、『あの令嬢は百戦錬磨だ』と噂に尾鰭がついてしまったのだ。しかも、元婚約者はその後すぐに親男爵の失墜でどこかへ去っていった。傷物にした上で婚約解消という、黒歴史だけを刻んで。
そんな事情を知る身内や友人は身持ちの硬さをわかってくれているが、外側の付き合いしかない相手には、割と噂を鵜呑みにしている人が多い。
親譲りの金髪碧眼で、それなりにスタイルも令嬢らしく磨いている。それでも『傷物な百戦錬磨の令嬢』には縁談が来ないまま……いつの間にか、21歳になっていた。
「お一人では寂しい夜もあるでしょう?」
そんな下卑た声をかけながら、視線はドレスの胸元を彷徨う。バレていないとでも思っているのかしら?それとも、私はそんなにも蔑まれるような事をしたのかしら……。と、うんざりとした気持ちになってしまう。
「必要ありませんわ。失礼いたします。」
「ええー、つれないなぁ。せめて一緒にワインだけでも、ね?」
「そうですよ、一口だけでも、お付き合いください」
そう言いながら、道を塞いでしつこくお酒を勧めてくる。赤ワインは渋くてあまり好きではないのだけれど……飲めば解放してくれるなら、とグラスを受け取ってしまった。
「本当に、一口だけです」
「ええ、構いません。それでは、今宵の出会いに」
「美しいヴィアンカ嬢に」
彼らは軽くグラスを掲げたが、それは無視して一口だけワインを含んだ。その途端、視界がくらりと歪む。
「あ……?」
お酒にそんなに弱い訳ではないはず、なのだけど。
「……おや?ヴィアンカ嬢、具合でも?」
「それは大変だ、休憩室へ行きましょう」
夜会の休憩室は邸内の奥まった場所にあり、……逢引きに使われることで有名だ。ダメだ、と頭の中に警鐘が鳴る。
「いえ、……私は、帰ります……ので」
目眩を抑えてふらりとそこを離れようとすると、後ろから現れた別の男性に肩を優しく掴まれた。
「そんな足取りでは危ないですよ。私が馬車まで送りましょう」
聞いたことのある落ち着いた声。その男性を見て、目の前にいた2人が慌てて立ち去る。ほっとして見上げた先には……
「バルドウィン侯爵様……?」
「ええ、こんばんは。ヴィアンカ嬢、先日ぶりですね。……酔っておられるのですか?」
「いえ、あの……今の方にいただいたお酒を、飲んだら……なんだか急に」
「……?失礼、グラスを」
持っていたワインのグラスを渡すと、彼は香りをかいでから舌先でそれを舐めると、眉を顰めた。その間にも私は呼吸が浅くなり、足に力が入らなくなっていくのを感じる。
「これは……。ヴィアンカ嬢、すぐにここを離れましょう」
「ええと、でもあの、すみません、ちょっと何だか私……」
またくらりと目を回してしまい、侯爵様にもたれかかる。
「!そのまま、少しだけ歩けますか?」
「は、い……」
支えられるようにして会場から出ると、人気のない廊下で侯爵様に抱き上げられた。
「失礼します」
「え、あの……!」
「馬車までお連れします、心配しないで?」
「は、はい……ありがとう、ございま……」
そこで一度、記憶は途切れている。気がつくと馬車に揺られていて……あれ?うちの馬車じゃないわ。カーテンが全て閉じられていて、そして妙に座り心地のいい、椅子……?
