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第二章

運命の一夜③

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カウンターから立ち上がるが、少しよろける。そんなさくらをさり気なく支えてくれる。慣れているのだろう。エスコートは完璧だ。

 腰に手を添え歩き出し、そのまま店を出ようとする。

「あっ、お会計がまだ……」
「大丈夫だ」
「えっ?」

 何が大丈夫なのか全く理解できないが、身を任せるしかない。到着したエレベーターに乗り込んだ。そして、エレベーターはすぐに目的の階に到着する。

 エレベーターを降りると、さくらの知るホテルの廊下の絨毯とは全く違うふかふかさだ。明らかに高級なフロアに降り立った。

 よく考えると悠太とホテルに宿泊したことはなく、いつも悠太のマンションだった。もちろん、高級マンションだったが、旅行やホテルに宿泊は連れて行ってもらったことはない。ボーッと今までのことを思い起こす。

「他の男のことを考えているのか?余裕だな」
「そんなことはっ!」
「大丈夫だ。そんな余裕はすぐになくなる」

 不敵な笑いを感じ、背筋がゾクッとする。顔を見なくても凄まじいオーラと色気が伝わってくる。


 怜がスーツの内ポケットからカードらしきものを取り出し、扉のところに翳すとピピッと電子音がなり、ガチャッと鍵が開く音がした。

「さくら、今ならまだ引き返せるぞ」
「全部忘れさせてくれるんですよね?」
「ああ、後悔はさせない」

 その言葉に、さくらは頷いた。それを見た怜がさくらの手を引き部屋の中に入る。

 バタンッと扉が閉まった瞬間、まだ扉の前だが怜がさくらの口を塞ぐ。怜のひんやりとする唇が、さくらの酔いの回った温かい唇と合わさり体温を分け合う。

 触れるだけだったキスが深くなり、さくらの口内を弄ぶ。

「ンンッ……」

 無意識に漏れる色っぽい吐息。悠太とは全く違いキスだけで感じるなんて、かなりの上級者だと一瞬頭を過ぎったが、次の瞬間体がふわりと浮き上がり、お姫様抱っこされて思考が停止する。

「あのっ、重いからっ」
「もう、黙って俺だけに溺れろ」

 俺様な発言も全く違和感がない。実は、お姫様抱っこをされるのも初めてだ。お姫様抱っこなんて、小説の中だけの出来事だと思っていた。

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