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第十三章

体育祭③

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 数日前の瑞希からの交換ノートには、体育祭頑張ってと応援のメッセージが書かれていた。体育祭の日、瑞希は英検のテストだと聞いている。由奈もテスト頑張ってと伝えたくて、すぐに交換ノートの返事を書き瑞希の家のポストへ入れに行った。

 一週間、二週間空くこともあれば、数日で返事を返すこともある交換ノート。思春期の由奈にとって安定剤のような心穏やかになる存在だ。

 いつも通り朱里と一緒に登校して教室に入ると、いつも以上ににぎやかでみんなのテンションが高い。

「絶対優勝するぞ」

 田中をはじめ、応援団のメンバーのいきいきとした顔が眩しく見える。

「盛り上がってるね~」
「本当に。私達も足を引っ張らないように頑張ろうね」
「うん。そういえば、ゆーちゃん知ってる?」
「何が?」
「体育祭の後って、カップルがいっぱい誕生するんだって」
「へ⁈そうなの」
「みのり先輩に聞いた」

 みのり先輩とは、吹奏楽部の先輩で朱里と同じフルートを担当している。

「ゆーちゃんには瑞希くんという存在がいるから眼中にないかもだけど、応援団の人達とかリレーで活躍した人達がモテモテらしいよ」

 なんとなくわかる気はする。運動神経のいい人はカッコよく見えるのだ。

「瑞希くん、一緒の学校じゃなくて良かったかも……」
「プッ、確かに。瑞希くんがいたら大変なことになってたよね」
「ところで朱里ちゃんは、気になる人はいないの?」
「へ⁈私?」
「私の話はするけど、朱里ちゃんの話は聞かないなぁと思って」
「……」
「何々?誰かいるの?」
「誰かはわからないけど、昨日の予行の時に三年生のリレーのアンカーの先輩がカッコ良かった」
「そうなの?今日、リレーの時に教えてね」
「う、うん」

 体育祭だけではなく、恋心も盛り上がりをみせている。

 由奈は、朱里の恋の相手が気になって、すでに体育祭どころではない。いつも瑞希のことを聞いてくれる朱里の恋も応援したい。目立たず終わればいいと思っていた体育祭が一気に楽しい気分になった。
 

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