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第三章

一瞬で冷める恋と旅立ち④

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 青い海、白い砂浜の広がる暖かい地、沖縄にやって来た。

 スマホには何度か悠太から連絡があった。突然秘書が辞めて困ったからなのか、さくらに未練があるからなのかはわからないが、飛行機に乗る前にスマホは解約してきた。何もかもリセットして始めようと思っている。
 
 沖縄の中心街から離れたリゾート地のホテルに滞在し、今後のことを考えるつもりだ。先ずは、今まで頑張って来た自分を労ってあげたい。

 リムジンバスに乗り、車窓から見える長閑な景色に癒やされ、ホテルに到着した。チェックインし、辺りを散策する。異国の地に来たような、のんびりした時間が流れる。

 この地に住み着くのもいいかもしれない。すでに、気持ちは都会から離れている。

 そして、夕食に立ち寄った『ちゅらかーぎー彩』という名の沖縄料理店で、今後のさくらの生活に影響を与える新たな出会いがあった。
 
「めんそーれ」
「こんばんは」
「初めて見る顔ね」
「はい。一人なんですが」
「大歓迎よ。おしゃべりするのが嫌じゃなければ、カウンターに座って」

 お店を経営しているのは、さくらと同年代のショートカットの似合う女性だ。

 
 ドリンクと料理を何品か注文し、カウンターの中で調理する女性と話をする。

「一人旅?」
「はい。少しのんびりしようと思いまして」
「いいと思うよ」

 きっと女性には、訳ありだと見抜かれただろう。

「名前聞いてもいい?」
「さくらです」
「さくらちゃん、私は彩葉」
「あっ、お店の名前の」
「そうそう。みんな何故か彩姉あやねえって呼ぶの」
「わかる気がします」
「そう?」
「はい」

 先日までは、気を張って生活していたので、心許せる友達はいなかった。時々連絡を取り合う学生時代からの友達はいるが、社内では秘書課勤務になってから、社内の交流もなくなった。入社当時は、同期と仕事帰りに食事に行くこともあったが、異動してからは全くだ。

 交流の少ない部署で悠太中心の生活をしていたら、悠太しか見えなくなってしまうのも致し方ない。

 怜によって、今までの洗脳のようなものが解かれたと言っても過言ではない。

 彩葉との会話は楽しく、時間を忘れてしまう。彩葉を慕って食事に来る客が後をたたない。沖縄に来て最初に出会ったのが、彩葉だったことに感謝したい。
 
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