「目が覚めましたか?」
「あっ……ええ?!」
椅子と思っていたのは侯爵様のお膝の上で。慌てて降りようとした瞬間、自分の身体がなんだかおかしい事に気づく。
「は、あぁんっ……!」
「ヴィアンカ嬢、苦しいですか?!」
「あの、侯爵様、私……なんだか、……身体の中が、むずむずして……」
そのまま身体を彼に擦り付けてしまう。びくっ、と一瞬震えたかに思えたが、腰を抱く手は離さないでいてくれた。
「やはりか……多分ですが、貴女は媚薬を盛られています」
「びやく……?」
「あのお酒を、どのくらい呑んだ?」
「一口、だけです……」
「なら、そう時間はかからないとは思うけど……数時間くらいは辛いかもしれません。」
「ええ……」
なんて物を飲ませてくれたんだ、あの男たち。いや、それより今はこの身体の疼きが問題で……。
「あの、……このむずむずしたもの、どうにかならない、あん、かしら……」
「痛みや苦しさは、ないですか?」
「はぁ、それは……なくて、あの……ぁんっ」
馬車が揺れる度に身体を捻って悶えてしまう。どうやら刺激にかなり敏感になってしまっているようだ。自分で自分を抱き込み、その疼きに震えることしかできない。
「やん、……あ……はず、かしぃ……」
「ヴィアンカ……。私に、貴女に触れる許可を……頂ければ」
「触って、いただけたら……楽になります、の?」
涙目に視線が絡み合った、と思った瞬間に視界が真っ暗になる。目の前にあった唇に自分の唇を覆われ、目を閉じてしまったのだ。咥内を厚い舌にぐるりと舐め回され、さらに身体の疼きが増したように思えた。気づけばしっかりとその腕に抱かれている。
「ん、ふぁ……」
「ヴィアンカ、触れても……?」
「お願い、もっと……つよく、触って……!」
彼の上で身じろぎすると、腰の下に何か硬い物を感じる。短剣でも仕込んでるのかしら……?あら、でもこれに腰を押し付けると……なんだか疼きが満たされる、ような。
「あっ、……ヴィアンカ、それは」
「はぁ、あん……あ、気持ち、いい……」
何かを考えようとしても、頭はもやがかかったようでぼんやりしたままだ。それよりもお腹のむずむずをどうにかしたくて、快感を追いかけてしまう。
ゆっくりとその硬い物に腰を擦り付けるけど、まだ足りなくてもどかしくなり、ドレスを捲って彼の膝を跨いで座り直した。すると、硬い物が真っ直ぐに疼きに当たった。馬車の揺れに合わせて何度も擦り付けると、疼きが快感に変わっていく。
「あん、あ、これ……いい……っ」
「ダメだ、ヴィアンカ……!」
「や、侯爵様、もっと……」
躊躇いつつ離れようとした彼にぎゅっとしがみつき、白いふわふわの胸をその美しい顔に押し付けてしまった。
「ああ……もう、」
その瞬間、彼の手がしっかりとヴィアンカの腰を捕らえ、ぐっと硬い鞘に押し付けたかと思うと、腰を揺すってゴリゴリと秘所を擦り上げた。
「きゃあんっ!!あっ、いい、そこ……!」
「……くっ、貴女は……ああ、くそ……っ」
自らも擦り付けてしまい、侯爵様から、聞き慣れない言葉が飛び出した気がする。ああ、そんなことより、今はもっとここを、
「失礼、する」
「あっ?!」
ドレスの胸元が肌蹴けられ、その薄桃色の蕾が露わになる。
「こんなにもう、硬くして……」
はくりとそこへ齧り付くと、今度はそのしこりを舌と歯で攻め立てた。
「あん、やぁ……っ」
「ああ……こんな、つもりでは……」
「ここも、もっとちょうだい」
「ヴィアンカ、そこに触れてはダメだ……!」
「あら……これ、短剣では、なくて?」
秘所に当てていた硬い物に両手で触れると、それは仕込んでいた短剣などではなく……もっと熱く、大きなものだった。
「うそ……」
「は、ダメだと……言ったのに、貴女は……」
カチャリと音を立ててベルトを緩めると、下着を押し上げるその屹立が先走りで濡れているのがわかった。その正体を見て、さらに自分の中の疼きが加速するのを感じる。
「ああ、ここに……」
「ヴィアンカ」
「ぁあっ……!」
薄い下着越しに再び秘所を擦り付けると、先ほどより鋭敏に快感を拾い上げてしまう。馬車の揺れだけではない、彼が腰を揺らす度に花芽にその突起が当たり、蜜壺からとぷとぷと蜜が溢れだす。
「ああっ、やん、んっ、はぁん」
「はぁ、はぁ、ヴィアンカ、大丈夫か……?」
「あぁ……気持ちいい、の……これ、もっと」
「……もっと、気持ちよくしてほしいのか?」
「……お願い……」
その返事を待ち侘びていたかのように、腰を押さえていた手が後ろから下着の中へと忍び込んだ。襞をゆっくりと大きな指がなぞる。
「あぁあんっ!」
「こんなに蜜を溢れさせて……いけない子だ」
「やぁ、なんか、来ちゃう!」
「ああ。一度、達するといい」
性急に唇を奪われ、口の中を厚い舌でぬめぬめと蹂躙される。無骨な指は襞を往復し、ちゅこちゅこと水音を響かせて浅いところを弄る。そこから蜜をすくい、花芽をぬるりとまるく撫で摩った。下腹の疼きはみるみるうちに快感へと変わり、指の腹でくりくりっと軽く摘んで捻られ、呆気なく……
「ふ……ああぁーっ!」
温かく大きな肩にしがみつき、震えるような嬌声をあげた。
「……いけたね。どう?少しは楽になったかい?」
「ん、あふ……はい……」
確かに、少しだけさっきよりむずむずはマシになった、気がする。しかし指が離れると途端にまたそれが欲しくなり、腰を揺らした。
「あ、やん、もっと……」
「だめか……しかし、そろそろ私の別邸に着く」
「べつ、てい……?」
「ああ。こんな状態で、家に帰せないだろう?俺が君を……しっかり、解してあげる」
耳元でそう囁かれ、擽ったさに下腹がきゅんと締まる。
その時、車寄せに馬車がゆっくりと止まった。
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